証を刻む[3]
07/12/16 22:24 Sun
>>[3]
「そうですねぇ…まずは、はっきりとした原因を調べないと。気を付けた方が良いですよ〜噂によると、修兵や恋次達も 隊長の事狙ってるらしいですから……もしかして既に、 隊長の心はもう誰かに移ってしまってるのかも!?」
「そ……んな……」
やはり、自分の様な子供では本気で相手にして貰えないのだろうか。
付き合う時に、身長など関係ないと言ってくれたが、本当は背の高い男の方が好みなんじゃないだろうか。
今まで自分に優しくしてくれていたのは異性に対する情愛からなどではなく、単なる同情に過ぎなかったのではないだろうか。
そんな疑問が次々と浮かんで来る。
原因として思い当たる節が多過ぎて、少し泣きたくなった。
「この際、相手の気持ちをしっかりと確かめてみては如何ですか?本当に愛し合っているのならば、隊長の誕生日が終わるまでにきっとなんらかの進展がある筈です。あれば、それはそれで良いんですけど、もしなかったら………」
「なかったら……?」
ごくり。
無意識に喉が鳴った。
室内が妙な緊張感に包まれる。
「……なかったら、いっそ別れた方が良いかもしれませんね。」
……………!!……
絶句、とはこの事を言うのだろう。
軽く眩暈さえ感じた。
動揺に揺らいだ彼の翡翠は、零れ落ちんばかりに見開かれている。
「 と別れ……る?」
有り得ない。
有り得ない。
有り得ない。
すぅっと内臓が冷えていく感覚がした。
頭痛まで催してきた気がする。
何せそんな事、一度たりとも考えた事など無かったのだ。
自分は彼女を愛しているし、彼女は同じく自分を愛してくれているのだと。
これからずっと、彼女と生涯共に居られるものだと信じて疑いもしなかったのだから。
「………。」
冬獅郎は机に肘を突き、両手で顔を覆ったまま完全に動かなくなってしまった。
指の隙間からは、血の気の引いた血色の悪い唇が噛み締められている様が伺えた。
少し肩が震えているのは、決して気温のせいだけではないだろう。
(……あらぁ〜Uu?いやだ、ちょっと虐め過ぎちゃったかしら☆)
予想以上に落胆している上司の様子に多少の罪悪感を覚えはした。
が、所詮“多少”であり、毎日勤務態度等について彼に怒鳴られてばかりいる乱菊にとっては、いい気味だと言う気持ちの方が本音である。
しかも、普段は頭の回転が良く強気で小生意気な態度の冬獅郎が自分の策略に嵌り、力なく項垂れている様を見るのは実に気分が良い。
(ま、いいか。今のうちにサボっちゃえ〜Vv)
自分の思惑通りに日頃の鬱憤を晴らし上機嫌な彼女は、今が絶好のチャンス!とばかりにそそくさと仕事場を抜け出したのだった。
>>To Be Continued
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