彼女の初恋は右斜め上で、ぶっ飛んでいた。

「―――初恋が甘酸っぱい、って誰が決めた。」

イラッとした表情を見せつつ、低い声でとんでも発言をした満月に
4年A組の教室は氷点下よりも低い空気に包まれた。

 


……何故、こうなったかというと。

A組の女子児童(本人の名誉のため名前は伏せておく)が、
好きな男子児童にラブレターを送り、昨日の放課後に告白をしたものの、
既に付き合っている子がいたため、玉砕。
初恋が失恋になってしまったというその女子児童に対して、
男子児童が初恋が失恋になったっていうより、
ただの玉砕じゃないかという失礼な発言をしてしまい。

その女子児童の友達が
「甘酸っぱい初恋は大事にしたいじゃない!」とか何とかと言い返し、
口論になり、これが大惨事になるんじゃないかと
思ったクラスメイトが止めようとした時に。

満月が先ほどの発言をしたのである。


「……ひ、姫宮さんって初恋をしたわけでもないのに、
何でそんなエグいことを言うの……?」

泣き止んだ女子児童がポカンとしているのをよそに、
その友達は満月に訊ねた。

「あるけど。私も。全然甘酸っぱくはないけど――――初恋。」

投下された爆弾発言に。和火以外のクラスメイトは。


「「「「えええええええええええええええええええええええええええ!?」」」」


と叫んだのであった。


「い、いつ!?」

「小1ん時の夏休み、母さんの仕事の関係でドイツに行った時。
母さんと一緒に銀行へ行った時に銃を持った強盗犯が押しかけてきて。
金を奪った後にたまたま近くにいた私を人質にして、
逃走したんだけど。
銀行の外にいた中学生か高校生ぐらいの男が、私を助けようとして
強盗犯の仲間に捕まって。
結局、一緒に人質になっちゃって。
その強盗犯グループのアジトっぽいところに監禁されたんだけど。
警察に追い込まれちゃって、苛立ったグループの1人が
腹いせに私に銃口を向けて、
発砲した瞬間にその男が私を庇って怪我しちゃって。
……まあ、その時私も銃弾がかすったんだけど。」

今はもう傷痕もないけど、と言ってから。満月は話を続けた。

「そ、それで、どうなったの?」
「どうもこうもないよ。特殊部隊がアジトに突入して、
グループを制圧したもん。
で、私は私で持っていた救急セットで
庇ってくれた人の怪我を応急処置したけど。
何で私を庇ったの?って聞いたら。

『―――可愛い女の子に怪我させたらまずいだろ?
俺は正義の味方を目指しているからな』
って返ってきて。

寝言は寝て言えって顔面を殴った。」


「………え。」
「……な、殴ったの……?」

「殴ったっていうよりはポカポカつついたようなもんだったかなー。
小さかったし。」

あはは、と笑う満月にクラスメイトはどん引きした。

誰しもが自分を庇って怪我をした人に対してそれはないんじゃないのか、と
突っ込みたかった。

「ねぇねぇ、満月ちゃん。
ちなみにその人、そう言った満月ちゃんに対してなんて答えたのー?」

「『そういう可愛くないことを言うと、彼氏ができないぞ』って。」
「ほほーぅ?」
「まあ、手当てが終わると同時に救急車が来たから
話はそこで終わったんだけど。
……包帯の上に当時私がつけていたリボンを巻いたんだ。
『じゃあ、もしもまた逢うことがあったらこのリボンを返してよ。
その時に彼氏がいなかったら、私はお兄さんと付き合うから』って
言って。
その人は苦笑いした後に、自分が持ってたドッグタグを渡したんだ。
『そうだな。じゃあ、リボンの代わりにこれを。
もしまた逢えたその時に、彼女がいなかったら
考えておくよ』って言って、頭を撫でてそのまま救急車に
運ばれて別れたんだ。
……どうだ、全然甘酸っぱくない初恋だろ?」

「(それ、初恋でも何でもないんじゃ……。)」

と和火は突っ込みそうになったが、あえて言わなかった。

クラスメイト達も、
「そ、そっか………。」と言わざるを得なかった。

 

「……って、名前聞かなかったの!?」
「うん。聞かなかった。」
「何で!?姫宮さんとこのグループの権力を使えば、
すぐにわかったかもしれないのに!」

「……それじゃあ、つまんないもん。」
「へ?」

予想もしていなかった言葉に、女子児童はポカンとなった。

「会えない時間が長ければ長いほど、積もる話がたくさんできるから。
それに名前がわからなくても、いつか何処かでまた逢えるってわかるし。」

「……は?」

それはどういう意味なのか、女子児童が聞こうとしたその時。

「授業始めますよ………どうしたんですか、
何か氷点下よりも低い空気が漂っていますけど。」

教室の扉を開けて、瑠樹が室内に入ってきたので。
児童達は一斉にブーイングを起こした。

「センセーのバカヤロー!!
何でタイミングの悪い時に教室来るんだよー!」
「先生、サイテー!」

「はぁ!?」


「あっははー、先生ってばホントタイミング悪いねー。」
「ほーんと。ま、先生らしいといえばそうだけど。」

「……え、あの……本当にどういうことなんでしょうか……?」

「女子にモテなさそうな先生には言ってもわからないですよーだ!」

「な、失礼な……モテてました!……ちょっとだけ。」

「何それ!?それじゃあ、モテないのと一緒じゃん!」


児童達にからかわれる瑠樹の姿に満月と和火は笑った。

 













 

おまけ。


「……あら?これって、ドッグタグよね?」

ローゼスフィールは姫宮邸の居間にドッグタグが落ちているのを見つけて、
それを拾い上げた。

「満月の持ち物よね、これは。」

そして、その裏面を見た時。


「……レッドワンチャンス?どういう意味なのかしら?」

意味がさっぱりわからず、
首を傾げるローゼスフィールなのであった。


ちなみにその後、帰宅した満月がローゼスフィールからそれを
受け取った時、顔を真っ赤にしたとかしなかったとか。
(目撃したのはセイバーとランサーであるが、
彼女から深く口止めをされたとかなんとか。)


























                                                    終わり。

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Fate/Gardener  ACT:7(2)

暗闇の通路で群がる有象無象の蟲達を紅い糸が切断していく。
ライダーは足を止めることなく、先を進む。
間桐白夜によってエミリスフィールが迷宮に入れられてから、
だいぶ時間が経つ。
死霊のいないこの迷宮では錬金術を行使するしかないが
攻撃力はそれほどない。
加えて、魔術回路が変質しているので中途半端な形でしか
魔力供給ができないというのもエミリスフィールの性質だ。
もし、彼女が自身の身を守るために魔力を総動員してしまえば、
ライダーは宝具を十全に行使することができない。
アーチャークラスが持つ単独行動スキルを持っているわけではないので、
現状としては魔力を抑えつつ蟲達を一掃するしかなかった。
霊体化をすればさらに魔力を抑えることができ、感知される心配もない。
……だが、それはあくまでも最終手段の話だ。
「…………セイバーとランサーのマスターに頭でも下げて、
結晶化した魔力を貰えばよかったか?」
2騎のサーヴァントを維持出来るだけではなく、
自分が魔術を行使する分を総動員させても何ともない満月ならば、
限界を維持できるだけの魔力を結晶化できるだろう。
後先考えずに突っ走るのは彼の悪い癖だ。
生前に迷宮を攻略しようとした時もアリアドネが
糸玉を渡してくれなければ、自分も彷徨っていたのだから。
「…………ええい、悪い方に考えるのもあれだ。
短剣でもいいんだが、一掃ができないんだよな。
こうちまちまと数が多いと頭に来る。
せめて大群じゃなくて、
少数精鋭とかにしてくれれば良かったのにな。」
ライダーがポツリ、と呟いた時。何かが這いずるような音が耳に入った。
また蟲の大群か、とあきれたようにため息をつきながら
紅い麻糸の鞠(カーバンクル・アリアドネ)を構えた彼は瞳孔を開いた。
通路の先から現れたのは、数種類の蟲が融合したような個体であった。
その高さはライダーと同程度の身長である。
「……マジかよ。確かに少数精鋭にしてくれれば良かったのに、とは
言ったけどな。これはないだろ、これは。
蠱毒もここまで来るとあきれるのを通り越して最悪だぞ……!」
キリキリと鳴く個体を前にライダーはどうするか、と思案した。
装甲からして、先ほど満月が仕掛けたトラップにひっかかって
四散した個体と比べるとその強度はかなり硬いだろう。
恐らくは迷宮内にいる他の個体を食らったことによるものである。
短剣に魔力をこめれば、ダメージを与えることはできるが、
それでも決定打に欠けるだろう。
「……かくなる上はこいつを別の個体と引き合わせて
戦っている間に先へ進むか、
それともあいつらに押し付けるかのどっちかを取るしかないな……。」
距離を詰めてやってくる個体にライダーは冷や汗をかく。
戦うこと自体は別に構わないのだが、
もしここで全力を出し切ってしまえば
最深部にいるであろうバーサーカーと戦う時に不利となってしまう。
魔力供給のラインが消失した感覚もないので、
まだホムンクルス達は生贄にされていないだろうが、
それでも時間というのが限られてしまう。
1人でも欠ける様なことになってしまえば、
それだけで宝具を使用する際に必要な魔力が足りなくなり、
威力が半減されてしまう。
「………早くエミリスフィールを探さないといけないのに、
お前と遊んでいる時間はないんだよ。」
ライダーは短剣を構えると床を勢いよく蹴り、
前方へ跳躍すると蟲に一太刀を浴びせた。
硬い音がして、着地した彼は後ろを振り向いた。
一太刀を浴びせた箇所は傷1つすらついていなかった。
「………魔力抜きで充分に戦えるような
相手じゃないっていうのはわかるんだが……。
やっぱりきついな。
エミリスフィールに紅い麻糸の鞠(カーバンクル・アリアドネ)を
持たせておけばよかった。」
戦闘を続ければ、最深部に行くことはおろかエミリスフィールを
見つけるのにも時間がかかってしまう。
バーサーカーの宝具は「迷宮」という概念への知名度によって
道筋が形成される。
―――つまり、迷宮そのものを知っていれば知っているほど。
エミリスフィールを探し出すのには時間がかかってしまう。
唯一の対策としては紅い麻糸の鞠(カーバンクル・アリアドネ)を
行使するしか方法はない。
「最短で見つけるためには出し惜しみをしてしまうことになるが、
これを使うしかないか。」
手に持った紅い麻糸の鞠(カーバンクル・アリアドネ)を握ると、
ライダーはその細糸を通路の先に飛ばした。
後ろから蟲が彼に襲いかかろうとする
。寸前のところで一撃をかわしたライダーは戦うことなく走り出す。
バーサーカーとの戦いに備えて、余力は残しておきたい。
これから先、蟲が少数精鋭か数に物を言わせて
襲いかかってくるかもしれないが付き合っている暇はない。
「……ったく、バーサーカーのマスターも面倒なものを用意しやがって。」
紅い麻糸の鞠(カーバンクル・アリアドネ)の糸が進むべき道筋を示す。
ライダーは糸の導きに従って通路を進んだ。
その時に彼は殺気を感じて、床に伏した。
翅の音が聞こえて、ライダーはすぐに体を起こす。
現れたのは構造が似ていながらも、翅を持った別個体であった。
先ほどの個体の姿を見るやいなや、
ライダーを気にすることなく対峙している。
「………この迷宮は蠱毒と化している、か。
こんなのが何匹もうろついているとなると、面倒くさいな。
最後の1匹になるまで殺しあうっていうのなら、
巻き添えを食らっている場合じゃないな。」
2匹の蟲が対峙している隙をついて、ライダーはその場を後にする。
もしもエミリスフィールが傍にいてなおかつホムンクルス達が
培養槽にいたのなら、雑魚を相手にしている時間はあったのだが、
悠長なことは言っていられない。肉を切り裂く音がする。
どちらかが相手の肉体に傷をつけたと理解できるが、
そんなことを気にしている場合ではない。
遠ざかっていくライダーの後ろ姿を見た蟲は
好機のチャンスだと思ったのか、
別個体の蟲を後回しにしてその鋭利な爪を振り上げると、
ライダーめがけて勢いよく振り下ろした。

 

「………………。」
通路を歩いていた満月が足を止めたので、深雪達も自然と歩きを止めた。
「……満月さん?」
「満月、どうかしたの?」
「この通路をだいぶ歩いているけど、
ホムンクルスや間桐慎吾とはまったく出会えていないと思ってね。
まあ、蟲ならうんざりするほど出逢っているけど。」
満月はちらり、と自分達がきた通路に目をやる。
そこには四散した蟲達の死骸が散らかっていた。
「………そうですよね。ホムンクルス達がこの迷宮を彷徨っているのなら、
1人ぐらいはそろそろ出会ってもおかしくないと思うのですが……。」
「……最深部にいるバーサーカーのところに到達する前に
蟲達に食い殺された可能性はあるのではなくて?
トラップとして各所に配置しているのなら、
蟲に出逢ってしまってろくに戦うこともできず、
かといって逃げ切れることもできずに
蟲達の餌食にされてしまった。
もし私なら、最深部まで直接ホムンクルス達を
連れて行ってバーサーカーに食わせるわ。
なのに、そのマスターはそんなことをしなかった。
それの理由がわからない。」
「あの、こうは考えたくないんですけど………。
ホムンクルスは一流の魔術回路を持っていますから、
たらふく生贄を食べて最後まで生き残った1匹の蟲を
最深部にいるバーサーカーがぱくり、と口にして
ステータスとかをあげるんじゃないかと………。」
「……………。」
「……………。」
「……………。」
「………可能性としては否定できないね。
この迷宮自体が蠱毒と化しているし、
前回の時と同じようなことをするのだとしたら、
最後まで生き残った1匹を媒介にして
ステータスの上昇をあげるかもしれない。」
「それが事実だとしたら、手の打ちようはなくなるかもしれないわね。
生前に倒したことがあると言っても、ライダーにはハンデがあるわ。」
「……そう、エミリスフィールの魔術回路が変質していて
中途半端な形でしか魔力供給ができないことと供給の大半を
ホムンクルス達が肩代わりしているという枷がある。
蟲達を一掃して最深部に到達するまでにエミリスフィールと
合流しなかったら、実力を十全に発揮することが
できないリスクもある。」
「ライダーよりも先に最深部まで行くことができれば、
リスクは回避できますが……。」
「その前に蟲達の大群に足止めを食らわせるだろう。
通路を進んでいくにつれて数は減ってきているが―――。」
「その分、共食いとかをして生き残った蟲達の
戦闘力があがってきているから。
持久戦になりそうだね、これは。」
翅が羽ばたく音がして満月達は通路の先に目をやる。
翅を持った個体が現れて、ローゼスフィールは深い息を吐いた。





                                                                                               続く。

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Fate/Gardener  ACT:7(1)

「………どうするよ、瑠樹。いろいろと面倒じゃないのか?」
ジャンヌを背にして瑠樹と時雨はヒソヒソと話をしていた。
まさか聖杯戦争後ではなくその最中に満月の母親が日本に帰国してくるなどと、
誰が予想しえたものか。今の姫宮邸には間桐慎三だけではない。
彼の姪である深雪やローゼスフィール、
さらにはセイバーやランサーまでいるのだ。
よりによって満月がいない時に
帰ってくるとは――どう説明をした方がいいのだろうか。
「……あの、お二方とも。何処か具合でも悪いのですか?」
「あ、ああ……いえ。別に。
特に具合が悪いというわけではないので、ええ。
はい。心配はしなくていいですよ。」
「でもお二方、とても挙動不審になっているような気がするのですが………。」
ジャンヌがそこまで言いかけた時、
霊体化しているクー・シーの吼える声が聞こえた。
「……あら?わんちゃんを飼っていたかしら?」
「すみません、家の中にいてくれますか?」
「瑠樹、ちょっと傍についていてくれ。」
スニーカーを履いた時雨は玄関の扉を開けて、外に出た。
そこには短刀を構えるアサシンの姿があった。
「ダニエルの差し金か?
こんな白昼に堂々と姿を現して何の用だ?間桐慎三の命か?」
時雨の問いにアサシンは答えない。
黙ったまま、ということはダニエルに命じられて
間桐慎三の命を狙いに来たことを意味する。
ステータスが七クラスの中でも最弱とはいえ、
アサシンは暗殺に長けている。
気配を悟られることなく、相手に接近することができる。
しかし、彼らがこうして実体化しているということは
クー・シーに勘付かれたということか。
「ここには聖堂教会の監督役の後任もいる。
一般人を巻き込めば、
ペナルティが課せられるのは知っているんだろう?
一定期間の交戦禁止や令呪の削減を食らいたくなかったら、
とっとと失せろ。」
うろたえる様子を見せないアサシンに時雨はどうしたものか、と思った。
こちらには一般人であるジャンヌと
薬の副作用で1週間程度は動けない間桐慎三がいる。
もし自分と瑠樹が倒れるようなことになってしまえば、
2人は命を落としてしまう。
満月は激昂して、アサシンと
そのマスターであるダニエルの命を躊躇うことなく奪うだろう。
なにぶん、子供であるが故に大人よりも
感情が爆発しやすいのだから。
「………あの、不審者でも現れたのかしら?」
「まあ、不審者といえば不審者ですから。
今、表に出ると何をされるかわからないものですので………。」
玄関の扉を開けて外の様子を見ようとしたジャンヌを
制する瑠樹を見た瞬間、アサシンは彼らの関係性を察し、
即座に行動を取った。
霊体化をして距離を詰め、手にした短刀でジャンヌに狙いを定める。
時雨が振り返ったその時。彼よりも早く、
クー・シーが瑠樹とジャンヌの前に移動して
その鋭い牙でアサシンの手首に噛み付いた。
「―――――――!」
手首を噛み付かれたアサシンは後退する。
間諜の英霊と距離を取ったクー・シーは
唸り声をあげてアサシンに狙いを定めた。
それを見たアサシンはクー・シーを白髑髏の仮面越しに睨む。
「……こういう真っ昼間から
人目のつく場所で戦いをする気か?
こいつは妖精の住居を守る番犬だ。
唸り声を3度聞くと死をもたらされる伝承がある。
それが嫌なら、さっさとひいてもらおうか。」
クー・シーの後ろに立ったまま、時雨はアサシンに撤退を求める。
職業柄的に一般市民の命と財産を守るのが義務である以上、
できれば戦闘をすることなくひいて欲しいと思った。
だがアサシンは動こうとしない。
もしかするとこの家の周囲には他の個体が
いつでも動けるように待機をしているかもしれない。
もしそうなれば自分達ではジャンヌと
この近辺に住む一般人を守ることはできない。
サーヴァントと妖精犬の睨み合いが続くかと思われたその時、
不意にジャンヌが時雨の横に移動した。
「おさがりなさい、侵入者。」
漂っていたたおやかな雰囲気が一転して凛としたものに変わる。
ジャンヌは臆することなくアサシンにその一言を述べた。
「ここは戦場ではなくてよ。
周囲の住宅街にいる事情を知らない他者の命を
貴方のために落とさせるわけにはいきません。
……それに他にもいるのでしょう?
貴方の仲間というのが。
彼らにもさがるように指示をなさい。
なおも大人しくさがらないというのであれば、
それ相応の措置を取らせていただきます。」
「………………。」
ジャンヌの有無を言わさない言葉にアサシンは
短刀を構えていた腕を下ろすと、霊体化をしてその場から去った。
その様子を見ていた瑠樹は安堵の息を漏らし、
時雨は家の周囲を見渡した。
「とりあえず、全員はこの場から離れたみたいだな……。
というか、さすが嬢ちゃんのご母堂さん……気迫が違ったぜ。」
「まったくです。……しかし、
ダニエルも一体何を考えてこの場に
アサシンを派遣したのでしょうか?」
「間桐慎三の命でも狙えと命令をしたんじゃないのか?
とはいってもマスターの証である令呪は
爺に強奪されているから、元がつくが。」
「何はともあれ、ここでの戦闘は避けられました。……が。」
「……あれ、見られてしまったものな。嬢ちゃんのご母堂さんに。」
2人の男に視線を向けられているジャンヌは首を傾げた。
その足元にはクー・シーが尻尾をパタパタと左右に振っている。
「……ええっとですね、何と説明をすればよろしいかということを……。」
「……瑠樹、話は家に入ってからにしようぜ。
せっかく作った病人食が冷えてしまう。」
「……ああ、そうでした。まずはそれを先に済ませてしまいますか。」
クー・シーの頭を撫でながら、瑠樹は空を見上げる。
灰色じみた雲が浮遊しており、
まるでこれから良くないことが起きそうな事を
暗示してそうで気味が悪かった。





                                                                                                  続く。
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Fate/Gardener  ACT:6(31)

「……何故、自害を強要された?」
「それを命じられるようなことをしたからだよ。
消滅する前にキャスターはマスターに呪いをかけた。
その後、そいつがどうなったのかは知らないけどね。
自分の撒いた種でろくでもない死に方を迎えただろうけど。
……こんなことを気にしている余裕があるのなら、
エミリスフィールを探したらどう?
彼女は聖杯の器を守る担い手だろう。
こうしている間にバーサーカーに襲われて、
間桐白夜によって蟲を心臓に埋め込まれたら彼の傀儡になってしまう。」
「………っ!」
満月の言葉を聞いたライダーは踵を返すと、
走り出そうとしたものの――すぐに足を止めた。
「………1つだけ聞きたい。
お前は聖杯の本質がどういうものなのか知っているのか?」
「無論だ。聖杯を起動させるためには7騎のサーヴァントの魂が必要となる。
現時点ではキャスターの魂が聖杯に溜められているが、
バーサーカーをここで倒せば……聖杯は本来の機能を取り戻していく。
だけどそれはエミリスフィールとしての生体機能と人格を
塗りつぶしていくということだ。
セイバーとランサーを消滅させる気はないけど、
できればエミリスフィールの人格を塗りつぶしたくはない。
外の世界を知って間もない彼女が
根源に至るための孔を穿つための犠牲になるというのは嫌だからな。
というより、世界の外側に行こうとする輩は何があっても、
私は妨害しなければならない。」
満月の意味深な言葉にライダーは彼女の意図を察して、
不敵に笑うと止めていた足を動かした。
「……なら、やっぱり俺達は敵同士だな。
相容れることはできないし。
……バーサーカーを倒した後、連戦になっても構わないよな?」
「構わないさ。元よりそのつもりだろう?
聖杯戦争は最後の1組になるまで戦う儀式なんだから。」
「そうだったな。……じゃあ、どちらが先にバーサーカーを倒すか勝負だな!」
それだけ言ってライダーは暗闇へと消えていった。
彼を見送った満月は深い息を吐く。
「ライダーさん、何か無理をしていないですか?」
「無理もないわよ。魔力供給を担っているのはホムンクルス達だもの。
彼女達がもし、バーサーカーへの生贄として捧げられたら、
彼は十全に戦うことができなくなる。
エミリスフィールの魔術回路が変質さえしていなければ、
そんなことは関係ないのだけれど。
彼としては、十全に戦えるうちに
バーサーカーを倒したいのでしょうね。」
「しかし、この迷宮には蟲の大群がいます。
個々の戦闘力はさほど気にしなくても、
数が多ければ彼とて捌ききれないはずです。」
「アーチャーのクラスに限界していれば、
単独行動スキルがあるからマスターが不在でも
数日は限界し続けることができるんだけど。」
「彼が弓を使っていたという逸話はないですしね。」
「エミリスフィールは無事でしょうか。」
「この迷宮には死霊がいない。……錬金術はそれほど攻撃力がないと聞きますが。」
「そうなんだよね。……間桐白夜とばったり逢って、
心臓に蟲を埋め込まれないことを祈りたいけど。
彼女に関してはライダーが探すだろうから、
私達は間桐慎吾とホムンクルス達を探そう。
後は蟲退治もしなくちゃね。」
「さっきみたいな個体が何匹も現れたら、
私と深雪は防護壁でも張ればいいのかしら?」
「ああ、それはしといてね。
さっきみたいに1匹だけだったら、
床に結晶化させた魔力をばら撒いてどかん、って
爆発させれば倒せるけど。
さすがに何匹も現れたら、
攻撃範囲を広めなくちゃならないから。
宝具の真名解放をしての連発使用は
バーサーカー戦に取っておかないと。
セイバーとランサー、
トラップから抜け出した蟲の駆除をお願いね。」
「了承した。」
「お任せを、マスター。」
2騎のサーヴァントの力強い頷きに満月は首肯すると、
暗闇に続いている通路を見た。
「………この迷宮に何のトラップも
仕掛けられていないと思いたいんだけど、気をつけないとね。」
「そうですね。……何が起こるかわかりませんから。」
「……細心の注意を払わないといけないわね。」
満月達は細心の注意を払いながら、通路を歩いて行った。

 

「……………間桐さんの容態はどうですか?」
「嬢ちゃんの言った通り、
インフルエンザに似た症状が出ているな。
経口摂取すれば即死する毒物の原液を薄めるだけ薄めた、って
言っていたからな。そうでもしないと体内に巣食っていた蟲を
駆除することはできないって話だし。」
「……毒物の取締法とかに引っかからないんですかね?」
「馬鹿言え。魔術っていうのは条理の外にある奴なんだろ?
つまり、一般常識に当てはめたら駄目なもんだ。
魔術を使う連中に法律云々を言っても無駄だよ。
彼らには彼らのルールがある。
俺達が守らなくてはならない共通のルールを押しつけても
素直に受け入れるわけがない。
嬢ちゃん達みたいに頭の柔らかい奴以外は。」
姫宮邸のキッチンで時雨は瑠樹と会話をしながら、
慎三用の病人食を作っていた。
「それに嬢ちゃんは毒物を使って人を殺すような卑怯なことはしない。
臨機応変で柔軟に対応する子だからな。
自分が損をするようなことはしないさ。……というよりもな。」
「何ですか?」
「……保護したホムンクルス達の今後はどうするんだ?」
「アインツベルン城に住んでもらうというのは?」
「どアホ。彼女達は肉体的欠陥を持っているだろう?
しばらくは治療とかそういうのをしなくちゃならないし、
誰かの管理下におかないといかん。
アインツベルン城に住んでもらうっていうのもあるが、
バーサーカー陣営以外の他陣営に襲撃されたら
あっという間に全滅だぞ。」
「……そうですよね。ですが、
幾ら姫宮邸が広くても
人数が多すぎると水道代とかもかさむでしょうし。」
「……いや、姫宮って世界有数の大企業グループだろ?
公共料金についてそんなけちけちするとは思わないが……。
両親には聖杯戦争が終わるまで、
話をしないんだろう?安全第一を考えた上で。」
「ええ。………一定の人数が姫宮邸にいるとなると、
姫宮さんのご両親は吃驚するのではないかと思いますが。」
「……割と話が通じない人なのか?」
「いえ。父親とは会ったことも話もしたこともありませんが、
母親に関しては電話で多少の会話をしたことがありまして。
……ジャンヌさんは良い人でした。」
「過去形で話してどうするんだよ。
……瑠樹がそういうんだったら、
笑って何とかしてくれるんじゃないのか?
身分保障とかそういうの。
それに姫宮グループの医療部門なら、
ホムンクルスの治療に一役買ってくれそうだし。」
「その前にホムンクルスのことも話さなければなりませんしね。」
「嬢ちゃんのことだからホムンクルス治療のための
特別編成チームでも組むんじゃないか?」
「ああ、それは有り得ますね。
でもその前にまず一般の医療関係者達をどう説得するかが課題ですが。
予算に関してはまず問題ないでしょう。」
「後は徹底した守秘義務とかそういうのな。
ホムンクルスを道具扱いするような連中には
治療を任せることはできないし。」
「そうなった場合は、姫宮さんが鉄槌とかを食らわすでしょうね……。」
「………敵に回したくはないよな。いろんな意味で。」
「そうですね。敵になりたくないです。」
時雨が病人食を作り終えた時、
チャイムの鳴る音がした。2人は顔を見合わせる。
「………宅配便か?」
「いえ、姫宮さんは通販とかしていませんが……。」
「だよなあ。聖杯戦争中に
そんな呑気なことをやるような性格じゃないし。
どちらかというと姫宮の権力を駆使して
欲しいものは手に入れるだろうから、通販はしないしな。」
「……本人の前で言わない方がいいですよ。
とにかく、僕が出てきます。」
「おう。よろしく頼むわ。」
時雨の言葉を背にして瑠樹は玄関に向かった。
来客なら家の主は不在であることを伝えて、
日を改めてもらうしかない。
……しかし、もし他陣営の襲撃ならば?
「………襲撃をするのなら、
チャイムを鳴らす必要はありませんよね。
不意打ちを狙えばいいのですから。」
そう思いつつもすぐに黒鍵が取り出せるように構えておきながら、
瑠樹は玄関の扉を開けた。
「あらあら、草摩先生。娘がお世話になっています。」
ずり、と肩が落ちるような音がした。
たおやかな雰囲気が漂う妙齢の女性に瑠樹は冷や汗をかいた。
「………もしかして、姫宮さんのお母様……?」
「ええ、この間は電話でしかお話しをいたしませんでしたでしょう?
ですから、顔を合わせるのはこれが初めてになりますわね。」
にこにこと笑うジャンヌに瑠樹は血の気が引くのを感じた。
よりによってどうして彼女が聖杯戦争の真っ只中に帰国してきたのか。
偶然にしてはタイミングが悪すぎる。必然なのか。
「姫宮さんからは海外を飛び回っているので、
ここ数年は帰ってきていないと聞きましたが。」
「ええ、仕事の区切りがついたので私だけ
先に日本へ帰国することにしたんです。
ほら、連続狩猟殺人犯が死んだという話を
ニュースでお聞きしたんですけど、娘が心配で。」
それは表向きの理由に過ぎない。
というか、相手が殺人犯だろうが満月の場合は
徹底的に叩きのめすだろう。
再起不能になるまで。
限度や加減というのを弁えてはくれているものの、
それが外れてしまうと結構危なかったりする。
「見慣れない自動車が停まっていたのだけれど、先生のですか?」
「あ、いえ。親友のです。
ちょっと行き倒れた人を介抱していまして。」
「まあ、そうだったのですか。」
瑠樹の言葉に納得したジャンヌは玄関に入った。
そして靴を脱ごうとして、足元に目をやった時。
………気づいてしまった。
娘の満月が通学用に使用している学校指定の靴が
ちょこんと置かれていることに。
それを見た瑠樹はしまった、という顔をした。
「瑠樹、どうした―――!?」
何時までも戻ってこない瑠樹を心配したのか、
玄関に時雨がやってきた。
ジャンヌの姿を目にした時雨は開いた口が塞がらなかった。
「あらあら。草摩先生のお友達ですか?」
呆然とする2人をよそにジャンヌは頬に手をあててうふふ、と笑った。


「………ッ!」
「……マスター?」
「主、どうなされた?」
「寒気がしたけど………何か猛烈に嫌な予感がする………。」
「嫌な予感、ですか?」
「バーサーカーのことかしら?」
「それは違うと思う。……多分。」
迷宮の通路を歩いていた深雪達は身震いをして立ち止まった満月に
心配そうな表情をして訊ねるが、彼女は顔を青ざめていた。
閑話休題。







                                                                                                続く。

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Fate/Grand Order プレイ


今月の1日からFate/EXTRA CCCとのコラボイベント開催ということで、
イベントに参加した紫水さん。


参加条件は終局特異点をクリアしたマスターのみ。

ブレイクシステムはあるわ、パーティーに有利・不利な効果を与えるスロットはあるわ、

ミッションがきついわ、アプリは重たいわで突っ込みどころ満載なイベントだった。


ストーリーは今日の午前中に終わったので、後は残り3つほど?のミッションを

終わらせれば、後はフリーダムに周回するだけ。


妹の翡翠はGW明けにさっさとクリアしやがった。

何でもストーリーを優先的に見たいということでAPを回復する林檎齧って
ミッションクリアしたとか。

はぇぇよ。


240匹のエネミー倒せとか、筋力A以上の鯖を倒せとか。

つ、疲れた……でごじゃる。


ちなみに今回のピックアップガチャでは期間限定鯖っていうか、
新規のエクストラクラスって言えばいいのか、アルターエゴのメルトリリスと
殺生院キアラをお迎え。

とはいっても、メルトの方はマチアソビ出展記念と
連続ログインボーナスで貰った石を消費したら、3人も来たよ。

キアラにいたっては今回のイベントのラスボス。

まあ、CCCの方でもラスボスだったけれど。

この方をエミヤに近づけさせたらオルタに堕ちちゃうがな。


イベント限定礼装が欲しかったのになー、どちくしょー。

メルトは召喚した当日にLv&フォウくん強化カンストしたけれど、
キアラはとりあえず育成待ち状態。

金の種火を使い切った後なので、銀の種火をあげたけれどー……。

足りない。種火が。思いっきり。


まー、種火が貰えるクエストを周回するしかないですよネー的な。
いつものことだし。


今回のイベントは開催期間が17日までだったけれど、
緊急メンテとかその他諸々な事情があったのか、24日に延長。

そのおかげでゆっくりとしつつもストーリーをクリアすることができたけど。

……ストーリーは濃かったけど、色々と重たかった……。
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