聖なる月と永劫なる祝福
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2017/1/17 Tue 22:44
Release of a Paradise《プロローグ》


《Release of a Paradise》

楽園の解放と言う意味を持つカード対戦型ゲーム。通称リリパラ

ゲーム筐体に専用のカードを置きプレイする事で対戦出来るデジタルトレーディングカードゲーム。1回100円。

ここだけ聞くと普通のゲームセンターにありそうなゲームでしかないが、このリリパラは大会になると大会専用のドーム型巨大モニターにカードに描かれている絵が迫力ある立体映像として現れる仕様となっている。
その迫力に魅入られた少年少女が今日もどこかでリリパラをプレイしているだろう……






【都内某所】

……いつの間にか眠っていたようだ。このゲームセンターの爆音の中で。

「行けぇ! マグロの兄貴!」

「うわぁ! マグロは反則だろ!」

一際盛り上がりを見せている場所。周りに人が大量に集まっている所に俺は行った。

「へっへーん! マグロの兄貴は全国大会常連が使ってる強カードなんだぜ!」

このゲームは……Release of a Paradise……あぁ、リリパラか。

「でもそれレアリティ高いから僕のお小遣いじゃ買えないよ」

「俺だって誕生日プレゼントにお願いしてやっと手に入れたんだ……あぁーっ!」

突然さっき勝った少年が大声をあげた。

「もうこんな時間! 全国大会決勝が始まってるよ! 早くそこのモニターで見ようぜ!」

全国大会決勝の言葉にその場に居た全員が大会中継モニターに向かって行った。

「あいてっ!」

俺もモニターを見に行こうとしたらさっきの少年がぶつかってきた。よっぽど慌ててたんだろう。

「あっ! ごめんなさい!」

「……大丈夫。それよりこれ落としたよ」

少年が大切にしているカードを拾い、少年に渡した。

「うおっ! 俺のマグロの兄貴! ありがとうございます!」

一通りお礼を言ったあと、少年はモニターに向かって行った。

「全国大会決勝か、今はどんなプレイヤーが居るのか」

見上げたモニターに映っていたのは丁度バトルが最終局面を迎えているところだ。



《さぁぁぁてぇ! 蓮火の切り札マグロの兄貴と凛音の切り札グレートジンメンジューのぶつかり合いだぁぁぁ!》


「相変わらずDJトキヤはテンション高いな」

ゲームセンターの爆音に負けない程の声量で実況しているのはリリパラ専属DJのDJトキヤ。一時期アイドル活動をしていたがいつの間にかリリパラに魅了され、今ではアイドル兼DJと言う肩書を持つ。


《俺のマグロの兄貴と互角とは、流石だな風華神社の舞姫!》

《お褒め頂きありがとうございます。ですが、私にグレートジンメンジューを出させた貴方の腕前もなかなかのものです》

《ありがとよっ! 行けマグロの兄貴! アクティブカード使用!》

《っ!?》

《フレイムハンマーを使用! グレートジンメンジューのパワーを2000下げるぜ!》

《くっ! アクティブカード! 自由を求める風を使用! グレートジンメンジューのパワーを2000上げます!》

《なんだとっ! ちっ、相打ちか》

《なんとか凌ぎましたね》

《なんと言う白熱のバトル 両者のエースが激闘の末相打ちだァァァ



「すげぇ! やっぱマグロの兄貴つぇぇ!」

「でもグレートジンメンジューも凄く強かったよ!」

モニターに釘付けな少年達。それに混じって周りの少年や大人達、更には店員もモニターに釘付けである。



《楽しかったぜ風華! だが、それもこのアタックで終わりだ! 行け! ハニワひのこ!》

《見事な戦術です。そのアタックは私のライフで受けましょう》

《勝負ありぃぃぃ! 激闘の末勝利したのはぁぁ! 赤属性の貴公子 東方院蓮火だぁぁぁ




「すげぇバトルだったな!」

「うん! 見てたらバトルがしたくなったよ!」

「じゃあバトルしようぜ!」

決勝中継も終わり、皆自分のやりたいゲームに向かって行った。


「良いバトルだった……のか?」

間違い無く良いバトルだったのだろう。だけど俺は何か引っかかる所があった。あの風華凛音と言うプレイヤーが最後に持っていた1枚のカード。なぜあれを使わなかったのか……



【決勝会場】

「さぁぁぁて! 優勝した蓮火選手にはこの世界に1つしかない赤属性の竜《烈火竜フレイムドラゴン》を進呈だぁぁぁ!」

「ありがとうございます!」

「凛音選手もぉぉぉ! 次は優勝目指して頑張ってくださぁぁぁぁい!」

「はい、あの、近い……」

「それではまた次回! DJトキヤでしたぁぁぁぁぁ!」


「ふぅ、やっと終わりましたか」

「おぅ、おつかれさん」

「東方院さん。お疲れ様です」

「これで俺も幻の竜族を手に入れた……お前も持っている竜族をな」

「……気付いてましたか」

「当たり前だ。だが、これで次は対等な立場でバトルが出来るぜ」

「そうですね。その時が来たら全力でお相手しましょう」

「あぁ! じゃあお互いの健闘を讃えて握手しようぜ!」

「……すみません。風華神社の掟で異性との握手は将来を誓えると見込んだ方のみとなってますので、その気持ちだけお受け取りします」

「あー、神社の娘ってのも大分面倒くさいんだな」

「お心遣い感謝します。それでは私はここで失礼させていただきます」

「応! またな!」



「これで私を含めて4人の竜族使いが揃いました。ここからが本番ですよ、風竜ストライクドラゴン」





【決勝会場裏側】

「4人の竜族使いが揃った時、新たな時代が幕を上げる……か。烈火竜フレイムドラゴンの使い手東方院蓮火。風竜ストライクドラゴンの使い手風華凛音。水氷竜スノーホワイトドラゴンの使い手雪里しぐれ。地竜ダークランドドラゴンの使い手来栖川大地……そして」

一息置き、私は古い本の最後のページを見る。

「4人の竜族使いが現れしとき、星の輝きを纏いし竜使いが現れ、次の時代に進む……5人目の竜族使い。星輝竜スターリードラゴンの使い手……一ノ瀬永矢」



プロローグ・完


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