またひとつ、ゆっくりとミルクを掻き交ぜる。ミルクが渦をまいて深く深く混ざっていく。


あなたはと言うと、カウンターうえで静かに時をつげるラジオのニュースにも、手元で冷めていくコーヒーにも無関心で、新聞をめくりまた新しいタバコに火をつけた。
あなたの暇つぶし。同じ喫茶店で並ぶカウンター。私の時間稼ぎ。
あなたのそのゴツゴツとした指が、血管が、渇いた唇から吐き出される煙が。
私の中へ流れこんで、隠していた私を見つけだし心臓を強く叩く。
そういうものすべてを極めて冷静にあらゆる感情を顔に出さずにミルクをまたひとつカップに落とす。


そして私はただただ手元の紅茶が温度を失うのを怖がるのだ。






( 音のない秒針(ルパン/次元と) )



ぜいたく

|

-エムブロ-