話題:ひとりごと
好きだったはずの作品。
久しぶりに読むと、主人公の気持ち悪さに吐き気がする。
小学生の頃の成功体験を十数年後も引きずる精神性。
悲観するほど悲観的なことが何一つ起こらない筋書き。
大して不幸に見えない主人公に共感できる程度には、自分も苦労を知らない人生を暮らしてきてたんだなと今にして思う。
そんな風に人と不幸を比べることに意味はない。
大変なことは、その人にとっては大変なのだから、大変だ。
誰かの大変さをわかってやることはできないから、悩みに貴賤はない。
だから、俺は俺の主観に基づいてこの物語の主人公の運命を眺めて物をいう。
この物語の主人公は、小さな傷を大きく見せたがるガキ大将と同じだ。
何の苦労もしてないから、自分の一番の幸せと今の幸せの差で不幸な気分に浸るしかない。
いつまでも自分の人生の当事者になれない。
大切だったものが大切じゃなくなることは、別に悲しくない。
寂しいことは偉くも何ともない。
大切なものが、大切だったのに何もしなかった自分を、自分で慰める主人公の気持ち悪さだけが胸を刺す。