*御伽話チックなパラレル*
*人間×人外な高新*





御伽話チックな高新って良くない?と思ってて。最後はラブラブハッピーエンドじゃない御伽話も好きなんだよね。若干切ない系と言うのですかね。

設定は江戸中期くらいにしておこう。外灯やランプは江戸市中にも当然普及はしてなくて、精々で夜の灯りは提灯や行灯、ろうそくが主流だったくらいがいいかな。
もちろん行灯やろうそくの灯りだから、現代の電子の作る明るさよりは全然薄暗いよね。行灯を灯していてもお部屋中の隅々までは光は行き届かないしね。むしろ部屋の隅っこ、壁際や襖にはまだ薄暗闇がわだかまっている。天井の隅や、複雑な曲線を描く欄間の細工の所々にも。
そして光も届かない深い山の中や、深い深い森の中には本当の深淵がある。真の暗闇が。

そうやって夜のいたるところに闇がある、たとえろうそくを翳しても、夜=闇の気配からはどうしても免れない。闇という自然の摂理がまだ全然夜を支配していた、誰もそれからは逃れられなかった、これはそんな時代のお話がいいな。

さて。このお話の中の晋助と言えば、江戸市中でも名うての名家のボンボンご子息だったのだけど(そこ変わんねーな)。んでも父上とはめっちゃ折り合い悪くて、顔合わせれば喧嘩ばっかりしてて、もちろん晋助だから剣の腕はバリッバリ立つけど、何なら名門流派の免許皆伝とか全然取ってるけどそれだけじゃ父上を黙らせるとかできよう筈もなくて、そんなんだからあまり実家にも居たくなく、しょっちゅう朝帰りばっかりしてましたよね。
何ならよく馴染みのオンナのとこでもしけこんでて実家にはあまり寄り付かないとかね、吉原に流連(居続け)で馴染みの花魁のとこにしけこんでるとか、この話の晋助と言えばそんな感じですよ(こらこら晋助?ちゃんとお家には帰るのよ?)


だからねえ、その“森”を見つけたのも本当に偶然だった。
吉原からの帰り、酔い覚ましがてら気まぐれにふらりと大回りして、江戸市中をぶらぶら歩いてたのですよ。時刻は草木も眠る丑三つ時ですね、お空のてっぺんに上った満月が下界を白く照らしていて。てか、んな時間に吉原から帰ってくるとかすごくね?朝まで居ねえのがすっげえ女泣かせと言いますかね(いや遊びすぎ)
そんでね、深川の辺りをぶらぶらしてた頃かな?何なら腰に下げた酒瓶をちまちま呑みながら歩いてますけども(まだ呑んでやがる晋助)、ふと横手を見たらね、どうした事か鬱蒼とした森が繁っているんですよ。


「……んなとこに森なんてあったか?」


晋助はもちろん訝った。だってこの辺はまだ緑も多くて狸とか狐も出てくるけど(設定は江戸中期です)、ここまで鬱蒼とした森なんて記憶にはない。でも晋助もいい加減酔っ払ってるので、物は試しと森に分け入ってみたのですよ。
これは好奇心もあるなあ。てか晋助は元からして好奇心の塊のような男じゃないか。


「(もしかすると狐か狸に化かされてんじゃねェか)」

などとは思いますが、もちろん腰には刀も下げてるのでね、その硬い柄を握れば自然といつもの自分を取り戻せますよ。

「(……馬鹿馬鹿しい。この俺がそんな畜生に化かされる筈がねェな。もし何かあったら斬るだけだ)」

なんてね。そこは絶対的な自信あるからさ。でもこんな夜中に不可思議な森の中に分け入るだなんて、痛烈に興味を持ってしまったなんて、その時点でもう晋助は『呼ばれてる』んだけどね。

その森に在る何かにね。


てか何度も言うけど、時刻は丑三つ時ですよ?月の光くらいは射してるけど、そんな陰鬱な森の中なんて当然暗闇が広がるばかりで何も見えない。見えないけど、晋助は歩みを止める事もなかった。
たまたま持っていた提灯を左手に掲げて(瀟洒な藤色の家紋入り)、唇にはいつもの煙管を咥えて、晋助はためらいなく森の奥に進んでいった。


そうしたらね。森の中を所狭しと生えている木々の枝をひょいと頭を下げてくぐったところに、こんなところには場違いなほど大きな一軒の日本家屋があったの。ちょうどそこだけ木もなく、切り取られたように不可思議にぽっかりと空間が拓けていて。その黒光りする日本瓦も、白い月光を浴びて冴え冴えと照り光っている。


「……これは……」

ごく自然に感嘆の声が出た。その家屋の側まで行って提灯を掲げて見てみる。家は相当に古いが、たしかに人の住んでいる気配がある。板塀や玄関戸は飴色になって経年の変化を感じさせたが、ここには人のいないあばら家特有の風情はない。何よりただのあばら家にこんな重厚な趣きは出せまい。
まさかこんな森の奥で日本家屋にぶち当たるなんて、本当に夢でもみてるようだった。

だから晋助もいよいよこの状況を訝ってね、何ならその玄関戸に手を掛けてですね、

それでもふっつーに開けてみようとするよね。晋助だしね、遠慮も何もなく開けようとしますよ(晋助?)

「まさかな。開くはずは……あるめェ」

などと晋助もゴニョゴニョ言いながら玄関戸を引いたら……普通に開いたんだけどね(開いたんだ)

音もなくするすると横に滑った玄関戸を見て、晋助もいよいよ眉間に皺を刻んだよね。頭の上にはクエスチョンマークを浮かべたくらいにしてさ。
でもね、その開いた玄関の先。まっすぐ伸びた廊下の端から少年が走ってきたことには更に驚いた。少年の年頃は十五、十六歳でしょうか。白い着物に水色の道着袴、そして眼鏡をかけた黒髪の少年なのです。てか新八くんです(ハイ登場)

「あっ!こんばんは、いらっしゃい!」

新八くんは晋助に気付くとね、ぴょこんと頭を下げて丁寧にお辞儀をする。
それには更に度肝を抜かされた晋助なんだけど(顔には出てないけど)、こんな森の奥に住んでるってだけでもう晋助には不審者じゃん?だから新八くんが登場するやいなや、晋助も刀に手を掛けて、何なら軽く鯉口切ってるくれーにして(晋助待って)、

「てめェ……一体何者だ?この家は何だ?てめェバケモンの類いか?」

新八くんに矢継ぎ早に尋ねますが、新八くんがそれに答えずにテクテクと近寄って来ようとしたら、

「……これ以上俺に近寄るな。ガキだろうと容赦しねェ。近寄れば斬って捨てる」

ふっつーに眼光鋭い右目で新八くんをガン睨みして、何なら今すぐにでも刀を抜き払えるように腰を落として構えてるくらいですよね(だからお前待ってって、ほんっとお前晋助すぎなんだって)


んでも新八くんはさ、そしたら慌てるじゃん。だって急に尋ねてきた男がいきなり臨戦態勢でさあ。しかも斬るとまで抜かすとか何事よ?新八くんから見たら晋助の方が全然不審者なのよ?(確かに)

「ええ?!ちょ、待ってくださいよ!そっちが勝手にここに来たんでしょうよ!それで何で僕が斬り殺されなきゃダメなの?!アンタ新手の押し込み強盗か何かですか!」

普通にツッコミ入れつつ慌ててるので、あわあわしつつこっちに両手を翳して自分は物騒なモンじゃないアピールしてるので、そんな様子を見てたら晋助も変に殺気放ってる自分が馬鹿馬鹿しくなってね、構えを解くと。


そして一息吐いて、

「てめェ何者だ?……人間か?」

先程の疑問を再度呟く。そしたら新八くんは少し考えて、

「ええ。れっきとした人間ですよ僕は。ここには理由があって一人で住んでます」

答える。そして、

「それよりアンタこそ何者ですか?こんな夜更けに一人で森の中を彷徨ってるなんて、どこかの妖に食べられても文句は言えないですよ」
「フン。馬鹿馬鹿しい。俺がんなもんに喰われる筈があるか」
「あっ、そういうこと言う人ほどダメなんですって。それフラグですからね、そういう人ほど狸や狐に化かされてますからね。見た限りじゃ貴方はものすごく剣の腕は立つんでしょうけど、それに驕ってる感がありますもの」


新八くんも言うねえ(さっすが新八くん)
そしたら晋助も生意気なこの子にムカつくはムカつくんだけど、さりとてこの不思議な状況と不思議な少年のことは気になってるんですよ。何でこんなガキがここに一人で?とかね。どんな理由があって?とか。

「(それともコイツ、やっぱり人間じゃねェのか?妖の類いか)」

などとね。考えるんだけど、新八くんがもうくるりと踵を返して家の奥に引っ込んでいくからさ。そして廊下の中奥まで進んでからチラとこちらを振り返り、

「寄っていかないんですか?朝になるまでここで休んで行かれたらいいですよ。どのみち、貴方はここでこの家を見つけたんですから。もう朝まではこの森から出られないです」

すごく気になる事をさらりと言うからさ。それには晋助もピクリと片眉を釣り上げてね、

「あ?出られねえだと?……てめェやっぱり人間じゃねえな。この森の何を知ってる」

不躾に聞くけど、んなもんはここに住んでる新八くんだとて分かんないのですよ(え)

「さあ……僕はよく分かりません。この家と森から出たことはないですし。でもね、たまにこの家に迷い込んでこられる人はいるんです。ちょうど今の貴方のようにですね。そういう方は朝になるまで森からは出られないみたいです。だって何度この家から出立しても、皆してまたここに戻ってくるんですよ?そういう仕組みなんですかね」

のんびり言うので、晋助もいよいよ訳が分からなくなってね。でもふと思ったのですよ、これは俗に言う『迷い家』ってやつじゃねえかと。
森の奥や山奥でふと出会う妙な家のことですね。出会ったからって別に何かに取り憑かれるとか、そんなもんでもないんだけどさ。でもたしかにそこはこの世じゃない。この迷い家は隠り世(かくりよ)に通じてるっていうの?

現世とは切り離された空間というのですかね。だから迷い家で出された飲食物をいただいたら、現世には戻ってこられなくなっちゃうんだけどね。って、コレで迷い家の設定合ってるっけ?(調べないで書くという)


だから晋助も多少は薄気味悪く思いつつ、朝までどうもできねえなら仕方ねェ、とばかりに新八くんに続いて家に上がったんですよ。

「あ、やっぱり上がっていかれますか。それがいいですよ」
「……てめェ、何か妙なことを俺にしたら即座に斬るからな」
「いやだから、そんなんしませんってば。アンタ簡単に斬る斬る言うなよ。ほんと喧嘩っ早いってよく言われませんか」(←新八くん)


深い森の奥でこんな不思議な出会いを果たす高新なのですけどね。
てか新八くんが不可思議な存在の高新良くね?っていう萌えがあってさ。晋助の方が純然たる人間というかね。人間×人外萌え。

てかやっぱりプロローグがめっちゃ長えじゃん!全然端折れてねーじゃん、キリねえから次に続く!(え?)