3日連続で朝、海へ行った。


東京湾。わけもわからず夜に膝までつかり泣き叫んだり、ランニングがてら走ったり。海まで1分ほどで、着く環境であるからこそ、ああこの海も僕のことを知っているのだなと。

冬は基本的には窓を閉じているのであまり会わないが、夏場は毎日のように海からの砂が僕の部屋を訪れる。微生物や貝たちの歴史の結晶だとか思うと、なんだか愛しい。砂ってあったかいもんね。

窓を開かないと。でも、もうそんな気力はない。

海は受け入れてはくれなかった。波や海風、ましてや渡り鳥たちさえ僕を拒んできた。そうそもそも受容されるわけがなかった。

年をなんとか越した愛犬なながいる。3ヶ月前に亡くなったいちの想いを一身に引き受けて、懸命に生きている。臓器にも癌があるが、特に喉は腫瘍だらけ。そのせいで常に喉が締め付けられ、あんなに大好きだった食事が進まない。

犬には死の恐怖がないんだとか。僕はそうは思わない。今だって「喉がいたい」「苦しい」と叫んでいるはずだ。不安でたまらないと思う。

でも、僕にはどうすることもできない。

こんな状態で必死に生きている愛犬を前にしても、僕は生きたいと思えない。

なぜかは僕もわからない。もう生きたい理由と死にたい理由どちらも探すのが億劫になった。

ナミブ砂漠で骨のようになってしまったおばあちゃんライオン。あのライオンと僕は多分似ている。というより、似ていたい。最後まで、高貴さを失いたくない。


静かに、囁きながら、あとは海風に。