話題:今日見た夢


夜空に赤い月が浮かんでいた。
透き通った硝子のようなそれは、美しくも不気味な輝きを放っている。



ぴしり



不意に、月に罅が入る。
それは蜘蛛の巣状に月全体に拡がっていくと、音も無く崩れ落ちていった。

月が無くなった夜空には星は見当たらず、ただただ真っ暗だ。
見るものの無くなった夜空に興味を失い、上げていた視線を下げようとしたその時だった。
真っ黒な夜空に滲み出すようにして、赤い月が再び浮かび上がった。
新たに浮かんだ月も血のように赤く硝子のような透明感があり、やはり不気味で美しい。
そして、再び罅が入ると音も無く崩れ落ちていく。
それを何度か繰り返した。

いつの間にか隣に居た人が『あれは凶兆の予感だから良くない事が起こる』と教えてくれたが、返す返事に困り、何とも気の抜けた声を出す事しか出来なかった。





夜が明ける。


外を歩いていると、見た事のない生物が地を這っているのを見付けた。
虫と茸を掛け合わせたような生き物。
そいつはヌラヌラとした光沢を放ちながら草むらに潜り込むと姿を消した。
あれは何だろうか。
好奇心に負け、草むらに入るとその先に続く森へと足を踏み入れた。

鬱蒼と草木の繁る薄暗い其処は、所々に光る茸や花が咲いていて幻想的だ。

ただ、そんな光景には似つかわしくない生き物達が跋扈していた。
巻き貝と虫を合わせた生物が苔むした倒木を粘液の糸を引きながら這い、蛞蝓と茸を合わせた生物が草を食んでいる。
頭上では鳥とも蝙蝠とも虫ともつかない生物が耳障りな音を立て飛び回り、やや離れた所で触手のようなものを生やした何かが地鳴りを伴って移動する姿が、木々の隙間から見えた。

昨夜、誰かが教えてくれた『凶兆』があれなのだろうか。
確かにどれもこれも気味の悪い姿で、良くないものに見える。
それはそう、異界の化け物か或いは地球外から来た生命体のような。


『侵略』


そんな言葉が脳裏を過った。