話題:今日見た夢



ゾンビが世界に溢れていた。

否、ゾンビといっても知能があり、腐敗はしてないので元ゾンビとでも云えばいいのだろうか。

一度は死んだ筈の人間があちらこちらで生き返ると、元通りの日常を送っていた。

腐敗したり、損傷が激しい死体も映像を逆再生したように肉や血管が骨に絡み付き、皮膚がその上を這うようにして覆うと綺麗な人間の姿に戻り、そして息を吹き返す。

ゾンビではない人間達は“黄泉がえり”だの“神の奇跡”だと口々に云い合っていたが、実際にその原因は不明である。


一旦死んでいるからか、彼らは何処と無く人間としてはぎこちない感じであった。

動きは滑らかさに欠け、まるでロボットのようにギクシャクとしていたし、感情はあるものの何と云うか薄弱としていた。

一度死んでいるのだから仕方がないのかもしれないが、元は死体だったというのも相俟って彼らが操り人形のようにも思えた。
もし操られているのだとしたら、何とも悪趣味な人形だ。
操っている奴の気が知れない。

同じような考えの人間は結構居るらしく、流石に大っぴらにはしていないが元死体の彼らを嫌っている連中も少なくはない。
生き返った彼らは人間らしさに欠けているのだ。
私自身、彼らを嫌悪する事はなかったが、同じ人間として見る事は難しかった。


けれど、死んだあの人が帰ってきてくれたのは本当に嬉しかった。
人形のようではあるけれど、私の名前をぎこちない声色で呼んで『ただいま』と云ってくれたのは嬉しくて嬉しくて堪らなかった。

だからこそ悲しかった。

『何で泣いているの?分からないよ』

喜びとは違う涙を流す私に彼はそう、ぎこちなく云った。