話題:今日見た夢




瓦礫と化した街を歩いていた。

ゴーグルとマスクを着けていなければその場に居られないほどに、空気が淀んでいる。
所々が遮られ、車一台が漸く通れるほどの広さしかない道を歩きながら辺りを見回す。

横倒しになった信号機や電柱。
壁が崩壊し、内部が剥き出しになった建物。
焼け焦げたり大破した車が、砕けせり上がったアスファルトに転がるように止まっている。
水道管でも破裂しているのか、至る所で水が噴き出していた。

どうしてこうなっているのかは分からないが、何か大変な事が起きたのは確かだろう。


途中まで歩いてきた道が瓦礫に塞がれ無くなり、コンクリートの塊になったビルの壁を乗り越え先へ進むと、珍しく原型を留めた建物が幾つかあった。
其処はどれも避難所や或いは病院の代わりになっているのか、白衣を着た人や怪我をした人々が出入りしており、時折担架で赤い染みの付いたシーツにくるまれた何かが運ばれてきていた。

其処を横目に通り過ぎると再び拓けた道の先へと進む。
途中、行きには無かった大型の車両や重装備の人達とすれ違ったが忙しいのか、此方をチラリと一瞥するものの声を掛けられたりは一切しなかった。
しかし、この先に何かがあるのかもしれない。
そう確信すると更に奥へと向かった。

暫く歩いていると再び道が瓦礫に塞がれて無くなり、時々すれ違っていた車両や重装備の人達も見なくなった。
その代わり、遠くの方で何か砕けるような鈍い音がする。

一体この先には何があるのだろう…そう思いつつ先程より足場の悪い其処を歩いていると不意に誰かに肩を叩かれ、振り返ると防護服に身を包んだ人が立っていた。
顔を完全に覆っているガスマスクを着けたその人の表情は、ゴーグルの奥に見える目からだけでは判断出来ないが怒っているわけではなさそうだ。
その人は私を真っ直ぐに見つめると、それ以上行ってはいけないと云う。

何故?そう訊き返すとその人は私の腕を引いて少し高い場所へ行くと、街の中心に向かって指をさした。

日が暮れ始めているのか、赤橙色をした光が霞んだ空気に乱反射して辺りを染めている。
その光をバックにして、遠くで巨大な何かの影が複数蠢いていた。
ずんぐりとした人型をしているそれらは手近にあった半壊している高層ビルを砕くと、手で口元に運んでは貪るような仕草をしている。

あれはね、呆然とその影を見つめる私にそう防護服の人が言葉を続ける。

その人によれば、あれは街を浄化しているのだという。
街の地下にあった実験施設が事故で爆発し、撒き散らされた有害物質をああやって付着した物もろとも食べているのだそうだ。
そして、あれが居る場所が最も汚染が酷い場所で、防護服を着ていても長時間居られないほどの危険地帯なのだという。
どうやら、知らず知らずの内に私はその危険なラインに入り込もうとしていたようだ。

それじゃあ戻ろうね。

防護服のその人はそう云うと、もと着た道の方に向かって私の手を引いた。