話題:今日見た夢



山の中のやや拓けた場所に、四角い家が建っていた。

壁面の一部が硝子張りになっているコンクリート製の近代的なデザインの建物で、二三階建てのそれは家と云うよりは小さいビルといった方が正しいかもしれない。
一階部分の半分程が駐車スペースになっており、窪んだ形になっていた。

いつ頃から使われていないのか、建物は全体的に見て酷く汚れている。
駐車スペースには吹き込んだ落ち葉が山のように溜まり、かつて透き通っていたであろう硝子の壁面は、砂埃や蜘蛛の巣がこびりつき濁ったようになっていた。

中に入ると、硝子張りになっている部分は吹き抜けのエントランスになっていた。
硝子張りの壁を覆うように上から布が全面に掛けられていて薄暗かったが、天井の一部も硝子張りになっているらしく、積もった落ち葉や砂埃をすり抜けるようにして其処から光が漏れていた。

ふと横を見るとドアがあった。
硝子が嵌め込まれた金属製のドアで、やや曇っている硝子の向こうには闇が広がっているのが見える。その奥が気になって手を伸ばすと、ドア越しに何とも言い様のない嫌な気配がした。

思わず手を引っ込める。

開けてはいけない。
逃げなければ。
そう思ったが、見えない何かが此方を見ていて目を逸らしたら、或いは背を向けてしまったら襲ってくるのではないか…そんな気がして動けなかった。

どうしようもなくドアを睨んでいると突然、凄まじい音を立てながらドアの取っ手が上下に激しく動き出した。

何かが此方へ来ようとしている。

咄嗟に飛び退くように後退すると、そのままの勢いで入り口のドアを開けた。
ドアに阻まれていた光が一気に射し込み目が眩んだが、それに怯む事なく外へ飛び出す。

ああ、何とか助かった。

その場にへたり込むと安堵からか、自然と笑いが漏れた。





ガチャリ。



その背後でドアが開く音がしたが、振り返る事はしなかった。