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6月12日ホミン会について

ラブアンドジャスティス30(閲覧注意/U)

『おはよう、』

寝癖がついたままの頭でそう言ってきた。
午前七時。
毎日支店からかかってくる部下たちからの電話対応に追われて、座ってるだけなのに疲労困憊だったのもたたったらしい。
起きれなかったようだ。

改めてチャンミンの部屋を見渡した。
ダンボールがいくつもあった。
散らかってはないけど、片付いてもいない部屋だった。

ベッドが一番散らかっていた。
乱れて、汚れて、散らかっている。

チャンミンはペットボトルの水を渡してきた。
常温だった。
冷たすぎず、温かいわけでもない、一番飲みやすい温度。

ベッドに少しだけ弾むようにして座ってきた。
キャップを開けて水を流し込む。
体が求めるままに喉を通した。
その間にチャンミンは寄りかかって寝癖頭を預けてきた。

『遅刻しちゃうね、』

声が少し枯れていた。
俺のせいだろう。
昨夜のせい。
再会の夜に盛り上がりすぎて、野生に帰りそうだった。

『いい、すこし遅れるって連絡しておくから、』
『うん、』

やっぱり声は掠れていた。
それがまた色っぽくて、ちょっと押したら簡単にベッドに倒れやがった。
上に乗ってやったら、腕を回してきた。
俺の首に。
真下から見上げてくる。
それから何かを確かめるように、俺の頬に触れてきた。

『だめだよ、僕は大人の事情で有給使いまくるんだから、』

笑ってるのに、皮肉を言っているのに、泣きそうな顔をしてるのはなんでだろう。

『少し遅れるどころじゃ、なくなるよ、』

だったらまだ少し遅れるって、連絡するだけだ。

『今度は僕が、離せなくなっちゃうよ、』

それならそれで構わない。
こいつを連れて事務所に行くだけだ。

しかし、こんなヤツだったっけな。

どちらかと言うと、俺の方がベタベタしたがってたんじゃないかな。

結果、こいつが可愛ければなんでもいいけど。

『ねえ、お腹空かない?』

そういえば昨日の昼から何も食べていない。
それはこいつも同じだろう。

でも、とりあえずこいつを食べたい。

『めっちゃ空いてる、けど、』

見下ろす唇を食べる。
絶対にされるって、解ってた唇だ。
キスされる、食われる、朝からやられるって、解ってる唇。

『こっちが、先、』

食ってやると、わかってるって顔で笑ったのを俺は見逃さなかった。
しっかりと上に乗って、着ているシャツのなかに手を入れる。
指先につんと当たる胸。
感度がいいんだろうなと思う。
比較とかしようがないからわからないが。

『は、んぅ、』

キスをしながら胸を潰してやると、肩が大きく跳ね上がる。
膝が震える。
そして喉も。

『ふんぅっ、』

指先に力を入れて、胸を引っ掻いてやった。
顎が揺れて唇が外れる。

『ね、ゆん、んんふ、』

制止する手をまたベッドに縛り付けて、首筋から鎖骨まで吸ってやった。
上昇した体温。
耳元で喘ぐ声。
そこに朝の生理現象が加わる。

そうなると、もう、止まらないわけで。

昨夜脱がしてやった下着。
朝になったらいつの間にか履いていて、ちょっと悔しくて脱がしてやった。
抵抗もしないで、脱がすのを手伝うみたいに腰を動かしたぐらいだ。

女相手にこんな動きしないだろ。
じゃあ、いつの間にそんなこと覚えたんだよって、言いたくなった。

けれど、チャンミンは男相手っていうのは、俺しか知らない。
それなら、俺で学んだことなんだろう。

本能で、俺に従うべきことを体が察知した。

愉快だ。

会えなかった時間ていうのは、こんなにも男を従順にさせるものなのだろうか。

愉快だ。
実に、愉快だ。

『はは、お前、立ってんじゃん、』
『んむ、やめ、』

俺だって立ってるけど。
いいんだ、こういう時は棚上げで。
いいんだよ。
どうせ従順だから。

『もう止めるつもりなんてねえだろ、』
『っ、だって、』

愉快だ。
こいつが「だって」だとか「でも」だと使うと、あの頃の俺と真逆だなって感じるから。

やっぱり俺がこいつより勝るものは、これなんだ。

こういうところで男を見せるってのは、人間の本質を見せるようなもんだとも思っていたりする。
惚れた相手を従えるってのは軸になるだろう。
誰も知らなくていい顔だ。
お互いにネ。
ふたりきりになった時に、この関係が確立していればもっと胸張ってこいつを引っ張ってやれる。

自分がこんなに俺様な奴だったってのも、こいつを通して知ったことでもあるけどサ。

『どうされたい?』

内股になって隠す。
でかくしてるくせに。
昨日だって散々オープンにしてたくせに。
細くて長い足が内側に寄るところを改めて見ると、やっぱり変な気分になるもんだ。

『どうって、だって、もう、』

いつもなら言いたいことはガツンと言うくせに。
俺にはね。
欲求は隠すのか。
隠しきれてねえけど。

『入れられてえの?遊ばなくていいわけ?』

ぐっちゃぐちゃに遊んでやってもいいけど、涙目になって睨んでくるあたり、あまり余裕はないようだ。

愉快だネ。

『あそぶって、やだ、もう、ねえっ、』

俺の肩を掴んで、足と足を擦り付けるように下半身を堪えている。
見上げてくる顔は目の周りが赤くなって泣きそうで。
全身が濡れてるみたいにして、俺にどうにかしろって訴えてくる。

閉じた足をこじ開けて、膨らませたチャンミンのそれを掴んでやった。

『あん、』

膨らませてくるくせに、女みたいに鳴きやがって。

そして力を入れてやる。

『や、やっ、痛っ、』

嘘だ。
痛いんじゃない。
その顔はネ。
気持ちいいの一歩手前。
そういう刺激。

期待の声だろう。

『なんだヨ、お前、会わないうちにほんとエロくなったじゃん、』

『それ、はっ、ユンホくんが悪いんじゃないっ、』

大人らしからぬ発言だ。

『なんで、』

『だって、』

また、「だって」だってサ。

『そうなっちゃうんだもん、』

そうなる?
こんなふうにエロい顔になるってことか?

『ユンホくんだから、ユンホくんがいるから、勝手に、こうなっちゃうんだよ、』

そう言って、「バカ」って付け加えてきた。

へえ。
いいこと聞いたナ。

俺が相手だと、エロくなって、従順になるわけか。

へえ。
こんなに愉快なことがあるだろうか。

『入れられてえんだろ、』

『...ふんん、』

どっちとも言えない返事をするけど、濡れた睫毛を伏せて唇を引く。
頷いて見えなくもないな。

『じゃあ、口でして、』

今度は唇を半開きにして、見上げてくる。
数秒間、黙った。
それからまた唇を引いて結んで、深く頷く。

言ってみるものだ。

ベッドの上で立ち膝になる。
チャンミンも背中を起こして、前屈みになった。
片手を足の間について、片手を俺に添えてくる。
それから下から見上げるようにうっとり眺め、赤い舌を覗かせて口に含んでいった。

スローモーションに見えた。

動きひとつひとつが、エロい。
あの頃よりも、三割も四割も増してるんじゃないのかな。

尻が濡れるのは最初に抱いた時から解ってた。
男ってこと忘れるぐらいに。
それも増してるんじゃないかと思う。
会えなかった分、全身で色んなものを分泌しちまってるとしか思えない。

首を前後に動かすようにして、口の中で俺を行き来させる。
ちゃんと歯を閉まって、唇と舌でな撫でてくる。

『んむ、』

時々苦しそうに眉を寄せる。
息づきするような呼吸は、咥えられている俺に暖かい息を吹きかけた。

ちらり、ちらりと見上げてくる。
目が合う。
けれどすぐにその睫毛を伏せるようにして逸らす。
頬は赤い。
耳まで。

本当に可愛いやつだなって思う。
健気だなって。
そうさせているのは俺なんだけど。

『ね、』

声を掛けてきた。

『きもちいい?』

大きな目を潤ませて、見上げてくる。

『ウン、でも、もっと、』

十分に満足なんだけど、それだけで終わりにさせてやらないって意地悪いことをしたくなる。
それはチャンミンが悪いんだ。
チャンミンが俺にそうさせる。
エロいチャンミンが悪い。

喉の奥まで突き刺してやる。

さすがに来るしいようで、目をぎゅっと閉じて呼吸をするために舌の動きを止めたようだった。

『止めんな、』

う、と小さく呻いた声が聞こえた。
そして喉を開くようにして、また口内で行き来させる。
そして吸うことを加えてきた。
溢れる唾液を飲み込むついでだろう。
吸い込むと同時に、舌が動く。
舌で込み上げるものを煽るように動かすんだ。
血管をなぞられるのが気持ちいい。

生理的な涙だろう。
俺をしゃぶりながら、チャンミンは目尻を濡らしていた。
それでも伺う為に覗く目は恥じらって、喜んでいる。
赤くさせて、喜んでいる。

『んぷ、』

顎から多分俺から出ちゃってるものが垂れていた。
透明のね。
俺はまだ出してない。
出すならやっぱり、こいつの中だろう。

ようやく抜いてやると、チャンミンの頭がふらりと揺らいだ。

だいぶ顎を酷使させたようだ。
ベタベタに濡れた顎と唇を手で拭っている。そんな様子もまた、いちいち卑猥に見えるのだった。


『で?』

これで終わりなはずもなく。

『え?』

入れる為に何をするか。

『どうされたいって?』

お願いの声のひとつも、聞いてみたいものだ。

『それは、だからっ、』

また赤くなって、俺を睨む。
これが俺の快感になる。

『言えよ、』

『っ、』

追い詰めたくなるっていうのは、こういう事なのかって、思ってしまう。
味をしめてしまう。

観念しなヨ。

どうせお前は、一生俺から逃げられねえんだから。

『...、』

『じゃあ、俺仕事行くけど?』

『や、』

『なんだよ、』

『やだ、』

ダメだ。
これが可愛いんだ。
恥じらって、壊れてしまいそうになるこの瞬間が。
たまらなく可愛いんだ。

十も歳上の男なのに。

『入れてよ、ユンホくん、』

ほらネ。

『入れて、ユンホくん、おねがい、』

眉を寄せて、まだ濡れてる唇を下げ気味にして。

『これ、欲しいよ、終われないよ、』

俺の腿に手を添えて、さっきまでしゃぶっていた俺には頬を寄せてくる。
そういう女優みてえな顔をして。

『おねがい、おねがいだから、』

舐めながら、懇願する。
どこでそんな芸を磨いたんだか。
まあ、どこでもないことぐらい知ってるけどサ。

怖い男だネ、お前は。

思わず唇が、高く釣り上がってしまう自分に気付く。

気づいた瞬間、またチャンミンの体をベッドに落としている。

『ケツ、上げろよ、』

朝から犬になる。
昨夜も散々後ろから征服してやったんだ。
それで喜ぶから。
何度も何度も、後ろから俺に支配されて、操縦されて、よがって喜んでいやがった。

とんだ性癖を持ったって思うヨ、互いにネ。

素直に突き上げてくる薄い尻。
開いてよく見せてくる。
怖い、怖い。

『はは、』

俺、勝手に笑っちゃってたもんネ。

すでにぬるぬるしてるそこに当ててやると、喜んで俺に食いついてきた。
ぬるっと飲み込む。
昨日一晩でどれだけ拡がったんだって思ってしまうぐらいに。

それでも吸引力はハンパなくて、口で吸われるよりも何倍もヤバイ。

『あああああ、』

すぐに全部が入っていった。
俺の腿が、チャンミンの尻に重なる。

背中が震えてた。
膝が震えてた。

歓喜の震えだって、射し込んだものから伝わってきた。

シーツを握る手だって、震えてた。



後はもう、射精するために腰を振るだけだ。

『んやぁっ、』

エロい音が部屋中に響く。
なんだか水っぽい音だとか、肌がぶつかる音だとか、チャンミンが喘ぐ声だとか、ネ。

『きもちぃい、』

『ケツで感じてんのか、』

『だって、だって、あぁ、』

尻じゃなかったらどこで感じるんだって話だが。


チャンミンの長い腕を上から見下ろす。

快楽から逃れる為なのか、

快楽を更に得ようとする為なのか。

シーツを握りしめ、しなやかに筋肉を動かすのだった。


『はっ、あっ、っ、ん、』

打ち付ける度に短い声を出した。
顔は見えない。
けれどやはり、耳は赤いままだった。

『やらぁあ、らめええ、』

だらしの無い声が続く。

『いっちゃ、いっちゃう、』

締りがきつくなる。

『やらぁあ、いくぅうう、』

まあ、ネ、俺だってヤバイんだ。
最初から気を抜くとすぐにイッちまえた。
けど、それじゃ男じゃねえだろ。
こいつを楽しませてやれねえなんて、男じゃねえ。

そんなんじゃ、俺が俺を許せねえ。

こんだけ頑張れば、いいかな。
俺ももう、イッていいかな。

なあ、

『センセー、』

マジ、サイコーだ。

『愛してる。』



朝から中に出してやったんだ。

これでもかってぐらい、叩きつけてやったんだ。

まあネ、こいつも、喜んでたし。

それがすべてだろ。
相手が喜ばねえなら、しない。
それが俺のセックスの定義だ。
相手に求める定義でもある。
イヤならするな。

だから、

欲しいなら、強請れ。

自分の口で、強請ってみろ。

それが、俺を相手にする定義。


そして結果的に幸せに喘げればそれでよし。

それが、俺のセックスの意義になる。



完全なる遅刻。

シャワーを浴びて、着替えてからだって、何をするにもどうしてもこいつに触れることで時間を食う。

『ごめんね、何にもなくて、』

チャンミンの部屋には、本当に食うものが何も無かった。

『今度からちゃんと生活するから、』

今度から、ネ。
つまり、それって俺と恋人としての朝がある生活をするってことだろう。

『今日だけ、今日だけ外で、』

別にいつだって外でもいい。
チャンミンとなにかを一緒にするってことが、まだ新鮮だから。

遅いモーニングをカフェでして。
タバコ吸ったらちょっと驚かれて。
本当はした後にも吸いたかったんだけど、なんとなくまだ、吸っちゃ悪い気もして。

それって、大人になってからの恋人としての生活に慣れてないってことだ。
そういうものをひとつひとつ、お互いの当たり前にしていけばいいなって思ったりもした。

吸うなって言われたら、こいつの部屋では吸わないことにする。
それを当たり前のことにするさ。
吸ってもいいなら、気持ちよく済ませたあとに一本吸って余韻を楽しませてもらいたい。
そういう当たり前にする。

飯を食うとか、寝るとか、そういう恋人として一緒にいるときの当たり前のことがまだ不慣れすぎる。

それが今後の楽しみでもあるけど。


厚切りトーストとコーヒーを前にして、
チャンミンは両手で頬杖をついて、
俺を楽しそうに眺めてくる。


存外ぶりっこなところがあるようだ。
恋人に対してアピールが強くなるタイプ。

いいけどネ。

俺だって独占欲と支配欲が超強いことが解ったくらいだし。

そんなもんなのかな。

恋人を前にするって。

恋人を前にして、変わることって。


そしてそれが当たり前になって、
こいつを目の前にした時の自分の変化がわからなくなってくるんだ。

チャンミン仕様の俺になる。

俺仕様のチャンミンになる。

イイじゃん。

マジで付き合ってるっぽくて。

マジで付き合ってるんだけどサ。




『なあ、』


二本目のタバコに手を伸ばす。

チャンミンは止めようとはしなかった。


『なあに、 』


上機嫌な声だった。


『俺、実家出ようかな、』


一口目の煙を深く吸い込む。


『会社の近くに住もうかなって、』


それぐらいだったら、じいちゃんだって何も言わねえだろう。
俺だって、成人したんだ。
したばっかだけど。

まあ、そうなるとチャンミンは三十路なわけで。


『そしたらお前と、』


ふうと、煙を別なほうに吐き出す。


『毎朝一緒ってのも、いいかなって、』


顔を戻すと、頬杖をついていたぶりっこの目がもっと大きくなっていた。


『ちゃんと生活するんだろ、』


その生活を、一緒にしてもいいんじゃねえのかなって、思うわけ。


『してみせろよ、俺に、』


昼的な意味も、夜的な意味も、含めて。


『返事は?』


もう一口、煙を吸い込む。




今度は天井に向けて吐き出す。




ふう。





そしてまた、顔を戻す。





『はい。』





恥じらい赤くなる従順な彼氏が、目の前にいた。
























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ラブアンドジャスティス29(閲覧注意/CM)

『汚いよ、』

洗ってない。
そう仕向けたのは僕だけど、剥かれてしまうとやはり恥ずかしくもなった。

『いい、っていうか待てねえ、』

肩までシャツを剥かれた。
引っ張るように下も脱がされる。
彼が脱ぐ姿は、なんだかとても恥ずかしくて見ていられなかった。
顔を背けて、勝手に立ち上がる胸の存在を感じていた。
自分の体が恨めしい。
誘っておいて、恥ずかしくなるあたりが、いまいち踏み込めていない証拠なのかもしれない。

『お前よく濡れるし、』

ひどい。
やっぱりいやだ。
逃げ出したい。
ベッドの枕を掴み、彼の顔に投げつけた。

『いてえな、へへ、ほんとのことじゃん、』

信じられない。
そんなところまで見られていたなんて。
今度は軽く叩いてやろうと思ったら、両手首を掴まれた。
ベッドに押し付けられる。

薄闇のなか、ベッドの上。
縛られるように押さえつけられて、ハンパに脱がされたひどい姿。
胸も立って、そこもすでに濡れている気がしてしまう、反応しきった体。
反論できるような状態ではなかった。

裸になった彼の体を見上げる。

少し厚みが増した気がした。
水滴を弾くだろうなと思わせる、瑞々しい素肌が薄闇のなかで光る。
これから成熟していく楽しみを持った体だ。
そう思うだけで、うっとりとしてしまう。

『超ひさしぶり、』

笑うと見える、彼の白い歯。
彼の指が、僕の胸に降りてくる。
指先が着地しただけで、胸が弾かれるようだった。

『ひっ、』

そして立ったところを摘まれる。

『いっ、や、』

摘むところなんてほぼ無いその部分を摘まれる。
持ち上げられる。

『あっ、やめっ、』

痛い。
けれど、それが気持ちよくも感じてしまう。

『あ、あ、』

声が上擦る度に腰まで動いてしまう。
そうかと思うと腰が動かなくなった。
彼がその上まで下がり、唇が胸に降りてきたのだった。

『ひんっ、』

吸われる。
吸うところなんてないし、吸ってもなにも出てこないのに。
それでも凄く気持ちよくて。
舌先を固くしてごりごりと押してくる。
そして歯を立てられる。

『あ、あぁ、』

それだけで、果ててしまうのではないか。
それぐらい、僕の体は沸騰している。

『くぁっ、』

片方を吸われて、片方を指で摘まれる。
潰されて、そしてまた抓られる。

『もう、や、』
『濡れてる、』

胸の上から彼を降ろそうとした時だった。
彼が腰と腰を合わせて揺らしてきたのだった。
その時にねちねちとイヤな音が鳴ったんだ。
泣き出した僕が、彼に絡みつくように光っていた。

恥ずかしくて死んでしまいそうだ。

『誰かと、したのか?』

彼はふたつのそれを重ねるようにして手にした。
僕はもう、見ていられなかった。
自由になった腕で顔を隠す。
泣きそうになるところも、気持ちよくて開いてしまう口も、全部全部隠したかった。

『別な相手と、』
『ないよ、してない、』

するほど体力も気力もなかったよ。

『ほんとに?』
『僕達付き合ってたんでしょう、』

会えてなかったけれど。
会わなかったけれど。
一方通行だったけれど。

『ああ、』
『だから、しなかったよ、』

『だれとも?』
『うん、』

ねちねちとした音が、まだ続いていた。
胸からの刺激ほどは強くなくて、心地いいものになってきた。

『俺だって、』
『んあっ、』

油断した。
先の方を掴まれた。
指と指でぎゅっと力を入れられた。

『してねえよ、』
『くぅっ、』

先のほうが、もっとどろっとした気がした。

『お前濡れすぎ、』
『いわな、でぇっ、』

彼がふたつ一緒に掴んで前後に動かし出した。
一緒に擦られる。

『はああ、』

ますます腕を顔から退けられなくなった。
乗られた重みはもうわからない。
ただ、重ねられているそこが熱いだけ。
擦られたそこから気持ちよくなるだけ。
出てきてしまう声を必死に抑えるだけ。

『欲しかったのは、お前だけ、』

そんなこと、僕だって同じだ。
あれだけ仕事をしていたのだって、すべて彼とつり合いたいが為にだ。
誰かに抱かれたいと思う欲求なんて起きなかった。
寂しいなら寂しいだけ泣いたのだ。
泣かないと決めた日からは更に疲労が大きかったから寝てしまっていた。
仕事以外で誰かと話すことすら億劫だった。

自分のなかに、ユンホ君以外のひとがいた瞬間なんて、無かったんだ。

一瞬も。



『信じてたけどサ、』



そっか。

やっぱり僕は、愛されていたんだね。

ちゃんと、僕を想っていてくれたんだね。



なんだ、想像以上に、僕達は真剣だったんだ。



なあんだ、僕は、彼にちゃんと見てもらえてたんじゃない。



なあんだ。



隠していた顔を薄闇のなかに戻す。

見上げると、彼の顔があった。
腰と腰は相変わらずくっついている。

見下ろしてくる彼が言った。

『もっとちゃんと、事務所構えたら、』

ねちねちとした音は、続いている。

『じいちゃんにでかい顔してお前に会わせるから、』

握るふたつに、ぎゅっと力を込められる。
浮き立つ血管。
滲む粘膜。

『あっ、んっ、』

跳ねる雫。
響く粘着音。

『今度はふたりで、』
『はんっ、んんっ、』

高まる緊張感。

『ふたりの、仕事を認められるんだ、』

『あっ、い、アッ、』

放たれる白濁。
混ざる細胞。
汚れる四肢。

僕だけでも、たっぷりと白く汚れた。

『やっぱ生身は違うな、』

何か言ってるけれど、聞かなかったことにする。
肩で呼吸をしているうちに、彼は僕の足を割ってきた。
上に開くようにね。
そしてあてがう。
突き刺す。

『んふっ、』
『ちょっと我慢、してろ、』

『ああ、あ、』
『力入れんな、』

『でも、ぉお、』
『バカ、エロい、』

バカってなんだ。
バカって。
バカエロいってなんだ。

そんなどうでもいいことを考えていないと、押し入ってくるものに負けそうになる。
体を捻ってシーツにしがみつく。

『やべえ、マジきもちいい、』

腹筋が既につりそうだった。
背筋に無理をかけている気がする。

入ってきてもなお、お尻の方からねちねちとした音がした。
彼はすでに動いていた。

せっかちなのは、変わってないようだ。

お尻が裂けてしまいそうだ。

けれど、体のなかはとても緩い。
僕のなかは、どろどろしている。
そのどろどろが彼が入ってきているところから出ていってしまう。
彼はそれに塗れてぬるぬると上機嫌になる。
ああ、人体の神秘。

『超イイ、』
『やめ、言わ、』

苦しくて、そして頭のなかもどろどろで、上手く声になんてできない。

『チャンミンの体、マジエロい』
『うる、さっ、ああっ、』

違う。
僕の体をこんなにしてしまった人の方がいけないんだ。
僕は彼を好きになってしまっただけ。
彼が僕に目を付けなかったらこんな快楽は知らなかったんだ。
きっと今頃僕は可愛い彼女をエスコートして幸せだったんだ。

彼に出会わなければ。
彼と出会わなければ。

彼女をエスコートする幸せより素敵なものに出会えなんてしなかった。
こんなにも、誰かを好きになって苦しくて。そして嬉しいことなんて感じなかった。

『ひんんっ、ゆん、』

男の人に強引にリードされて気持ちされてしまう幸せを感じることなんてなかった。

『やらっ、あぁっ、やらぁっ、』
『はは、まじ、その声、やべぇから、』

意地悪な言葉も、指先も、視線も、それらが快楽になるだなんて思わなかった。

幸せなんだ。
こんなにぐちゃぐちゃになって、犬みたいになってるくせに、
幸せだって思っちゃうんだ。

そう、気がついたらひっくり返されて、犬みたいになっている。
痛みとか圧迫感もどこかにいってしまって、彼の先が到達する度にやってくる激震に耐えるだけ。

『チャンミン、イク?』

『イク、イッちゃ、』

『きもちいい?』

『きもちいぃ、ゆん、ほ、ああ、』

『へへ、』


犬と化した僕達。

それでもヒトとしてちゃんと幸せだとは感じるの。
多分泣いていた。
僕がね。

有り余る性的な彼の体力。
それに付き合うにはとても大変なものだった。
若さが違うもの。
でも、テクニックはちゃんと本能が搭載させていた。

死んでいる言葉を使うとしたら、僕は彼のそのテクニックにメロメロというものだ。

どろどろに溶かされて、メロメロに盲目している。

だから幸せなのだ。

会えなかった分の寂しさを埋めようとしても、埋めきれない。

けれどガッつけるだけガッついた。

それこそ、本当に犬みたいに。

僕の雄の部分から出てくる白いものに快感を乗せて。





僕達の種子は、全てがきっと無駄になっている。
ヒマワリのように次の夏のために生きて眠ることはできない。
放ったら破滅するだけ。
けれど、それでも放つことは止められない。
そういう悲しい性を持ってしまった。
彼と愛し合うということは、そういうこと。

けどね、

放つ回数を重ねていく度に、

破滅ではなく再生するような気もしたの。

蘇る。

心が。

生きていると、心が叫ぶ。

愛されるって、
求められるって、

脳で、心で、感じられる。

満たされる。

放って、抱かれて、満たされる。




『もっとして、』

『もっと、』

『もっとだいて、』



あなたに出会わなければ、
あなたと離れなければ、
あなたとまた結ばれなければ、

僕はこんなに求めることはしなかったはずだ。



ねえ、ユンホ君。

セックスって、気持ちいいね。


あなたに抱かれたいと願うことが、

していることは犬と同じことなのに、

どうしても崇高な願望に思えてくるんだよ。



またひっくり返された時に見えた、

僕のなかに放つあなたの顔がとても幸せそうで。

だからもっと幸せだと感じて欲しくって、

また、腰を振ってしまうんだ。



僕は今、世界一、幸せな犬である。

















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ア・デュエ13(閲覧注意/CM)

噛まれる度に、吸われる度に、胸に走る甘い衝撃。
それが疼きに変わり、熱になって留まる。
その熱が重なっていき、胸の中で燻りながら膨れ上がる。

それがなんだか、「すき」って言葉とか、「あいしてる」を叫びたくなるような感じに似ている気がして。

『ああっ、』

それらが我慢出来ずに、時々こうして意味もなく叫んでしまう。

『ユノ、もう、』

舐めるだけ。
噛むだけ。
吸うだけ。

はやくそこからどうにかして欲しい。

舐めるなら、
噛むなら、
吸うなら、

もっと下。


もう胸のなかは貴方への「すき」でいっぱいだから、
もっと下にある僕のはしたないそれを解放して欲しい。

だから、手を引いて誘導した。
我慢できないもの。

欲張りで、我慢ができなくなっている。

全部欲しいだなんて、自分でもよく言ったよなって、思ってしまう。
あとで絶対に、みんなから笑われるのだ。

でも、いいの。

だって全部欲しがらないと、きっとなんにも始まらない。

本当に満足できるものをとりあえず願わなければ、
なにひとつ満たして形にはなってくれないだろうから。

いつもなら、そんなに多くは強請らない。

けれど、これは別。
全てを叶えなければ、だめなんだ。


『あ、くぅ、んっ、』

握られる。
撫でられる。
そして、食べられる。

『あんん、』

それがすごくすごく気持ちよくて、胸が浮いて、尾てい骨で立つような不思議な感覚だった。

『あ、あ、あ、』

吸われるときの力が強くて、一瞬で終わってしまいそうになるのを堪える。
解放されたくて導いたのに、結局ここでも堪えている。

『あっ、』

膝の裏に彼の手が入り、足が開かれ、そのまま張り付けにでもされたような姿になる。
寝台の上で足を開かれ、固定される。
これはさすがに恥ずかしい。

彼の肩が動き、一瞬だけ目が合った。

そしてほんの少しだけ唇が上がり笑ったのだった。

胸がぎゅっと鳴った。
背筋に鳥肌がたつような。
それからドキドキしてしまって思わず目を閉じた。

彼の舌を感じる。
感じたら、今度は体が溶けてきてしまった。
お香も媚薬も使ってないのに、勝手に体が潤んでしまう。

嫌いな行為が、彼とのことになるとこんなにも体質すら変わってしまうものなのか。

大人のままで躾をされていた時とも違う。
彼との行為でも、少し前までの体での行為ともまた違う。

酷く、潤む。

『吸いきれない、』

足の間から彼の声がした。
それが何を意味するのか解ってしまうと、身を捩って伏せたくなった。

『アッ、』

自分の膝が弾いたように動いた。
「先」を吸われながら、「中」に指が入ってきたのだ。
そしてそこになにかが滴るものを感じた。

「先」から溢れたものが降りている。

指が「中」で蜜を掻き出す。

「先」からも「中」からも、「すき」が溢れてしまって止まらなかった。

体が、このひとがいいって言っている。

この人でなければダメだと言っている。

触れられることが、嬉しくてたらない。

『きもち、い、いぃ、』

言ったら、変な声だった。
だからだろう、彼が足の間にいて笑ったのがわかったんだ。

『んやっ、ゆの、』

『はは、』

また笑ったな。

こっちはこんなに、

すきで、すきで、すきで、

たまらないのに。

『ひぃっ、』

強く吸われる。

『あぁっ、』

出てしまった。

『んん、ふ、』

彼の口の中で、さっさと果ててしまった。

だって、「中」に入れられながら、「先」を吸われたりなんかしたら。

どうにかなってしまうしか、ないじゃない。



『はあ、』

軽い放心状態だった。
まるで初めて吐き出したあの日のようだ。
ただ呆然としている。
けれど違う。
あの日は好きではない大人達の手によって躾られただけだ。
今日は違う。
久しぶりに感じる愛しい人の指と唇で攻められたのだ。
わけが違う。
すべて違う。
行為そのものの意味が違う。

彼とでなければ、得られないものだもの。

『あっ、ああ、』

放心状態も束の間。
こじ開けられていた足の間に彼が入ってくる。

『う、んんん、んっ』

目の前が暗くなったのは、彼が僕に影を作ったからだ。
明るすぎない室内に、彼の作ってくれた影が差す。
肩と、顔がちらちらと視界に入る。
けれど、大部分は僕の足。

『痛くないか、』

急くようにして入ってきたくせに。
なんて、言えないけれど。
全部を入れたようだ。
入口がどれだけ広がってしまっているのかなんて、考えてはいけはい。

『ううん、へいき、』

苦しいけれど。
いやじゃない。

『いいか、』

『うん、』

動いていいよ。
お腹のなかにいる彼はとても苦しそうだ。
彼も早く吐き出したいに違いない。

彼は寝台に手をついた。
肩の位置が僕に近づく。
ついている膝を僕の頭の方向に向けてずらしたようだ。
そう、踏み込んでくるみたいにね。
そしたらもっと深く入ってきた。
上がったままの僕の足と、近づいてきた肩で視界が一杯になった。

『あっ、は、』

ギッ、と寝台が鳴いた。
ぶつかる太股が激しい。

『いいんっ、あ、』

激しくて、いい。
すごく、いい。

本当に、たまらないって、こういうことをいうんだ。

彼から漏れてくる声が槍を使う時とも、馬で駆けている時とも、また違った息遣いで。

また、ドキドキした。

でもね、ドキドキしている暇なんてなかった。
ぐちゃぐちゃになった僕のそこは、ぶつかる度になんだか恥ずかしくなるような音が出ているし。
彼の大きなものが出入りしているこの存在感に胸が苦しくなる。
満たされてるって思う。
満たされて、苦しいの。

幸せだなって、思ったの。

『すご、い、ああ、いいっ、ああっ!』

本当に凄い。
こんな幸福感は他にない。


膨れ上がる快感。
それに伴い、白い緊張感がせり上がる。
そう、僕の「先」から吐き出しくなる、あの感じ。

『ああ、』

彼の声。
一緒みたい。
僕と一緒。
気持ちよくてたまらないって声だった。
そういう顔もしている。
苦しそうに眉を寄せて。
息も荒くて。
男らしい。
ううん、雄。

『ああっ、』

いく。

僕も、彼も。


『あああ、いく、いくっ、いっちゃう、』

『…ミンッ、』

『いくいくいく、あ、あ、あーー』



僕が放ってしまった瞬間。
彼の咆哮も聞いたような気がしたの。

雄になってしまった、彼。

それから、雌になってしまった僕。

何度何度も前から、後ろから、交わった。

最後の頃にはもう、僕の「先」からは何も出なかった。

「中」で感じて、達していたようだった。


本当に、不思議だね。

どんどん体質が、変わっていっているんだもの。







きっと明日、部屋の世話をしてくれる人に怒られる。
こんなに汚してって、怒られる。

僕達は散々交わったあとに寝具に沈んだ。

彼の体も疲労している。
眠たい。
意識も朦朧としている。


やっと呼吸がおさまって来た頃、彼の頭が僕の胸に乗ったんだ。

唇を落とした。

それから、吸われる。

痛かった。

けれど、声は出なかった。

そして、噛まれた。
皮膚を。

心臓の真上にある皮膚を。



ああ、いつかの、あれだね。


結ぶんだよね。


じゃあ、僕も、しなくちゃ。


重たい体を起こす。
そして今度は僕が彼の胸に乗る。
顔を落とす。
唇で着地する。


舐めた。

吸った。

噛んだ。


紅くなった。



点と点が、線で繋がったような気がした。

紅い糸が見えた気がした。

胸がとても、暖かく感じた。



幸せだなって、また思った。




下を見た。






そしたら彼は、




泣いていた。




柔らかい雨季のように、泣いていた。
















続く。
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ビーマイン(ユアマイン/閲覧注意/U)

『ねえ、聞こえちゃうよ、』

知ったことか。
せっかく得たふたりの時間なのだ。

大晦日から元旦にかけて、チャンミンを俺の実家に連れてきたのだった。

大学時代の時も一緒に住んでいた仲だとは伝えた。
今も一緒に住んでいると伝えた。
チャンミンは告げなくてもいいと言った。
だが、この時代だ、男が年末に男を泊まりで実家に連れてくるなんて、頭に過ぎるものは過ぎるだろう。
チャンミンも恐れてはいるのだと思った。
告げることでなにかが変わることを、否定されることを、拒まれることを、恐れているのだろう。
それならそれで、取り敢えず引き合わせて互いの反応を見ようとも思った。

怖気付くというのも、当たり前のことだと思う。
それに関してチャンミンへどうこうは思わない。
タイミングというものは、あるはずだから。


だから、両親にはまだ言ってない。



『ああ、ユノ、』

昔俺が使っていた部屋に、ふたり分の寝室ということに用意して貰ったんだ。

そこで今、事に及んでいる。


チャンミンがいけないんだ。

チャンミンが、煽るようなことを言うから。






「ここでひとりでしたり、したの?」







そんなこと、聞いてくるから。


ひとりでっていうところが、含みすぎだ。

「誰かと」って、俺から言わせたかったんじゃないのか。

俺を試す、悪戯な唇がいけないんだ。



だから実家で、大晦日から元旦にかけてのこの夜に事に及んでやったんだ。

チャンミンが含む言い方をするのが、悪い。

俺を煽った本人が、悪いんだ。





『あん、』

見せるために脱ぐ身体のくせに。
啄んでやれば、女よりもそれらしい声を上げる。
胸が敏感にできているようでそこだけでひとり気持ちよくなれる作りなようだった。

『ねえ、声、やら、』

出したらいい、この家は広いから。
聞こえやしないだろう。

『あんん、やだ、胸ばっかり、』

チャンミンが動く度にシーツが波打つ。
肩の位置と腰の位置が反対に動くようにして見悶える。

『ねえ、イッちゃ、』

チャンミンのそれはもう出来上がっていて、俺のそれを押し付けると逃げるくせに更に喜ぶ。
けれど、まだ入れてやらない。

『だめ、』
『やめていいの、』

『やだ、だめ、やだ、』
『はは、』

小さなその円の形を描くように、ぐるりと舐めとってやる。
それからもっと小さな小さな粒を引っ張ってやる。
唇で。
そして舌で転がして潰してやるんだ。

『ああ、』
『女みたいだ、』

女より、それらしく輝く。

『やだ、言わな、』
『きれいだ、かわいい、』

俺にもっと気に入られたいがために、本能がそうさせるのだ。

『ふんん、』
『いくか、』

首を縦に振る。
本当にこれだけでいける男なのだ。

『ねえっ、ユノっ』
『いけよ、』

俺は知っている。
この男は出さなくてもいけることを。

擽る。
舐める。
吸い上げる。
磨り潰す。

『んっう、』

摘んで、また潰す。

『あぁっ、』

広げた足の膝が、力なくベッドに落ちる。
達した瞬間。

女のように達することを、覚えた体になった。
いちいち出さなくてもいける体になったようだ。

『なんか、ユノ、いじわる、』
『そうでもねえよ、』

心臓を鳴らすような呼吸をしている。
肩で呼吸をする手前のような、息の上がり方。
まだ余裕がある証拠。

『意地悪なのは、お前のほうだ、』

コドモな頃の俺を知ってどうするというのだ。
そんな時代の俺と誰かの関係にすら妬くのか。
恋愛がどんなものかも、わからなかったような時代のものに。


『ねえ、してあげる、』

チャンミンは俺を下にして、足の間に入ってきた。
唇を寄せて、口に含む。

『聞こえるかもしんねえじゃん、』

心配していたくせに、これか。
結局はその気になっていたんじゃないのか。

『じゃあ、我慢してて、』

いつからそんなに女王様気質になったんだ。

赤い舌が覗いた。
ねっとりと糸を這わせて舌を動かす。
まるで俺に見ろと言っているかのように。
命令するかのように。
視線までこちらに向けて。

挑発している。

俺の実家で、煽っている。

燃えている。

明らかな、野心。

そのくせに動きは尽くすように細やかだ。


相手の実家で、大胆に奉仕を始めるなんてね。








教師として、互いの関係を誤ったら形で知られてしまったあの時。
あれからふたりで特に気をつけるようになった。
同じ過ちを繰り返さないように、公私の分別を付けようと、極力痕跡を残さない行為を努めた。

だからなのかはわからない。
それらの反動なのかは、わからない。
チャンミンは唇で俺を苛むついでに、太股の内側に痕を浸けるように吸ってきた。

「ここならいいでしょう、」

そう言って主張するかのように。

「冬休みだし、いいでしょう。」

そう言って、戒めてきた心を今夜だけは、退けるように。



『はあ、』

俺が分泌させるものが増えてきた。
息継ぎをするその唇から、白い前歯も覗く。

『んん、』

目をうっとりとさせるその顔も、性別の間を思わせる。
この男のなかには、どちらの要素が強いのか、考えさせられる瞬間がある。
最近のチャンミンには、特に。

『すき、ユノの、ここ、脚、好きなの、』

好物ばかりを食べるように、喜びに眉を悩まし気に寄せる。
そして舌先と唇を踊らせている。


ああ、チャンミンは、

性的な成熟期を迎えているのかもしれない。


『こぼさないから、出していいよ、』

偉くなったものだな、お前も。

でもまだ、自分自身をおあずけだ。




出さないまま、唇から離れてチャンミンの足の間に入り込む。
下から上を見上げるチャンミンは、自分がどんな顔をしているのか知っているのではないかと思う。
どんなふうにして俺を見上げているのか、よく知っている。
どんな顔をすれば俺が喜ぶのかを、学んでいる。

できた嫁だ。

その嫁に、ストップをかけているのもこの嫁なのだが。

いい、それは今は考えないでおこう。

俺が不満に思っているような気になってくる。



『あああ、』

歓喜。
腹も、背中も、しっとりと汗ばんでいる。
薄闇のなかで、長い睫毛と喉を震わせて喜んでいる。

俺が入ってきたことを、喜んでいる。

全身で。

どうだ、これで満足か。

『いっ、あ、』

年季が入ったベッドが軋む。
母親が床にも布団を敷いてくれた。
本来は俺が下で寝るはずだった。
客であるチャンミンを、ベッドで寝させるために。
結局は、狭いベッドで事に及ぶことになった。

『きもち、い、』

喉が更に高く反る。

『ユノ、あ、んん、あした、』

明日、つまり、元旦か。

『ぼく、』

『うん、』

『いうからね、』

『…、』

何を、とは聞き返さなかった。



どこに力を入れれば俺が喜ぶのかを、この体は知っている。
よく、知っているのだ。
だから互いに調整し合って及んでいるようにすら思う。


その途中だった。






『あけまして、おめでとう、』


いくらその瞬間だって、その最中に分かったからって。

なにもまぐわっている最中に言わなくてもいいのではないか。

いつも俺の言動に笑って突っ込むくせに。
明日の朝は、俺がこっそり突っ込んでやるからな。

『おめでとう、また、よろしく、』


この後に果てて、そこで終わった。

おめでとうなんて交わしたら、もう、そこまでだろう。

結局朝まで、俺が長年使っていたそのベッドでふたりで過ごしたのだった。

俺達の部屋の、あのでかいベッドが恋しくなったり、ならなかったり。




母親にバレないように朝のうちに風呂に入り、また二度寝をする。
台所で煮炊きする音が聞こえる頃に目を覚ますと、チャンミンはベッドの上にはいなかった。

階下に降りる。

母親と、チャンミンの声がした。
キッチンに入る手前で、ふたりの声だけを拾う。

『なんとなく、そんな気がしたわよ、』

母親が笑っていた。

『ごめんなさい。』

チャンミンが言った。

『でも、それはユンホから聞かされるべきだったんじゃないかしら、』

チャンミンは何を言ったのだろう。
いや、察しはおおいにつくのだが。

『いえ、もとは、僕が彼を好きで、好きで、好きで、』

雑煮のいいにおいがする。

『おかあさん、ごめんなさい、』

うちのにおいだ。

『今も、これからも、彼のそばにいさせてください。』

顔は見えない。
けれど、チャンミンは母親に腰を折って頭を下げたのだろう。

『彼からおかあさんやおとうさんに告げられると、なんでも彼に任せきりになっていく関係になってしまいそうで、』


つまり、昨夜の時点でカミングアウトできなかった理由は、
両親に拒まれる云々ではなく、
チャンミンは自分の意思でふたりに告げるタイミングを探っていたということだ。

自分の声で、
俺の意思よりも、
自分の意思の強さを試したかったということか。

『おとうさんに言える勇気もまだなくて、ごめんなさい、』




ああ、泣くだろうな。

チャンミン。



『主人には、ユンホから言わせるわ。』

そうだね。
母さん。
そうするべきだよね。

『わたしは、主人の判断に従います。』

そしてそれが、うちの両親の夫婦という生き方だ。

『はい、…おかさあん、』

父は犬の散歩でもしているのだろうか。

『チャンミニ、』

母さんが、俺を呼ぶように、チャンミンを呼ぶ。

『あなた個人の気持ちはよくわかったわ、』

『はい、』

そうだ、これはチャンミン個人の行動で、意思だ。

『今度はふたりの気持ちを聞かせて貰えるのを、待っているわね、』

『…はい、』


涙声の、けれど、力強い返事だった。














先に自分の部屋で、チャンミンを待った。

トントンと、階段を上がってくる音。

開くドア。

現れるあいつの顔。



『おはよう、』

『おはよ、』


おめでとうは、もう随分前に言ったっけ。


『チャンミン、』

『はい、』


おめでとうは言ったから、

今度は、


『ありがとう、』


これだな。

お前の個人的な意思は、勝手に受け取ったから。


『ごめんね、勝手に、』


なんだ、聞いてたこともバレていたのか。

つくづく趣味が悪い俺達だ。








『チャンミン、』

手を伸ばす。








カーテンを閉めたままの、薄暗い部屋。



俺の手に、チャンミンの手が重なる。









『また、恋人から始めよう。』


ふたりの意思はできている。

職場での在り方も知った。

だから、次の段階を考えるのならば、


『本当に大切なひとたちに、認められるために、』


考えるべきだから、


『もう一度恋人から始めよう。』


そういう幸せを、掴むべきなのが俺達だから。




『チャンミン、』


『はい、』


『俺の家族のためにも、』


『はい、』


『もう一度俺の恋人になって欲しい、』


『はい、』





Be mine



この新しい日に、精神的な成熟期へ。



















元旦からアレですみません…|´-`)チラッ
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