自然(金きり)




例え、好きとか愛してるとかはまだ分からなくても。
一緒に居たいって気持ちは迷わない。考えなくても分かる。

「金吾の側にいると落ち着くなぁ」
「僕も」

布団の中で繋いだ手がとても温かい。
金吾と見詰め合って、俺は小さく微笑んだ。暗闇でも互いの顔が分かる距離が俺達の普通。
金吾も笑ってる。

「ねぇ、ぎゅってしても良い?」
「…甘ったれ」

やんわりと受け入れてやると、金吾は笑顔で俺に抱き付く。
甘ったれで可愛い金吾。

金吾に抱かれて眠ろうとすると、隣の布団で寝ていた乱太郎が突然跳ね起きた。

「ちょっと、そこ! ナチュラルにいちゃいちゃしないでよっ」

眼鏡も外したまま喚いた。
一枚の布団で眠る俺達を指差して怒る。

何だどうした乱太郎。

「いちゃいちゃ?」
「何なの? 私への当て付け? どうせ私は、同室なのにきり丸に手を出せないさっ」

乱太郎が早口で言い立てる。

「おい、乱太ろ…」
「金吾! それ以上、きり丸にいかがわしいことしたら兵太夫に言い付けるからねっ」
「はいっっ」

珍しく乱太郎が迫力ある。俺達は抱き合って目を丸くした。

でも。乱太郎は怒りを収めたかと思うと、今度はべそをかき出す。

「とにかく静かにしてよね…」

弱々しく言うと、布団を頭から被って寝直してしまった。

変な乱太郎。

俺が呆気に取られていると、金吾は捲れた布団を掛け直してくれる。

「きり丸」
「…さんきゅー」

そして、きり丸が好きだよ、と軽く言ってのける。
穏やかで優しい金吾。
俺もそんな金吾のことが…好き?
やっぱり分からない。
目を閉じて考えても答えは出なかったけど、俺は笑顔で金吾と一緒に寝た。


今はそれが一番自然。





終わり。
今なら砂が吐けるかもしれない。












-エムブロ-