prof:bkm:
30代/二次元/メンタル/お洒落
物販テーブル越しの再会
06:34 2018/3/13
ライブを縁に知り合った友達グループがいます。前にも書いたけれど、そのうちのリーダー格の人から嫌われて、わたしは仲間はずれになっていました。

バンドは応援したいけれど、ライブハウスへ足を運ぶと、そのリーダーが嫌がらせをしてくるからどうしても悲しくなってしまう。
周りの子達は、個人的には連絡をくれたり遊びに誘ってくるけれど、集団でいるときはそのリーダーの子側についている。

その様子をバンドマンの人達が、物販の席からじーっと見ている。

こういうことを大人になって書くのはすごく惨めなのですが、わたしはいつも恥ずかしくて、情けなくて、たまらなかったんです。
特に自分が慕っている人たちに「弱いところ」を見られるのは、もう逃げ出したいくらい苦しかった。

それでグループと仲良くできないから、ライブに行かなくなりました。

もともと病気繋がりで知り合ったボーカルさんが、わたしのことを気にかけてくれていることは、ライブへ行った友達伝いで知っていました。
「ハウとは連絡とってるの?」
「ハウは元気にしてるのかな?」
ハウちゃんのことまた名前出てたよ、と連絡をもらっていたから。

メンバーチェンジを挟み、リーダー格の子は別のバンドへ流れ、それに伴ってグループもあとを追います。
お客さんたちの客層が変わり、自分を含め、のんびりしたおじさんおばさんのファンが増えました。

先月のことです。
そのバンドが出演した生配信で、たまたまわたしが出した感想メールが取り上げられました。
まずギターさんが「この間もらったメールにこんなことが書いてあってめちゃくちゃ嬉しかった」と内容に触れ、
そのあとボーカルさんが「あ!それで思い出したけど、俺はこんな内容のメールがいちばん印象に残ってる」って。

単純過ぎてきっとみなさんは笑うだろうけれど、わたしはすっかり喜びに頬を染めてしまい、なんだか久しぶりにライブに行ってみようと思ったのですね。

それでひとりで、対バン形式のライブへ乗り込んだんです。
開演には間に合わず、少し遅れて入ったので、扉のほど近い場所からステージを見ました。
まわりにはやっぱり、ハンチングを被ってヒゲを生やした、いかにも弾き語りが好きですといった風情のおじさんたち。

その合間にぽつぽつと、以前通っていた時にお見かけしていたお客さんの背中ものぞきました。

ステージが終わり、バンドごとのグッズ販売の時間が設けられます。

ハンチング帽のおじさんの後ろに並んでいると、物販テーブルの奥に立つボーカルさんが「あっ!?」と目玉をまん丸にしてこちらを指さしました。
「ちょっと!!なんでいるの!?なんでいるの、ねえ!ちょ、ちょっとこっち来なよ!」

その様子がおかしくて、わたしは両手で口を覆いながら「来ちゃった」と笑ったのですが、しかし同時に鼻の奥がつんとしびれてもいたんです。

あっ、大丈夫かも。わたしもう、ライブハウスが怖くないかも。
笑えているかも。楽しいかも。また、楽しくなれたかも……。

CDが並んだ長いテーブルの前へ近寄ると、たちまちボーカルさんがぼーっと虚空を見つめていたギターさんの肩をがっと引き寄せて「ハウははじめましてだよね!こいつが新しいギターくん!俺の相棒!」と言います。

「ギターくん!ハウはさ、この子は前に俺らのライブ見に来てくれてたんだ。な?バイクですっ転んで、血だらけで来たもんな!
俺ずっとハウのブログ読んでてさ、メール送って。お互い立つステージは違うけど、闘病頑張ろうぜってさ、だからこいつのことはホントにずっと見てたんだよ。
ハウ、お前がブログ消しちゃったの俺すげー寂しかったよ。メールしても全然返事来ないしさ。何があったの?」

「それは、いろいろあったんですよ……」
「いろいろって、また××に何かされた?」
「いろいろはいろいろ!」
「まあ、お客さん同士のいざこざは分からないけどさ。でもホント、また会えて嬉しいよ。ああ、どこどこのライブハウスでやってたの、懐かしいな」

お互いうるっとしていると、ギターさんは「ハウは俺のツイッターフォローしてる?」と聞いてきます。
「ツイッターやってないです」
「あ、そうなんだ。まあめんどくさいよなツイッターって。あんなのやんない方がいいよ」
「え、なんかギターさんブラックですね!」
「だってそうじゃない?みんな繋がりすぎだよね、今って」

別れ際、ボーカルさんが「ハウ!元気でね!」と手を振りました。
なんだかその響きは少し切なかったかな。またねじゃなくて、元気でね。

この日は久しぶりに楽しい気持ちでライブハウスを出ることが出来たんです。
もうすっかり暗くなっていたから、高速道路の脇に並ぶオレンジ色の電灯があかあかとしていて、なんだか天国みたいだった。

ライブの後、一回だけボーカルさんとやり取りをしたんです。
またライブを楽しいと思わせてくれてありがとう。って送ったら、
また忘れられないライブだと思わせてくれてありがとう、とかそういうお返事。

闘病仲間…なのかな。
恋愛とか、大人の関係とか、そんなのはまったくないです。

こうして文章にすると、沈んでいた気持ちが少しずつ浮上してきます。
わたしでも誰かの支えになっているかもしれないって、思えてきます。

話題:誰かにありがとう・誰かからありがとう



こちらからもコメントできます



-エムブロ-