先生の夢を見た

授業が始まる直前、教室の前の廊下にあるロッカーで荷物を整理していると、先生はやって来た

授業するんですか、なんてあの頃は使っていなかった敬語を使っていた
するよ、と返事をした先生の声はあの頃のように優しかった

夢なので思い返せばおかしいところもたくさんある
中学校にロッカーなんてなかった
授業するために来てるのに、なんであんな質問をしたんだろう
先生も理科ではなく化学の教科書を持っていた

けれど、先生を見て、心がふわっと浮き立つ気持ちはそのままだった





あの頃の私は、まっすぐで幼くて自分の気持ちに正直な馬鹿だった

先生はいつも優しくて、ちょっとずるくて、やっぱり優しかった

初めて握ってくれた手
友達関係に疲れて慰めてくれた
放課後の教室で頭を撫でてくれた
夏休みに数学の宿題を教えてくれた
運動会のときの応援の声
卒業式の後にくれたことば
誕生日に送ったメール
成人式で再会したときのことば

どれも大切でいとしい思い出です


先生の手は大きくて、いつもあったかくて、爪が楕円形でピンク色で、とてもきれいな手でした
あんなにきれいな手はそうそういないと思います
先生は頭を撫でるのがうまくて、あの手で撫でてもらうのがなにより好きでした





あの頃はたくさんの人がいたここも、今はもうほとんどいないようですね
きっと今はTwitterとか、違うツールが盛んなのでしょう


ここは私にとって拠りどころでした
同じように先生に恋をする子たちがたくさんいて、いつも勇気をもらって、嬉しいことがあったときは書き残して

今思えば、私のことを知っている人が読めば特定されてしまうような内容でした
それくらい怖いことをしていたけれど、あの頃の私は馬鹿だったので書いて整理をして、気持ちの整理もしていたのだと思います





先生を好きな子が、もしこれを読んでいたら伝えたい
あなたが本当にその先生のことを好きなら、先生の迷惑になることはしちゃだめです
迷惑は人によって違うので、何をしたらだめなのかは難しいけれど
あなたが卒業した後も、先生はずっと先生なんです

いつもいい子でいろというわけではありません
私はわがままを言って何度も先生を困らせてしまったので、せめてあなたとその先生にはそんな思いはしてほしくないのです


生徒に手を出すような先生は、先生ではなくひどい大人です
本当にあなたたちが想い合っていても、世間がそれを許しません

けれど、それでも先生と付き合いたいなら、在学中はかわいらしい生徒でいてください
先生によい思い出を持ってもらってください

卒業してから、先生と生徒という立場ではなくただの人間同士としてお付き合いをするなら
周りがなんと言おうと二人の関係は清いものだと思います





あの頃中学生だった私は、今は大学生で就職活動をしています
いつのまにかこんなにも月日が経ってしまいました
卒業して先生に会えなくなったらどうしよう、生きていけない、なんて考えていましたが、高校大学と楽しく過ごしてぴんぴんしています
夢を見るまで、先生のことなんてすっかり忘れていました

思い返すと、なんにもなくてよかったと思います
いろんな意味でよかった
負け惜しみみたいだけど、本当にそう思ってます
けれど夢を見て、久しぶりに先生のことを思い出して、やっぱり大好きだったんだなあと思います

あれは恋だったのか憧れだったのか
思春期の持て余した気持ちを勘違いしてしまったのか
今はもうわかりません

先生の一番になりたかった
ただ、それだけです



話題:先生が好き