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バイバイ

『抱いてくれてありがとう』


けんちゃんは、何も言わずに抱きしめてくれた。

もう少し、このままいたい…
けんちゃんの腕の中でしばらく目を閉じていた。

なんてあたたかで、安らげる場所。




『私たち、
初めは好奇心で付き合ってたよね。』

『まぁ… そうですね。』


『けんちゃんの名前が息子と同じって知った時、ほんとビックリしちゃった(^◇^;)』



取り留めのない思い出話なんかして、

本当はどうでもいいことなのにね。




急にけんちゃんが静かになったから、

彼の顔を見上げたら、
私の方をジッと見つめてた。


『そんなに見られたら、
恥ずかしいじゃない(^^;)』



それでもけんちゃんは視線を外さない。


この辺で、踏ん切りをつけないと…




『けんちゃん、そろそろ私…』



突然強く抱きしめられた。


友達に戻ろうって言ったのは
けんちゃんなのに。




帰り際、
いつもしてたみたいに、

ギュッとハグをして、
kissをした。



『また、ご飯でも行きましょうね。』


『えっ?     …うん!』




日付が変わる前に、
けんちゃんちを後にした。


7年間通い詰めた部屋。





『ご飯でも行きましょう』


あの言葉は、

何日も眠れず、ご飯もあまり食べていなかった私を
安心させるための配慮だって、知ってるよ。





けんちゃんは、
最後まで優しかった。





あの時

ガリガリ掻きむしった手の傷は、

やっとカサブタが取れて、

少し褐色の傷痕になった。



この痕が消える頃には、

心の傷も癒えるだろうか。




もう、
あんな恋は二度としないな…


私にとって、
けんちゃんは最後の『大切なひと』



そう思ってた。


あの時は…



最後に抱かれた夜

そして、

体を重ねた。




けんちゃんの香り、

体温、

感触を

忘れないように体に染みこませたい。

いつでも思い出せるように…



本当に、

何故別れなきゃならないのか分からないくらい、
いつもと何ら変わりない二人だった。






そろそろ終盤に差し掛かった頃、
あろうことか涙が溢れだした。


やだ…
けんちゃんがこれから、って時に。
興ざめしちゃうじゃない。



けんちゃんは動きを止めて、
手で 私の涙を拭った。




『大丈夫ですか?』

『うん、  続けて。』



(あぁ、

もう終わっちゃう )




フィニッシュを迎えた彼は、
いつものように優しくkissをして、


私の胸元に顔を押し付けて、



そして泣いた。




(なんで、
けんちゃんまで泣いてるんだろ?)






私達は、

恋人じゃなくなった。




けんちゃんも

私も


誰のものでもなくなった。




今日から自由だ。



不思議と、

苦しみから解放された気がしたの。




『けんちゃん、

抱いてくれてありがとう。』



ちょっとだけ、 笑顔になれた。
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