<第23話:続・家庭教師は悩み持ち>

あの後、凄まじい殺気を放つリボーンの視線を浴びる中、俺は獄寺君とのひと時を楽しんだ。
暗くなってきて、帰宅していく獄寺君を見送りながらもにやけがとまらない。
あー手を振る姿も可愛いなあ。
あの笑顔見てるとリボーンの殺気なんか気にもならないよ。
愛って偉大だね、偉大だね!



テンション高く部屋に戻ると、部屋の中央にどかりとその存在感を示す家庭教師が座っていた。
帽子を深く被り、俯きぎみのその表情は、どんなものだか俺には見えないけれど。
…多分…いや、絶対にいい顔はしていない。

「ーーツナ」
「な、何?!」
部屋のドアを閉めた直後、いきなり背後から低い声をかけられて、身体がビクリと震える。

ど、怒鳴られる!!
い、いや、殴られるか?!

びくびくしながら体をくるりとそちらへ向けると。
スッ、と静かな動きでリボーンが顔を上げた。

「今、テメェのそのボスらしくない面をどう叩き直してやろうか考えたんだがな…」
「って、面?!態度じゃなくて面なのかよ?!」
何、そのボスの条件は顔みたいないい方?!
どうせ俺はモテない顔だよ!

そんな風に怒鳴る俺を無視して、なおもリボーンは話を続ける。
「で、考えたんだがな。おい、ツナ。お前、今すぐ子供をつくれ」
相手の女はだれでもいいから、とスッパリいい切った家庭教師。
「はあ?!な、何で子供?!」
「だから考えたんだがな、今さら腐り切ったテメェを叩き直すより、いっそ次の十一代目をつくって、最初から俺が教育した方が早いと思うんだが」


……九代目。
貴方が派遣した家庭教師が、任務をとうとう放棄し始めました。


「ふざけんな!何、その俺は用無しみたいな発言?!」
「ぶっちゃけ子供さえ残せば後はお前は好き勝手してくれていい。安心しろ、子供はしっかり優秀なボスに育ててやる。お前の遺伝子なんざ、微塵も感じさせないくらいにな」
どうだ、と自慢げな態度にア然とする。
ここまで『正論だ!』とばかりに堂々とされると、怒る気すら起こらない。
「どうだ。言い返す言葉もないだろう」
「…いや、言い返すというか…」
おかしくね?
その一言が出てこない。


…どうしよう…九代目。
貴方の派遣した家庭教師が、何かちょっとおかしいです。


え?てか、リボーン…?本当に壊れた?
いつものリボーンじゃないよ??
ひょっとして疲労?過労?え?俺のせい??

「ぶっちゃけ、お前、面倒臭ぇ」
「つか、さっきっからぶっちゃけ過ぎだろう!?」
大体、さっきから無茶な事ばかり言いやがって。
「ともかく!子供なんて無理無理!俺をいくつだと思ってるんだよ!まったく…。それに産む方の…獄寺君の身にもなれよ!」
「ちょっと待て。何で獄寺の名前出した?俺は女だと言ったはずだ!奴に産める訳ねぇだろ!この超越的馬鹿野郎!」
あ、まともにツッコミが返ってきたよ。

少しいつもの調子が戻りつつある家庭教師に安心しつつも、内心、またいつ無茶を言われるか…と冷や冷やしている自分がいたのだった。


…だけどな、リボーン。

俺の子を身篭る相手が獄寺君…ってところだけは
譲る気はないからな?