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第20話:噂ほどろくなものはない

<第20話:噂ほどろくなものはない>

まったく…沢田綱吉という人物は本当に無礼千万な人物ですね。
せっかく人が構ってやったというのにあの態度。
本当、狭い男ですね。

「…おや、あれは…」
綱吉君が毒舌はいて去っていった後、そのまま変わらずその場に居続けた僕の視界に、また新たな人物の姿が映った。
「こんにちは、隼人君」
「ーえ?あ、お前は…!」
バック片手に慌てて校舎から駆け出てきた様子の隼人君にニッコリと挨拶を向ける。
「お前…確かこの間クロームと一緒にいた…」
「おや、覚えていて下さったんですか。もうこれは運命ですね」
「た、確か…………髑髏だっけ?」

せっかく運命感じたのに、一瞬で掻き消された気がしましたが?

「骸です!!髑髏はクロームの名称です!酷いです!クロームは覚えていたのに…。てか何ですか?そのクロームの付属品みたいな扱い?!」
「あー…あー、そう、骸だ。わりぃ、興味ない事はあんま覚えねえんだ」
「……え?今さらりと酷い事言いませんでした?」
ああ、でもそんな隼人君も素敵です。
「ところで…急いでいたようですが。貴方も早退ですか?」
「は!そうだ十代目!おい、お前十代目見なかったか?」
「綱吉君ですか?綱吉君なら…散々人にドS発言連発して帰って行きましたけれど…」

そりゃもう、落ち込んでる人間とは思えない程の毒吐きっぷりでした。

遠い目をしながら心の中でそう呟いた僕の横で、あーっと唸りながら頭を押さえた隼人君。
「やっぱりもう帰られちまったか。急いで追い掛けないと…」
「別に帰宅されただけなんですからほっといても大丈夫でしょう?それよりも隼人君、僕とお茶しませんか?これでもかっ!ってくらい僕との親睦を深めましょう」
「何言ってんだ、帰宅途中に十代目に何かあったらどうするんだ!」
「…うん、見事なまでにお茶と親睦に関してはスルーでしたね。そもそも帰宅途中に何があるっていうんですか」
今のドS綱吉君なら例え刺客が来たって大丈夫だと思いますよ。
むしろ、その刺客の心配をしたほうがいいくらいに。

そう言ってあげようかと思いましたが、心配から悶絶している隼人君にはきっと聞こえないんでしょうね。
「…あ、そういえば隼人君。あのネコミミどうしました?」
「ああ、そういえば鞄に入れっぱなしだった」
「チャンス!是非付けて見せてくれませんか?」
「…チャンス??駄目だ、十代目に人前で付けるなって言われているからな」
くっ…!綱吉君め…!
こんな早く手を打ってくるなんて…!
「だからあのネコミミは十代目の前だけで許されてんだ」
「いやいやいや、おかしいでしょう?綱吉君の前だけとか、その時点で何かおかしいと疑いましょうよ?!」
絶対ムッツリだ!
あの沢田綱吉という男は絶対にムッツリですよ!
ガクガクと隼人君の肩を掴んでそう言い聞かせるも、「十代目はいつも笑顔だ!ムスッとなんかしてねえよ」と通じてない様子で話にならない。
だ、大丈夫ですか、この子?!

「何だかよくわかんねえけどもう行くからな」
「あ、ちょっちょっと隼人君?!」
「…あ、そうだ」
行きかけた足をピタリと止めて再びこちらを振り向いた隼人君。
「一つだけ聞いていいか?」
「な、何ですか?」
「骸って壁のぼるのが趣味なのか?」
「はあ?」
壁?趣味??一体何の話ですか?
「そ、そんなわけないでしょう?何なんですか、それは?」
「あれ?前に十代目が雲雀に…」

つーなーよーしーくぅぅんっ?!

あの人は、どこまで人に心的ダメージを与えれば気がすむんですか?!
あれですか?ドSの境地でも極めるつもりですか?
極めるなら勝手に極めて下さいよ!
僕に当たるのはやめて下さい!

自分でも何言っているのかわからなくなった自分に、何でもなかったかのように「じゃあな」と軽く挨拶した隼人君をうらやましく思いつつも、そんな流されやすい隼人君とあんなのがボスになるボンゴレの将来を、柄にもなく心底心配してしまったのだった。

第19話:気になり出したら止まらない

<第19話:気になり出したら止まらない>

突然、自分がおかしな事考えているんじゃないか、
そう思う時ってあると思う。


なんかさ、なんかこう…変なんだよな、最近。
いや、上手く説明できねぇけどなんかこうさ、変な感じ?

いつも通り学校行って、いつも通り授業を受けて(いや、寝てるけどさ…大体は)、いつも通りツナや獄寺とかとしゃべって、いつも通り部活で野球して、いつも通り帰って親父の手伝いしたりして……

なんら変わりない毎日送ってるはずだよな〜俺。

じゃあ、胸にもやもや引っ掛かるこれ…一体何なんだ?



「ーあれ?獄寺?」

休み時間、教室で他の奴らとしゃべっていると、何だか難しい顔しながら心なし落ち込んだようにとぼとぼ教室に入ってくる獄寺が目についた。
話しをしていたクラスメイトにちょっと悪い、と断りを入れてから獄寺の元へ向かう。

「獄寺っ」
「…何だよ、野球馬鹿か」
いつものように嫌そうな顔を向け、小さく舌打ちした獄寺に苦笑する。
「保健室のツナんとこ行って来たんだろ?ツナどうだった?」
「……体調悪いから帰られたよ」
何だか不服そうにしかめ面を見せる獄寺。

きっと送ってく、と言って断られたか何かなんだろう。

「おーい、山本。次移動だぜ」
「あ、ああ。後から行く」
移動授業だからか、教科書片手に教室を出て行く他の奴らに返事をして再び獄寺に視線を戻す。
ほとんど皆が教室から出終わった頃、何かを決心したように獄寺が「よし!」と言った。
「やっぱり心配だから俺も早退する!」
バッと素早い動きで自分の机から鞄を持ち出して直ぐさま教室を後にしようとする。
「ーーって、な、何だよ!テメェは?!」
「へ?」
獄寺に怒鳴られて、ようやくハッとした。
最初、意味がわからなくて睨み上げてくる獄寺に焦ったが、よくよく視線を下げていくと……行かせない、と言わんばかりにがっちり掴んだ獄寺の手が。

あ、あれ?俺、何してんの?

「わ、悪い!」
「っとに、何なんだっ?!」
バッと離した俺に、勢いよく自分の方へ手を戻しながら再び睨んでくる。

あ、でも何か上目使いで可愛い顔だな。


………は?

か、可愛い??


「あれーっ?!」
突然、大声を上げた俺に驚いたようにビクッと獄寺が体を強張らせて目を丸くしている。

驚いた姿もまた可愛……
って、いやいやいや、まてよ?ん?
あれあれあれ?
可愛いって何だ?
男で友達に使うものなのか?
あれー?

「ご、獄寺っ、大変だ!」
「な、何だよ?!」
ガシッと両肩を掴む俺に引き攣ったように顔を歪ませる。
「俺、何かおかしい!」
「知ってるよ!見れば明らかだろ?!てか、残念ながら今のお前見て『普通だね』なんて言う奴いねえよ!」

え?俺、そんな明らかに変なのか?

「い、いや、うん。ともかく変なんだ」
「意味わかんねえよ、それじゃ!」
「いや、だってさ!俺獄寺の事、スゲー可愛いって思ったんだよ!」
「…………は?」
時が止まったように固まる獄寺にお構いなしに言葉を続けていく。
「変じゃね?男友達に普通『可愛い』って思うもんか?なあ?他にもさ、ギュッと抱きしめて見たいとか、髪や頬を撫でてみたいとか!」
「………い、いや…ち、ちょっ…」
「なあ?やっぱり変なのか?おかしい事なのか?俺、病気か何かかな?」
力強く掴みながら獄寺に迫る気迫で問いただす俺に、サッと顔を青くして、次いで染めたように顔を赤くして。
「や、山本」
「おう!」
「そ、それは気のせいだ!」
納得しろ!と言わんばかりに俺に負けないくらいの気迫でそう言い放った獄寺。
「気のせい?」
「そ、そうだ!気のせいだ!」
「そっか!それもそうだな!」
「………は?」
コロッとスッキリしたように笑顔を見せた俺に、何故だか抜けたように呆然としている。

あー何でもなくてよかった。


「……おい、山本。お前絶対一部脳内機械で出来てるだろ?絶対開けたらボルトの一つや二つ、出て来るんじゃね?」
「ん?そうなのかな?見た事ねえからわかんねえや」
「そこは否定しろよ、アホーーッッ!!」
あああーっ、と真っ赤な顔で頭を抱えながらその場にうずくまる獄寺に首を傾げながらも、そんな獄寺もやっぱり可愛いなあ、なんて考えていた日だった。

第18話:目先の事より目前の事実

<第18話:目先の事より目前の事実>

あーあ、もう何だか最悪な結果に終わったよ。

意を決しての告白だったのになぁ…。
見事なまでのスルーだったよ。
いや、スルーじゃないか。
伝わってないんだから。
シャマルめ……何が直球だよ。
何が追加効果だよ。
フォークボールも真っ青なくらい見事な急カーブにされたよ。

あああ〜と頭を抱えてうずくまりたくなるくらいの心境を、ぐっと堪えてまた深くため息をつく。


今の俺はというと、あの後、あの場の状況に堪えられなくて結局体調不良と称して早退することにした。
シャマルが(ムカつく事に)大爆笑する中、獄寺君が自分を送って一緒に早退すると言ったが、今の俺にはその輝かし笑顔すら結構いたたまれなくて。
再び、なんだかんだと断って一人校舎を出た。



………出たまではよかった。

「これはこれは綱吉君、早退ですか?」

またかよ、骸。

校舎の壁から顔半分覗かせてこちらに手を振る物体…もとい、骸に思い切り嫌な顔を向けた。
「……ただでさえ、お前の顔見ると凹むのに、落ち込んでる時見ると尚更凹むよな」
「また第一声がそれですか?!」
いそいそと壁の影から出て来てこちらに近付いてくる骸。
「てか…お前何やってんの」
「クフフ、よく聞いてくれました」
「いや、別に聞かなくてもいいや。それじゃ」
「ち、ちょっと綱吉君!」
めずらしく慌てた様子で俺の前に回り込んできた骸に、もう一度でかいため息をつく。
骸、頼むから俺の行く先に立ちはだかるな。
「聞いたんだから、ちゃんと聞いて下さいよ!…実はですね、あれ以来隼人君の事が忘れられなくて……。それで隼人君の行動パターンを把握すべくそっと見守っていました」
「それは単に『ストーカー』っていうんだよ。中身と違って無駄に紳士オーラに包まれたその顔に油性マジックで書いて覚えとけ。てか『隼人君』だと?うちの子の名前を気安く呼ぶな」
「…君は父親ですか」
まるで死ぬ気モードのように据わった目付きで睨む俺に、やれやれと呆れたように首を振る。

うわ、ストーカー行為してた奴がとれた態度かよ。
こいつに呆れられるとムカつくな。

「とりあえず、俺は今、お前に構う気分じゃないんだよ。悪いけどどいてくれる」
「クフフ…随分つれないですね。さすが、『小さい男』」
「……ああ、うん。ハッキリ言ってやるよ、お前の存在が不快だ」
「な、何ですか、それは?ひど過ぎませんか?」
「…ゴメン、俺にはこれ以上の言葉は言ってやれない」
「当たり前でしょう?!てか、それ以上の言葉を言うつもりだったんですか?!」
いつもの冷静さは何処へいったのやら。
おもしろいくらい動揺している骸。

あ、俺が原因か。

「…ふぅ、ちょっとストレス発散したかな。骸も少しは役に立つね」
「……君は少し言葉と態度を自重されたらどうですか?」
「そういうお前は存在自重しろよ」
今のがトドメになったのか、黒い影背負って校舎に手をついてうなだれる骸。

そんなとこいると雲雀さんに見つかるぞ?

かくいう俺も先程からの背負いっぱなしのこの暗い気分をどうにかしなければならないのだけれど。
「…とにかく、今俺は落ち込んでるの。今のナイーブな俺にはお前のような未知の存在は刺激がつよすぎて、俺の繊細な心に悪影響なんだよ」
「……散々、人にあれだけの発言をしておいて、どこが繊細ですか」
うなだれたまま、ぶつぶつ何か言っていたが、俺ももう構う事なくスルーだ。
落ち込んだまま骸をほおって再び家路を歩く俺には、ライバル云々以前にもっと大きな課題があった事を考えさせられた一日となるのであった。



……これからどうしよう。

第17話:直球こそが1番の変化球

<第17話:直球こそが1番の変化球>

…結局、あのまま気を失ってしまって、目が覚めた時にはすでに夜になっていた。
獄寺君も、俺が気絶してる間に帰っちゃったみたいだし…
あーあ、せっかくもうちょっとで獄寺君の十年後の姿が見れると思ったのに…

うなだれる俺に、リボーンが「自業自得だ」と吐き捨てるように言っていたのだった。



次の日、また獄寺君が朝迎えに来てくれて、昨日の事を心配してくれたけど、よこしまな考えがあったせいか、うまく返事が返せなかった。

「あーあ…」
学校に着いてもため息ばかり漏れる俺に心配そうに獄寺君が話し掛けてくる。
「…十代目?一体どうしたんですか?体調悪いんじゃ…」
「いや…そういう訳じゃ…」
単に、十年後が見られなかったという理由もあるけれど、何より昨日せっかく二人切りで宿題をしながらいちゃいちゃしようと思った俺の計画を見事にリボーン達に邪魔されて、この先こうして邪魔ばかりされてきっと獄寺君との仲はあまり進展しないままでいくんじゃないか…という早くも夢が砕けそうな展開に落ち込んでるだけなのだ。

「…やっぱり保健室行ってくる」
「それならお供します!」
「え!……いやいや、やっぱダメだ!授業始まるし、一人で平気だよ」
「しかし…」
危ない、危ない。
『一緒に』なんて素敵な言葉に素直に頷くとこだったよ。
さすがに獄寺君にまで授業サボらせるわけにはいかないよな。

なかなか食い下がらない獄寺君をなんとか説得して一人保健室へ向かう。

獄寺君…ちょっと不満そうな顔してたなぁ…
そんな俺を心配する顔も可愛いけれどね。

それにしてもリボーンめ。

リボーンに悪態をつきながら保健室の扉に手をかける。
「……はぁぁーっ」
「何だぁ?テメーボンゴレ坊主、入ってくるなりため息とはいい度胸だな」
ピクッとこめかみを動かしたシャマルが椅子ごとこちらを向いて睨んでくる。

仕方ないだろ。
シャマルの顔見たら、何故だか尚更凹んだんだから。

「男は見ねえって言ったろ?帰れ、帰れ」
「…シャマル、昨日の一件忘れた訳じゃないからな。なんなら今から黄泉への片道切符渡しても構わないんだけど?」
一生、三途の川見学してるか?と据わった目付きで棒読みすれば、何も言わずにシャマルはベッドを貸してくれた。


「あーあ…」
ベッドに横になりながら、再びため息をつく。

どうしたら誰かに邪魔されず、獄寺君と仲良くなっていけるのか。
ただでさえ、男同士で恋仲…なんて夢に近いのに、仲良くなることまで阻害されたんじゃ、さすがに落ち込む。
「おーおー落ち込んでるな。どうせ隼人絡みだろ?」
「…別に」
「リボーンに邪魔でもされたかー?」
「う…」
図星を突かれて言葉に詰まる。
ゆっくり起き上がって、引き攣りながらシャマルの方へむけば、案の定、シャマルは楽しそうにニヤけ面を隠そうともしない。
まるで、からかいがいのある獲物がいる、そんな顔をしている。
「相談乗ってやろうか、ボンゴレ坊主?」
「え?」
変わらずニヤけてはいるものの、出された意外な言葉に思わず反応してしまう。
…と、いうか……
「シャマルもてっきり邪魔してくるんじゃないかと思ってたよ。シャマル過保護そうだし。シャマルは俺と獄寺君がそうなってもいいと思ってるの?」
「んなわけあるか。隼人に悪い虫が付くなんて冗談じゃねえ。ただそれ以上に、お前が悪戦苦闘しているところを見るのが面白そうだと思ったからだ」
「……」
相変わらず素直に最低発言かましたよ、このオッサン。

まあ、この際なんでもいいや。
こんな奴でも、獄寺君とは昔馴染みみたいだし、少しは役に立つ情報聞き出せるかもしれない。
藁をも掴むってこういう事を言うのだろう。

じっと、物言いたげな目でシャマルを見つめていると、シャマルはニッと口元を緩め、そして…
「いっそ告っちまったらどうだ?」
「ぶっ?!な、何言ってんだよ?そんな、いきなり!」
「甘いな、ボンゴレ坊主。隼人は何事に対しても直球でいかなきゃ伝わらねえ人間だ。だから、言ってみたら案外伝わるかもしれねえぜ?」
何事も直球だ、直球!と簡単に言ってくれる。
「…無理だよ、ただでさえ男同士なのに」
「イタリア育ちのあいつがそんな事は気にしねえよ。マフィア界にはざらにいるしな」
そういえばリボーンがそんな事言っていたなぁ…と思い出す。
「とりあえず直球で当たれ!そして、できれば見事に砕け散ってくれ」
「…シャマル、今最後、本音ともとれる余計な一言言ったよな?このやろう」
完全に遊ばれてるとも言えるこのエロ医者の態度に、ちょっとした怒りを覚える。

ー…と、そこへいきなり保健室の扉が開かれた。
「十代目!大丈夫ですか?」
「ご、獄寺君」
扉の音と重なるように聞こえて来た声の主は、授業が終わるなり教室を飛び出してきたのか、息を切らして俺に詰め寄る。
「お体の具合はどうですか?って、テメー、シャマル!十代目は大丈夫なんだろうな?」
俺の心配をしたかと思えば、シャマルに噛み付いてとせわしない獄寺君の登場に焦る俺と、面白そうに見遣るシャマル。

先程まで、あんな話をしていたから尚更…

「ほれ、ボンゴレ坊主。言うなら今じゃねえの?」
「なあ?!」
クイッと顎で獄寺君を指し示すシャマルに、余計な事を言われた俺は固まって動けなくなる。
そんなシャマルの言葉に、頭に疑問詞を浮かべて首を傾げる獄寺君。
「十代目?何か俺に言う事が?」
「あ、や…その」
追い込まれ、吃る俺を見兼ねたのか、シャマルがさらに余計な事を言う。
「隼人、そいつは恋愛相談があるそうだ」

シャーマールゥゥ〜ッ!?

冷や汗もので獄寺君と目を合わせた俺に、「恋愛相談?」とキョトンとした顔で見つめてくる獄寺君。
もうここまできたら、言った方が楽になるのかもしれない。
ゴクリと唾を飲み込み、震えそうな拳を握りしめる。

ーそして

「お、俺っ、君の事…す、好きなんだ!」

……い、言っちゃった!
なんかシャマルに煽られる形だったけど。
しかも、ヤケクソっぽかったけどっ。

硬直したぎこちない顔のまま、視線だけ獄寺君に向ける。
すると、ポカンと口を開けたまま凝視していた獄寺君の頬が、さっと赤くなった。

ーでも、すぐに何かを考え込むように口に手をあて、「あれ?確か笹川が…」とぶつぶつ言い始めた。

……何だろう。
凄く嫌な予感がする。

不穏な空気を悟った俺を余所に、いきなり獄寺君が「ああ!」と何かを納得したように手を叩いた。
そして、俺に満悦の笑顔を浮かべ。
「恋愛相談って事は、練習ですね!笹川に告白する時の為の。俺でよければいくらでも練習相手になりますよ」
いくらでもどうぞ!といった感じで向けられた輝かしいまでの笑顔。
この時、初めて獄寺君の笑顔が突き刺さるように痛かった気がした。

ぐるりと、そのまま顔をシャマルへ向けると、
「悪い、ボンゴレ坊主。直球で言わなきゃ伝わらない相手ではあるけれど、その直球を自分の直前で変化球に変える追加効果を持つ人間だった」
「いや、そんな追加効果いらないから」
ドンマイ!と言いながら親指を立てるシャマルにこれ以上ないくらいの引き攣り笑いが出たのだった。


…こうして、俺のヤケクソ的な告白は
獄寺君の素晴らしい勘違いによる自己解決により、完全スルーされたのであった。

第16話:泣き虫子牛

<第16話:泣き虫子牛>

とりあえず、ディーノさんやリボーンを無視して急ぎ獄寺君を自室へ連れていく。
これ以上、このくせ者師弟コンビに付き合ってたら俺が疲れる。
と、いうより(特に師の方に)歯が立たないしな……。
それに、できれば獄寺君を狙ってるっぽいこの二人に、あまり近付けたくないしね。


「………って、せっかく思ったのに……」
はあぁぁぁーっと、深く長いため息をつきながら、ノートや教科書ではなく、何故か俺の部屋に普通についてきたリボーンとディーノさんの師弟コンビを睨みつける。
「俺達宿題やるって言ったろ?集中できないんだよ、獄寺君との二人切りの時間が!」
「…お前、混乱しぎみになると本音と建前混ざるよな…」
集中するべきは宿題の方だと、リボーンもギロリと睨み返してくる。

大体、いつもムカつくまでに俺に宿題やらせようとするくせに、この家庭教師はこういう時に限って邪魔をするのだから、愚痴がでるのくらいは勘弁してほしいものだ。

「……これじゃあ親密深めるどころか、敵を作っていってるだけだよ…。どうにかして、他の人達よりも差をつけないと……。この際……いや、でも…」
「……なあ、リボーン。ツナ、何かぶつぶつ言ってるけどほっといていいのか?」
「ほっとけ。最近じゃいつもだ。電波みたいなもんだ」
誰が電波だ。
聞こえてんだよ、リボーン。

てか、獄寺君は何故この空間に疑問を抱かない?
あ、ディーノさんはともかく相手がリボーンだからか。
つーか、冗談抜きで獄寺君観察も宿題も両方集中できないよ!
せめてもう少し遠慮がちに……
「ガハハハハー!ツナ〜、ランボさんと遊ぶんだもんねー!」
「……はぁぁぁぁぁ…」

帰ってきてから、本日二度目のでっかいため息。
それは言わずもがな、原因はいきなりドアを開けて名乗りを上げたランボの存在だ。

「ランボ!入ってきちゃ駄目だって言ったろ…?」
そんな俺の訴えも、いつも通りお構いなく部屋中を駆け回るランボ。

あああ〜もう、今日は本当に何なんだよ?!
この師弟に邪魔されるは、雲雀さんに絡まれるは、骸に待ち伏せされるは、京子ちゃんに「萌える」って言われるわ……!(ある意味、最後が一番衝撃的だったけど)

「……何でコイツがいるんすか…?」
コイツ、ボヴィーノのランボっすよね…?と、嫌そうな顔を向けてジッとランボを見つめる獄寺君。
あ、ランボの事も知ってるのか。
まあ、ランボもあれで一応はマフィア…だしね。
「そいつはツナの雷の守護者だからな」
「え?コイツが?!」
リボーンの言葉に、ますます眉間にシワを深めてしまう。

「…何でコイツが…」
「うるさいんだもんねーっ!」
「うるせぇのはテメエだっ!!こんのアホ牛っ!」
「ち、ちょっ獄寺君?!落ち着いて!」
ランボを掴んでブンブン振り回す獄寺君を、何とか必死に止めようとする。

「ははっ、ツナもスモーキンも三人して兄弟みてえだなぁ」
「…ディーノさん。申し訳ないですが、ちっとも嬉しくないです」
俺は獄寺君と親密になりたいとは思っても、兄弟みたいになりたい訳ではないのだから。
「…変態」
「だから人の心的領域に踏み込むな!リボーン!」
「そんな事しなくともお前の頭の中身なんて筒抜けだ。ただ漏れだ」
「漏れてんの?!」
どんだけ単純だと言いたいんだよ、コイツ?!
「それとも、子供をあやす夫婦みてえとでも言ってもらいたかったのか?」
「え!?」

ふっ……夫婦?!

「…そういう見方があったんだ!よし、それもらったぁ!!」
「………お前、最近マジで可哀相だぞ?頭が」
哀愁漂いそうなほどの表情で俺を見つめてくるリボーン。

だって夫婦…夫婦…夫婦………
すげえいい響き……。


そんな中、獄寺君に殴られたのか、部屋の中に突然ランボの泣き声が響き出した。

ああ、また十年バズーカー騒ぎになるよ。
………ってか、十年バズーカーって十年後と入れ代わるんだったよな……。

………………。

「ーーって、じゅ十代目?!な、何でいきなり後から羽交い締めされてるんですか、俺っ?!」
「何でもないよ!獄寺君!」
「えええ?!てか何でバズーカーの発射口に俺を近付けようとしてんすか?!」
「気のせいだよ!別に十年後の獄寺君が見たいとかそういうんじゃないから!チャンスだとか思ってないからーっっ!!」
もみ合う俺の努力も虚しく、発砲される前にリボーンによってランボと俺が蹴り上げられてノックアウトするのは数秒後の話だった……。