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第21話:人の機嫌は時次第

<第21話:人の機嫌は時次第>

「……ただいま」
いつもより1オクターブ程低音で出て来た俺の声。
落ち込み様があからさまなそれに自分でもため息が出そうになる。

「あーあ…」
「うぜえ」
ゲシッと音と共に顔に減り込んだ何か。
確認せずともそれがリボーンの足だって事くらい大体想像がつく。
「ててっ…な、何すんだよ?!」
「落ち込みオーラが不快だった」
さも当然の如く仁王立ちして鼻を鳴らす。
「あのなぁ…人が落ち込んでる時くらい優しい言葉とかかけられないのかよ?!」
「あーはいはい。『あら、綱吉君。落ち込んでるの?可哀相ね。いっそそのまま消し炭になってしまえばいいのに』」
「……」
何でコイツは腹の立つ事をピンポイントで言ってくるんだ?
いや、わかっててそれを求めた俺が悪いけどさ。

ハンッと再び鼻を鳴らして階段をピョンと軽快にのぼっていくリボーンを嫌そうに見つめながら玄関に座り込む。

あーあ、本当に今日はろくでもない日だよ。
学校でも家でもこれかよ。

「うわあああーん」
玄関先でうなだれていると、玄関のドアごしに泣き声が聞こえてきた。
あー…またランボか。
落ち込んでる時にこの泣き声はきくな…。
シャマルといい、骸といい、リボーンといい…マジで勘弁してくれよ。

そんな事を考えていた矢先、外から大きな暴発音が聞こえた。
…うわ、これは確か十年バズーカの発砲音。
ランボの奴…また十年後と入れ代わったな。

やれやれ…と思っていると、再び外から声が聞こえてきた。
「びぇええーっ」
「…え?」
あ、あれ?ランボの泣き声?
な、何で?ランボに当たったんじゃないのか?
じゃあ誰だ?
またイーピンか?それともフゥ太?
……フゥ太ならちょっと興味あるかもしれない。
だってあれは将来美少年になる顔だよ?
いや、別にフゥ太に手を出そうとかそういう訳じゃないからね?
そこまで腐ってないよ、俺。
ただね、美少年好きとしては見といてもバチは当たらないと思う訳なんだよ。
そこんとこ誤解しないでね?!

急いでドアに手をかけて外へと飛び出して行く。
たった5分、こんなチャンスを逃してたまるか!

…しかし、飛び出た先には予想に反してイーピンもフゥ太の姿も見受けられなかった。
そこには、ぐずぐずと涙目で鼻を啜るランボを抱っこしながらあやす見知らぬ男の人がいた。
こちらに背を向けてランボをあやすその人は、顔はこちらからは見えないが、おそらくディーノさんと同じくらいだろう。
スラリと細身の身体にスーツがとても栄えて見える。
あれ…でもこの銀髪…どこかで…?

するとこちらに気が付いたのか、その人がちらっとこちらに向いた。
「あ、」と小さくこちらに向いたその人は、何か言いたそうにニッコリと微笑んだ。

「す……ストライクっ!!」
「へ?」
思わず口から出てしまった俺の本音に、不思議そうに首を傾げる。

いや、だってすっごい美形だよこの人!
俺の好みどストライクだよ!
うわ、俺年上結構好きかもとか思ってはいたけど……世の中、理想ピッタリの人っているもんなんだ!

にへらとにやける俺にまた首を傾げてから、ニコッと笑いかけてくれる。
ああ…笑顔がまた輝かしい。
綺麗でいて、どこか可愛らしい…。
「十代目」
ああ、ちょっと低めの掠れ声も……って…?
ん?十代目?
「あれ…?」
「どうかしました?十代目?」
十代目?えーっと…十代目と呼ぶ人は一人しかいなくて…
それでさっき十年バズーカが発砲されて…?
「ご、獄寺君?」
「はい」
ようやく気が付いて下さいましたか、と嬉しそうに近付いてくる。

…あー香水のいい香りが〜……って、そうじゃない!
てか何で獄寺君がここに?
…いや、獄寺君なら右腕として護衛とか心配とかで自分も早退してきそうだ。
で、玄関先でランボと鉢合わせて喧嘩になって…ってところだろう。
獄寺君って案外単純なとこあるからわかりやすいなぁ…。
ああ、それにしても、獄寺君…十年後はえらく美人さんになるんだなぁ…。
今も可愛いけど…あーこんな美人さんが毎日傍らにいたら日々エンジョイだろうなぁ。
え?十年後の俺、毎日エンジョイしてるのか?してるのか?どうなんだ?

ぼーっと悦に入り始めた俺の前で「ほら、アホ牛いい加減泣き止めよ」とぽんぽんランボの背中を叩く十年後の獄寺君。
くそぅランボ、抱っことか…うらやましいんだよ。
いや、立場的に俺が抱きしめてあげる方があってるのか。

再びこちらに笑顔を向けてきた十年後の獄寺君に、まさか「十年後の俺に毎日抱きしめられていますか?」とか変態臭い質問は出来ずに苦笑していると、ランボをゆっくり降ろして、そっと俺の右手を包み込むように握ってきた。
「十代目…貴方から見ればガキの俺は少々頼りないかもしれません」
「ですが貴方をお慕いし、守りたいと思う気持ちに偽りはありませんから…」
だからずっとお側にいさせてくださいね。
そう柔らかく微笑んだ顔。

ぶあっと身体中の熱が上がる感覚と共に、目の前に白い煙が広がった。

「……あ、あれ?も、戻った?」
煙が少しずつ晴れていく中、今度姿を現したのは現在の獄寺君で。
「あ、十代目!」
俺を見るなり、ニカッと笑顔を見せた獄寺君に、俺はがっちり両肩を掴む。
びっくりしたままこちらを見ている獄寺君に、ゆっくり顔を上げて視線を合わせて。
「…獄寺君、君の永久就職先は俺の隣だからね!って胸張って言えるくらいいい男になってみせるからね!!」
「へ?あ、はい!」
隣って事は右腕って事ですよね?と嬉しがる様子に、今はまだそれでもいいやと思う。

ほら、だってまずは確保が先だろ?

落ち込んだ機嫌はどこへやら、ニヤリと隠れて笑う俺の姿がそこにはあった。
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