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第20話:噂ほどろくなものはない

<第20話:噂ほどろくなものはない>

まったく…沢田綱吉という人物は本当に無礼千万な人物ですね。
せっかく人が構ってやったというのにあの態度。
本当、狭い男ですね。

「…おや、あれは…」
綱吉君が毒舌はいて去っていった後、そのまま変わらずその場に居続けた僕の視界に、また新たな人物の姿が映った。
「こんにちは、隼人君」
「ーえ?あ、お前は…!」
バック片手に慌てて校舎から駆け出てきた様子の隼人君にニッコリと挨拶を向ける。
「お前…確かこの間クロームと一緒にいた…」
「おや、覚えていて下さったんですか。もうこれは運命ですね」
「た、確か…………髑髏だっけ?」

せっかく運命感じたのに、一瞬で掻き消された気がしましたが?

「骸です!!髑髏はクロームの名称です!酷いです!クロームは覚えていたのに…。てか何ですか?そのクロームの付属品みたいな扱い?!」
「あー…あー、そう、骸だ。わりぃ、興味ない事はあんま覚えねえんだ」
「……え?今さらりと酷い事言いませんでした?」
ああ、でもそんな隼人君も素敵です。
「ところで…急いでいたようですが。貴方も早退ですか?」
「は!そうだ十代目!おい、お前十代目見なかったか?」
「綱吉君ですか?綱吉君なら…散々人にドS発言連発して帰って行きましたけれど…」

そりゃもう、落ち込んでる人間とは思えない程の毒吐きっぷりでした。

遠い目をしながら心の中でそう呟いた僕の横で、あーっと唸りながら頭を押さえた隼人君。
「やっぱりもう帰られちまったか。急いで追い掛けないと…」
「別に帰宅されただけなんですからほっといても大丈夫でしょう?それよりも隼人君、僕とお茶しませんか?これでもかっ!ってくらい僕との親睦を深めましょう」
「何言ってんだ、帰宅途中に十代目に何かあったらどうするんだ!」
「…うん、見事なまでにお茶と親睦に関してはスルーでしたね。そもそも帰宅途中に何があるっていうんですか」
今のドS綱吉君なら例え刺客が来たって大丈夫だと思いますよ。
むしろ、その刺客の心配をしたほうがいいくらいに。

そう言ってあげようかと思いましたが、心配から悶絶している隼人君にはきっと聞こえないんでしょうね。
「…あ、そういえば隼人君。あのネコミミどうしました?」
「ああ、そういえば鞄に入れっぱなしだった」
「チャンス!是非付けて見せてくれませんか?」
「…チャンス??駄目だ、十代目に人前で付けるなって言われているからな」
くっ…!綱吉君め…!
こんな早く手を打ってくるなんて…!
「だからあのネコミミは十代目の前だけで許されてんだ」
「いやいやいや、おかしいでしょう?綱吉君の前だけとか、その時点で何かおかしいと疑いましょうよ?!」
絶対ムッツリだ!
あの沢田綱吉という男は絶対にムッツリですよ!
ガクガクと隼人君の肩を掴んでそう言い聞かせるも、「十代目はいつも笑顔だ!ムスッとなんかしてねえよ」と通じてない様子で話にならない。
だ、大丈夫ですか、この子?!

「何だかよくわかんねえけどもう行くからな」
「あ、ちょっちょっと隼人君?!」
「…あ、そうだ」
行きかけた足をピタリと止めて再びこちらを振り向いた隼人君。
「一つだけ聞いていいか?」
「な、何ですか?」
「骸って壁のぼるのが趣味なのか?」
「はあ?」
壁?趣味??一体何の話ですか?
「そ、そんなわけないでしょう?何なんですか、それは?」
「あれ?前に十代目が雲雀に…」

つーなーよーしーくぅぅんっ?!

あの人は、どこまで人に心的ダメージを与えれば気がすむんですか?!
あれですか?ドSの境地でも極めるつもりですか?
極めるなら勝手に極めて下さいよ!
僕に当たるのはやめて下さい!

自分でも何言っているのかわからなくなった自分に、何でもなかったかのように「じゃあな」と軽く挨拶した隼人君をうらやましく思いつつも、そんな流されやすい隼人君とあんなのがボスになるボンゴレの将来を、柄にもなく心底心配してしまったのだった。

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