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第19話:気になり出したら止まらない

<第19話:気になり出したら止まらない>

突然、自分がおかしな事考えているんじゃないか、
そう思う時ってあると思う。


なんかさ、なんかこう…変なんだよな、最近。
いや、上手く説明できねぇけどなんかこうさ、変な感じ?

いつも通り学校行って、いつも通り授業を受けて(いや、寝てるけどさ…大体は)、いつも通りツナや獄寺とかとしゃべって、いつも通り部活で野球して、いつも通り帰って親父の手伝いしたりして……

なんら変わりない毎日送ってるはずだよな〜俺。

じゃあ、胸にもやもや引っ掛かるこれ…一体何なんだ?



「ーあれ?獄寺?」

休み時間、教室で他の奴らとしゃべっていると、何だか難しい顔しながら心なし落ち込んだようにとぼとぼ教室に入ってくる獄寺が目についた。
話しをしていたクラスメイトにちょっと悪い、と断りを入れてから獄寺の元へ向かう。

「獄寺っ」
「…何だよ、野球馬鹿か」
いつものように嫌そうな顔を向け、小さく舌打ちした獄寺に苦笑する。
「保健室のツナんとこ行って来たんだろ?ツナどうだった?」
「……体調悪いから帰られたよ」
何だか不服そうにしかめ面を見せる獄寺。

きっと送ってく、と言って断られたか何かなんだろう。

「おーい、山本。次移動だぜ」
「あ、ああ。後から行く」
移動授業だからか、教科書片手に教室を出て行く他の奴らに返事をして再び獄寺に視線を戻す。
ほとんど皆が教室から出終わった頃、何かを決心したように獄寺が「よし!」と言った。
「やっぱり心配だから俺も早退する!」
バッと素早い動きで自分の机から鞄を持ち出して直ぐさま教室を後にしようとする。
「ーーって、な、何だよ!テメェは?!」
「へ?」
獄寺に怒鳴られて、ようやくハッとした。
最初、意味がわからなくて睨み上げてくる獄寺に焦ったが、よくよく視線を下げていくと……行かせない、と言わんばかりにがっちり掴んだ獄寺の手が。

あ、あれ?俺、何してんの?

「わ、悪い!」
「っとに、何なんだっ?!」
バッと離した俺に、勢いよく自分の方へ手を戻しながら再び睨んでくる。

あ、でも何か上目使いで可愛い顔だな。


………は?

か、可愛い??


「あれーっ?!」
突然、大声を上げた俺に驚いたようにビクッと獄寺が体を強張らせて目を丸くしている。

驚いた姿もまた可愛……
って、いやいやいや、まてよ?ん?
あれあれあれ?
可愛いって何だ?
男で友達に使うものなのか?
あれー?

「ご、獄寺っ、大変だ!」
「な、何だよ?!」
ガシッと両肩を掴む俺に引き攣ったように顔を歪ませる。
「俺、何かおかしい!」
「知ってるよ!見れば明らかだろ?!てか、残念ながら今のお前見て『普通だね』なんて言う奴いねえよ!」

え?俺、そんな明らかに変なのか?

「い、いや、うん。ともかく変なんだ」
「意味わかんねえよ、それじゃ!」
「いや、だってさ!俺獄寺の事、スゲー可愛いって思ったんだよ!」
「…………は?」
時が止まったように固まる獄寺にお構いなしに言葉を続けていく。
「変じゃね?男友達に普通『可愛い』って思うもんか?なあ?他にもさ、ギュッと抱きしめて見たいとか、髪や頬を撫でてみたいとか!」
「………い、いや…ち、ちょっ…」
「なあ?やっぱり変なのか?おかしい事なのか?俺、病気か何かかな?」
力強く掴みながら獄寺に迫る気迫で問いただす俺に、サッと顔を青くして、次いで染めたように顔を赤くして。
「や、山本」
「おう!」
「そ、それは気のせいだ!」
納得しろ!と言わんばかりに俺に負けないくらいの気迫でそう言い放った獄寺。
「気のせい?」
「そ、そうだ!気のせいだ!」
「そっか!それもそうだな!」
「………は?」
コロッとスッキリしたように笑顔を見せた俺に、何故だか抜けたように呆然としている。

あー何でもなくてよかった。


「……おい、山本。お前絶対一部脳内機械で出来てるだろ?絶対開けたらボルトの一つや二つ、出て来るんじゃね?」
「ん?そうなのかな?見た事ねえからわかんねえや」
「そこは否定しろよ、アホーーッッ!!」
あああーっ、と真っ赤な顔で頭を抱えながらその場にうずくまる獄寺に首を傾げながらも、そんな獄寺もやっぱり可愛いなあ、なんて考えていた日だった。

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