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第18話:目先の事より目前の事実

<第18話:目先の事より目前の事実>

あーあ、もう何だか最悪な結果に終わったよ。

意を決しての告白だったのになぁ…。
見事なまでのスルーだったよ。
いや、スルーじゃないか。
伝わってないんだから。
シャマルめ……何が直球だよ。
何が追加効果だよ。
フォークボールも真っ青なくらい見事な急カーブにされたよ。

あああ〜と頭を抱えてうずくまりたくなるくらいの心境を、ぐっと堪えてまた深くため息をつく。


今の俺はというと、あの後、あの場の状況に堪えられなくて結局体調不良と称して早退することにした。
シャマルが(ムカつく事に)大爆笑する中、獄寺君が自分を送って一緒に早退すると言ったが、今の俺にはその輝かし笑顔すら結構いたたまれなくて。
再び、なんだかんだと断って一人校舎を出た。



………出たまではよかった。

「これはこれは綱吉君、早退ですか?」

またかよ、骸。

校舎の壁から顔半分覗かせてこちらに手を振る物体…もとい、骸に思い切り嫌な顔を向けた。
「……ただでさえ、お前の顔見ると凹むのに、落ち込んでる時見ると尚更凹むよな」
「また第一声がそれですか?!」
いそいそと壁の影から出て来てこちらに近付いてくる骸。
「てか…お前何やってんの」
「クフフ、よく聞いてくれました」
「いや、別に聞かなくてもいいや。それじゃ」
「ち、ちょっと綱吉君!」
めずらしく慌てた様子で俺の前に回り込んできた骸に、もう一度でかいため息をつく。
骸、頼むから俺の行く先に立ちはだかるな。
「聞いたんだから、ちゃんと聞いて下さいよ!…実はですね、あれ以来隼人君の事が忘れられなくて……。それで隼人君の行動パターンを把握すべくそっと見守っていました」
「それは単に『ストーカー』っていうんだよ。中身と違って無駄に紳士オーラに包まれたその顔に油性マジックで書いて覚えとけ。てか『隼人君』だと?うちの子の名前を気安く呼ぶな」
「…君は父親ですか」
まるで死ぬ気モードのように据わった目付きで睨む俺に、やれやれと呆れたように首を振る。

うわ、ストーカー行為してた奴がとれた態度かよ。
こいつに呆れられるとムカつくな。

「とりあえず、俺は今、お前に構う気分じゃないんだよ。悪いけどどいてくれる」
「クフフ…随分つれないですね。さすが、『小さい男』」
「……ああ、うん。ハッキリ言ってやるよ、お前の存在が不快だ」
「な、何ですか、それは?ひど過ぎませんか?」
「…ゴメン、俺にはこれ以上の言葉は言ってやれない」
「当たり前でしょう?!てか、それ以上の言葉を言うつもりだったんですか?!」
いつもの冷静さは何処へいったのやら。
おもしろいくらい動揺している骸。

あ、俺が原因か。

「…ふぅ、ちょっとストレス発散したかな。骸も少しは役に立つね」
「……君は少し言葉と態度を自重されたらどうですか?」
「そういうお前は存在自重しろよ」
今のがトドメになったのか、黒い影背負って校舎に手をついてうなだれる骸。

そんなとこいると雲雀さんに見つかるぞ?

かくいう俺も先程からの背負いっぱなしのこの暗い気分をどうにかしなければならないのだけれど。
「…とにかく、今俺は落ち込んでるの。今のナイーブな俺にはお前のような未知の存在は刺激がつよすぎて、俺の繊細な心に悪影響なんだよ」
「……散々、人にあれだけの発言をしておいて、どこが繊細ですか」
うなだれたまま、ぶつぶつ何か言っていたが、俺ももう構う事なくスルーだ。
落ち込んだまま骸をほおって再び家路を歩く俺には、ライバル云々以前にもっと大きな課題があった事を考えさせられた一日となるのであった。



……これからどうしよう。

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