スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

第6話:服装検査はお早めに

<第6話:服装検査はお早めに>

心地よい夢の中……
この時ばかりは最高の至福を感じる…。

『……め』

あ……誰か呼んでる…。

『……い…め』

…誰……?母さん?リボーン?
誰でもいいから、もう少し寝かせてよー……。

『じゅ…め』

『十代目!』

ーーっ?!


「ーー獄寺君っ?!」
「お、ようやく起きましたか、『十代目』?」
一気に覚醒した頭で真横の声の主を見ると、そこには獄寺君がー……
………って、そんなわけない。
そこには、いつも通りにリボーンがニヤけながら立っていた。

「……おい、今の十代目っていう台詞はお前か?リボーン。声マネのつもりか?似てないんだよ、コノヤロウ」
「酷いです十代目」
「朝から気持ち悪い言い方すんな。微塵も似てないんだよ」
「その微塵も似てない声を獄寺だと思って跳び起きた奴はどこのどいつだ?変態」
ハンッと鼻で笑うリボーンに、ぐっと詰まる。

ああ、そうだよ!獄寺君が朝から俺の枕元に…なんてウハウハな事考えたよ!
悪いか?畜生!!

朝からガクリと下がったテンションにため息をつきつつも、しぶしぶ起きて身支度をする。

まあ、リボーンに男好きとバレても変な風に見られなかったことはよかったけど、獄寺君の事でこれからからかわれるようになるんだろうな…とバレたことが、良いような悪いような…なんか複雑だ。
いや、しかもあいつ獄寺君狙ってるっぽい発言したよな?!
くっそ〜リボーンが相手だと手強そうだ。

だが、ダメツナの俺にそうそう簡単に案が出るわけもなく。
気落ちしながら玄関を開けるとー…

「おはようございます!十代目!」
「……」

あれ?幻覚?またリボーンの仕業か?

「十代目?」
「ほ、本物??」
「はい?」
ああ、小首傾げてるよ、可愛いなあ。
てかやっぱり本物か?確認すると見せ掛けて、触っても大丈夫かな…?
いや、それより迎えに?うおお、それってつまり一緒に仲睦まじく登校するってことですか?!やった!やったよ、リボーン!!

「……朝、間違えたくせに」

ええい、後ろでボソッと横槍入れるな、リボーン!
今が幸せだからなんでもいいんだよ!

これ以上リボーンに何か言われるのも釈だし、何よりリボーンと獄寺君を何となく顔合わせさせたくなかったので、そのまま獄寺君を連れて急いで家を出た。

ああ、でもこれから毎日迎えに来てくれるのかな…?
そんな事を考えつつ学校へ向かうと、校門の前に人だかりができていた。

何だろう…と目を凝らしてよくみると、学ランを来た男子達が並んでいて。
あ!まさか今日、服装検査か?
いや、でも俺そんな服装着崩しているわけじゃないから、あの人に噛み殺されるわけー…
「なんすか?あいつら」
あ、ダメだ。
この人完璧に捕まるよ!
ど、どうしよう……

訳がわかってない獄寺君をよそに、俺が立ち尽くしたままおどおどしていると、校門の前にいる風紀委員の一人……よりによって雲雀さんと目があった。
ま、まずい!!
「ん?沢田、君…何してるの?そんな怠そうな顔して。その顔が校則違犯ってことで噛み殺していい?」
「って、えええー?!注意されんの俺ーっ?!しかも顔が理由ってどんなんですよ?!横暴過ぎます、っていうか酷すぎます!」
顔注意されても直しようがないんですけれど?!

思わずツッコミを入れてしまった俺に、雲雀さんは気にすることなく近付いてくる。
ヤバイ、と思った時に俺の前に獄寺君が割って入った。
「何だテメェ」
「…何?この子」
「あ、えーと、ひ…雲雀さん、この子は獄寺隼人君と言って、昨日転校してきた守護者の一人です!ご、獄寺君、この人は風紀委員の雲雀さんって言って、この人も守護者の一人だから…」
「え?コイツがですか?」
胡散臭そうに雲雀さんに視線を向ける獄寺君に対し、雲雀さんもじっと獄寺君を見つめる。
「何じろじろ見てんだよ?」
「…へえ、僕に向かって吠えてくるなんて珍しい生き物だね。…おもしろい」
ニヤリと口角を上げ、いっそう獄寺君に近付いて、品定めするようにじろじろ見つめる雲雀さん。
「……うん、なかなか気に入ったよ。特別に君には応接室で服装検査してあげる。まずは名札からだね」
「は?」
「な、名札?!」
え?てかうちの学校、名札あったんですか?!
ツッコミたかったけど、怖くてツッコめない。
「…名札もねぇのに、注意も何もねえだろ」
「名札は今から作るんだよ。『雲雀隼人』っていうのを」
「いやいやいや、おかしいでしょう、それ?」
先程の恐怖心はどこへやら、俺は直ぐさまツッコミを入れた。
「何、君?何か文句あるの?」
「普通におかしいでしょ?何初対面の相手の苗字変えようとしてんですか?」
「僕は気に入ったらすぐ自分のものにしたくなるたちなんだよね。ほら、よく言うじゃない、『自分のものには名前を書きましょう』って」
「意味違いますから。何で、落とし物とかの為に『名前書く』とか子供に教えるような教育的な台詞を、苗字変更なんて今後の人生に関わるような重い話に置き換えてるんですか?」
「落としたら困るでしょ?」
……いや、獄寺君落とすとか意味わかりませんから。

ともかく、何やら嫌な方向に話が行きつつあるので、なんとしてでも獄寺君連れてこの場から離れなければ!
…仕方ない『あれ』を使おう。
「あ、骸が塀よじ登って校内に!!」
「!!」
直ぐさまトンファーを構えて方向転換する雲雀さんに、その隙に獄寺君を連れて校舎へ走る。
いつも雲雀さんは敵視してる骸に反応するんだよね。
ふっふっふっ、悪いな骸。
俺は使えるもんは何でも使うよ?
おっと、ちょっと黒い発言しちゃったよ。
気をつけないと。

しかし、まあ……
ちらっと俺に腕を引かれながら「塀登る骸ってなんですか?」なんて暢気に聞いてくる獄寺君を見て、とんでもない人に目をつけられたな…と、こっそりため息をついた。


…あれ?そういえば雲雀さん。
あの人、獄寺君の服装については全くツッコまなかったなぁ…?

第5話:敵は意外なところに

<第5話:敵は意外なところに>

ようやく俺の家に着いて、獄寺君と別れた。
獄寺君は俺を自宅まで送ると言ってきかないからだ。
…本当は俺が送ってあげたいのにさ。
だって、こんな美人な獄寺君が痴漢にでもあったらどうしてくれるよ?

遠ざかりつつ俺に手を振りながら自宅へ帰って行く獄寺君に手を振り返しながら、俺は先程からニヤけが止まらない。

ああ…可愛いなあ、可愛いなあ……もう何度でも言うよ、可愛いなぁ〜。

「………キモッ」

たった一言で、俺のピンクな背景をバッサリ切断しやがったのは、予想通り外ならぬリボーンで。
すんごい据わった目付きで、いつの間にか玄関前に立っている。
「お前…正直、本当にキモイぞ?久々に痛すぎるまでにどん引きだ」
「う、うるさいな!」
うわ、コイツいつから見てたんだ?とさすがに恥ずかしくなる。
俺は恥ずかしさから、リボーンの横を足早に過ぎ去り、自宅へ入っていく。
階段を登りながら、内心少し焦っていた。

ひょっとして、リボーンに俺が『男好き』だってバレたんじゃないのか…?
さすがにそれはリボーンであれ恥ずかしいし、いたたまれない気分になる。

ヒヤヒヤしながら自室に入ると、おそらく窓から出入りしたのか既にリボーンがハンモックの上に座っていた。
感づかれないよう冷静を保つ俺を見越してか、リボーンが話をふってきた。
「お前、獄寺に好意を持ったろ?」
うわ、直球できやがった!さすがリボーン。
「な、何言ってんだよ?獄寺君、男だぞ?」
「…お前、一応隠してたつもりなんだな。お前の態度見てればバレバレだぞ?」
え?!ちょ、そんなに俺態度に出てたの?!
そ、それはかなり恥ずかしい!!
いや、てかちょっと待て。
その、呆れを通り越して憐れんだ視線を向けるのはやめてもらえませんかね?

俺が引き攣り笑いを浮かべると、リボーンはハァっとため息をつき、
「獄寺はやめておけ」
「え?」
急に真剣な顔付きでそんな事言われたら、体が無意識に強張ってしまう。
「な…何だよ?何で獄寺君はダメなの…?」
「……知りたいのか?」
一瞬で重くなった空気に、ゴクリと息を飲む。
そんなに特別な何かがー……?

「それはな」
「そ、それは…?」


「獄寺は俺が愛人として貰う予定だからだ」


………………………………………

ー…………………って、

「おいっ!?何だ!その超個人的意見は?!何だ?さっきまでの重苦しい雰囲気は?!つーか、勝手に予定に入れるなあぁーっっ!!」
「うるせぇぞ」
「これが黙っていられるか!大体、お前他にも愛人いるだろ?今回は譲れ!そして俺の幸せを願え!」
「………お前、先程とは打って変わってふんだんに自分が獄寺好きだって暴露してるぞ……」
そんなこと、今更構う暇なんてあるわけないだろ?!
ああ、せっかく今日は獄寺君に出会えた素敵な日だっていうのにっ!!

「てか、リボーンこそ男好きだったわけ?!」
「何言ってんだ、お前?基本、女の方がいいに決まってんだろ?ビアンキとかな。獄寺は別なだけだ。大体、今時マフィア界で男を愛人にするやつなんざごまんといるぞ?」
「え?!」
何ですと?!ごまんといる?!
……てことは、男好きでも全然問題ない世界ってこと?!
「……リボーン、俺、今初めてマフィアになってもいいかも…と思えたよ」
「…………逆に、俺は今初めてお前をマフィアにしたくないと思ったぞ」
俺がニヘ〜っと笑みを浮かべると、リボーンが近くにあった本を投げ付けてきた。
「…散々マフィアは嫌だとほざいていた奴はどこのどいつだ」
「何言ってんの、今でも嫌だよ?ただ、マフィアになるのは嫌だけど、獄寺君や他の守護者の皆とかと一緒に美少年ライフを満喫できるのは大賛成です」
「………」
親指立ててそう言ったら、思い切りリボーンの踵が顔面にめり込んだ。

「っ、イテテ…何すんだよ?」
「黙れ、馬鹿」
だって、皆美形揃いなんだもん。
ちょっとくらいウキウキしたっていいじゃないかよ。


「ーと、ともかく話は戻すけど、獄寺君はダメだからな!こればっかりは譲れない!」
「……仕方ねえな…」
もう一度ため息をついて、やれやれとハンモックに飛び乗るリボーン。
……あれ?諦めてくれた……?
ずいぶんあっさりー…

「百歩譲って、愛人じゃなくて本妻にしておいてやる」

「譲ってねーーっっ!?!?」
リボーンのさらに悪化した妥協案に、その日最大の俺のツッコミがこだまするのであった…。

第4話:帰宅はご一緒に

<第4話:帰宅はご一緒に>

その日は学校が特別に半日だった為、今日は昼に帰れる。
昼までの全授業が終わり、ざわつく教室の中、俺は帰り仕度を始めた。


…獄寺君は本当に昼間の全教科爆睡だったね……。
おかげで、たっぷり獄寺君の寝顔を思う存分に堪能できたけど。
ええ、そりゃあもう、眼見でしたよ。

ああ…おかげさまで、いい授業時間を過ごせたよ。ふっふっふ。

「ん?どうした、ツナ。ニヤけちまって」
「へ?」
しまった!ニヤけっぷりを山本に見られてしまった!
慌てて山本を見ると、山本は特に気にした様子もなく「腹減ったな〜」なんて言っている。

さすが、山本。
素の天然は強いね。
普通は引くもんだよ、山本。

ふぅ…しかし気をつけないと。
見られたのかちょっと抜けた山本だからよかったものの、これが他の人やましてやリボーンだったら……

(超越的変態)

「っっ!?ぎゃー?!まだいやがったーっ!!」
「?!ツ、ツナ?!」
頭を抱えて再び叫びを上げた俺に、山本始め、周りの人間がびっくりしてこちらを見ている。
しまった、四度目にしてまた叫んでしまった!
これじゃあ、まるっきり変態じゃん?!

(……………………………今更だろ?)

うるさいよ!だからお前のせいだろうが!
てか、なんだその間は?
今更自覚したの?かわいそうな奴、みたいな間はいらないんだよ!

(…俺はそこまで言ってねぇぞ?自分で言ったって事は自覚あるんじゃねえか、お前?)

ぐあっ?!しまった!くそ…墓穴を掘った!


「…十代目!」

!!この声は…!

心の中でリボーンとの言い合いをしていると、後ろからあの声が聞こえてきた。
「獄寺君!」
振り向くと、ニコニコ笑っている獄寺君がいて。

ああ、可愛いなぁ。
今日は素敵な寝顔を堪能させていただきました!ありがとう!

心の中でお礼を言いつつ返事をすると
「十代目、一緒に帰りませんか?」


……………………………………………………え?

今………なんと?


「十代目?」
十代目〜?と言いながら、止まっている俺の顔の前で手をヒラヒラと振る獄寺君。
「ーっ!!獄寺君!!」
「へ?!あ、はい??」
「帰ろう!是非とも帰ろう!一緒に!二人きりで!!」
「は、はい」
俺の勢いに圧倒されて、目を見開く獄寺君。

聞いた?ダメツナの俺が、美少年獄寺君と一緒にいちゃいちゃ下校だよ?二人きりで下校だよ?!
カッ、カップルみたいじゃないですか!!
うおおっ!!俺、今なら変態って言われてもめげないよ、めげないよ?!

驚いたままの獄寺君に「帰ろう!」と背中を押して学校を出る俺達。
ああ…これで手なんか繋げた日には、もう完璧にカップルですよね?ふふふ。
おおっと、気をつけないとまたニヤけてしまう。
少し頭が暴走しつつあるから、抑えないと…。
さすがにこんな事考えてるって獄寺君にばれて引かれたら元もこもないもんな。

いかに、獄寺君に俺が男好きとバレずに親密になれるか今後考えていかなければ……。

そういや、今朝出掛けにリボーンが転校生はビアンキの弟だって言ってたよな…。
…って事は一人暮らしか?
「ね、ねえ、獄寺君。獄寺君って一人暮らし?」
「はい、そうっすよ」
あ、やっぱりそうなんだ。
「凄いね、一人暮らし」
「いや、凄くねえっすよ。どうせ、家っても帰って飯食って寝るだけですし。殺風景な部屋ですが、よろしければ今度いらして下さい」
「是非行かせていただきます」
真っ直ぐ深々とお辞儀した俺に、ギョッと驚いている獄寺君。
そんな俺にとっては美少年の一人部屋など、禁断の花園ですよ?
行きたいに決まってるじゃないですか。
「……ちなみに、お隣りさんとかとの壁の防音具合は?」
「は?防音…ですか?」
「あ、いや」
しまった。
つい聞いてしまった。
危ない、危ない……少し自重しないと。

とりあえず、一人暮らしという情報は聞き出せた……
この調子で毎日一つずつ獄寺君情報を聞き出そう。
そして、帰ったら使ってないノートに聞き出した獄寺君情報を書いていこう。

ふふふ…ああ、学校が好きになれそうだ!

第3話:あの子の寝顔

<第3話:あの子の寝顔>

ああ……こんなダメツナの俺に、こんな転機が訪れるなんて…!

顔がにやける。
先程からにやけっぱなしだ。

あの獄寺君がこんなにも俺に密着しているよ。
しかも、時々目が合うとニカッと笑顔を向けてくるから堪りません。堪りませんよ!

ああもう、不良みたいで怖いとか言った奴、誰だよ。
え?俺?
そんな出来事、記憶にもないよ、ふふふふふふ…

マフィアとかは嫌だけど、リボーンが来たおかげで山本達や獄寺君のような美少年に囲まれた生活ができるなんて、少しはリボーンに感謝できそうだよ。
なにより、こんな綺麗な獄寺君と親しくなれるなんて、夢のようだ……。

授業が始まってから、にやにやしながらそんな事を考えつつ、ちらっと横目で獄寺君に目を向けるとー……

「くー……」

早っ?!もう寝てるよ?この人!?
初日から授業受ける気0ですか?!
なんだよ〜…せっかく授業中にこそこそと獄寺君との親睦を深めようと思ったのに……

……って、まてよ?

寝てるって事は……つまりですよ?
こ、ここここれは……も、もれなく獄寺君の寝顔を堂々と大いに堪能出来ちゃうって事ですかね?!
うおおおおぅ!していいんすか?堪能しちゃう感じでいいんすか?!
では、遠慮なく……

ゴクリと飲み込んで完全に視線を獄寺君の寝顔に定める。

ああ、可愛い寝顔だなぁ……
寝てる時は眉間にしわが寄ってなくて、起きてる時より幼くみえるよ…ふふふ。
こうして近くで見ると肌、本当に白いなぁ。
髪もキラキラしてる……。
あー触ってみたいなぁ。
しかも、近くにいると不思議といい香りがしてくるし……。
え?どうよ、普通に俺、キモイって?
そんなの知ったことか。
この隣で無防備に寝てる可愛い子見てると、俺の攻め魂がこう、沸き上がるんだよ。
……まあ、学校だから何もしないけど。
何かして嫌われたら嫌だしね。

どうやら、獄寺君は『十代目』である俺には貢献的であるようだ。
ようは、嫌われてはいないって事だろ?
なら、こんな美形少年と仲良くなれる機会、滅多にないんだから……これをチャンスに獄寺君との仲を深めていかないと。
今のとこはとりあえず、親睦だけね、深めるのは。
でも本当はもっと色々と深めていきたいけどさ……。

ああ、凄いよ…獄寺君。
たった数分でかなり君に虜にされつつあるよ。
これからは少し学校が楽しくなりそうだよ。

ほほえましく獄寺君の寝顔を堪能していると、ふとある事に気がついた。
回りの女子達も、獄寺君の方をちらちら見ている……ということだ。
そうだよ、よくよく考えれば獄寺君は女子から見れば不良っぽくてカッコイイ。
女子からモテるに決まってる!
そうなると…やっぱり告白されたりする率も高いわけで。
普通に考えたら、獄寺君だって男だし、可愛い女の子に告白されたら付き合ったりしちゃう可能性も……。
そ、それは……何かちょっと…いや、大分嫌かも。
いや、何でって聞かれると困るけどさ。

せっかくの幸せ気分の中で浮上した現実に、突き落とされたようなショックを受けながらも、今後いかに獄寺君と女子を関わらせないようにするかを悶々と考えていた。

……そして、とりあえず。

今は目の前にある可愛い寝顔を存分に堪能することに決めたのであった……。

第2話:隣のあの子

<第2話:隣のあの子>

ホームルームが終わって、一端先生が教室を出て行くと、教室もまた騒がしくなった。
そんな中、俺は深いため息をついた。

……ったく、リボーンのせいでとんだ恥かいちゃったよ……

(人のせいにするなんて、酷い男!)

ーーまたお前かよっ!?

…危ない…また危うく叫ぶところだった。
まったく、何なんだよお前は?気持ち悪いいい方して!
てか、どうやって心ん中に話かけてきてるんだよ?!

(人の詮索をするなんて…やっぱり酷い男!)

うるさいよ!気持ち悪いんだよ、それ!
…本当にこいつは……
俺にはプライバシーってもんはないのか?
少しは尊重してくれ。
心の中でひとしきりリボーンに文句を言ってから再びため息をつく。

「どうした、ツナ?ため息なんかついて」
「や、山本」
俺の前の席から体だけこちらを向けて、ニカッと笑顔を向けて来たのは山本で。
あー山本今日も爽やかな笑顔だなぁ。
こうして見ると、山本ってカッコイイよな。
前がそんな山本で、隣が美人の獄寺君……なかなか目の保養になる席だよな〜。

………でもね、山本。
間違いなく、山本も昨日まで俺の前の席じゃなかったよね?
全然別の席にいたよね?
「なんかいつもと見る景色が違うな〜」なんていい笑顔で笑ってる場合じゃないよね?
気付けよ、山本。

これもリボーンか?リボーンなんだな?!

(お前の護衛をさせるために、わざわざ動かしてやったんだぞ?)

護衛って何だ?護衛って!
こんなところで狙ってくるやつそうそういないよ!

(甘いな。こんなところだからこそ狙われやすいんだ。例えば、お前を狙いそうな者……そうだな、俺とか?)

お前かよーーっっ?!

三度目の叫びをあげそうな口を慌てて押さえる。
つーか、お前は家庭教師に来たんだろ?
暗殺に来たわけじゃないだろ!?
九代目?九代目ーっ!!人選ミスですよー?!
何でコイツ寄越したんですかー?!

心の中で、遠い地の九代目に決して届くことのないテレパシーを送っていると、山本が獄寺君に話し掛けた。
「獄寺…だったよな?俺、山本。よろしくな!」
いつもの人のよさそうな笑顔で笑いかける山本に、視線だけ向けて睨みつけて、小さく「あ?」とガンを飛ばす獄寺君。

うわわ…やっぱり不良みたいで怖い……。
やっぱ、こういつキャラは一般的には『攻め』だよなぁ…
ああ、でも、ツンな感じの人が『受け』なのも、それはそれで萌えるよね!
おおっと、危ない。
にやけて思わず親指立てるとこだったよ。

自分の一般人にはちょっと引かれそうな妄想をこっそり心の中だけで留める。

そして山本は、獄寺君の睨みなんか関係ないように、さらに絡んでいく。
「まあまあ、そう怖い顔すんなよ!なーツナ?」
「え?!あ、うん…」
い、いきなりふられても…!
すると、獄寺君はチッと舌打ちして「関係ねえだろ」とあしらう。
「そう言うなよ。あ、獄寺教科書は?まだ貰ってないのか?ならツナに見せて貰えよ」

なんですと?!
教科書を見せる?
それはつまりあれですか?
机と机をくっつけて、心置きなく密着できるというあれですか?!

山本っ!!ナイス!!

「あ?んなもん必要ねぇよ」

えーーーっ?!

こ、断られたよ、断られたよ?山本っ!?
ああ、せっかくの美少年との密着チャンスがぁー!

即行断られて落ち込む俺に、背後から誰かに背中を叩かれて後ろを向くと
「沢田、あんた日直でしょ?ほら、日誌」
そういって日誌を手渡して来たのは黒川で。
用がすむなり、すぐに席に向かう黒川の背中を見ながらそういえば日直だったっけ…と考える。
すると、今度は真横から視線を感じてそちらを向くと、こちらを眉を寄せて眼見している獄寺君がいて。
「…『沢田』…?いや、まさか……そういやさっき先公も…」
ぶつぶつ考え事をし始めたかと思えば、またこちらに向き直って。
「…あの…つかぬ事を聞きますが、名前、何て言うんすか?」
「(け、敬語?!)え…さ、沢田…綱吉だけど?」
がたっと椅子の音を立てて、明らかに動揺する獄寺君。
「沢田さ…?じゃ、あ…ボンゴレ十代目の…」
「ああ…うん、リボーンが言うには」
「す、すみませんでした!そうとは知らず、失礼を!俺、リボーンさんに言われて来た…」
「うん…聞いてる。守護者とかなんとか」
「はい!」
先程の態度とは打って変わり、俺に真っ直ぐお辞儀してくる獄寺君。

……しかし
「よろしくお願いしますね、十代目」
何だ?この可愛い笑顔は?
俺の萌センサーがフル稼動してますよ?!

俺の思考が少しヤバイ方向へ行き始めた頃、再び山本が話かけた。
「何だ、マフィアごっこ絡みの知り合いなんか、ツナ」
「あ?うるせぇな、何なんだよテメーは、十代目に馴れ馴れしく」
…このギャップ……ひょっとして『ツンデレ』ってやつですか?(それはそれで非情に萌ます)
「馴れ馴れしいって友達だからな。で、獄寺、結局教科書どうすんだ?もう授業始まるぜ?」
は!そうだよ……ある意味これは再び密着チャンスではないのか?
「ご、獄寺君。よかったら遠慮せずに俺の一緒に見なよ。……机くっつけてさ」
「で、ですが」
「いいから、ね?」
「……はい」
すみません、とまるで犬のように垂れた耳と尻尾が見えるんじゃないかと言う勢いでシュンと申し訳なさそうに頷く獄寺君に、内心密着にガッツポーズをしながら俺は思った。


大丈夫だ。

この子は『受け気質』だ
………と。
前の記事へ 次の記事へ