車窓からはどんどんさびれてゆく景色が見えた。
黒ずんだ建物、ひびの入った家。
下車した駅は無人で、余計に不気味だった。
コツコツとヒールを規則正しく鳴らして歩きながら、目の端に映る浮浪者を視界にとらえる。
パイプ椅子に座り込む白髪頭、地面でいびきをかく男性。
小汚い店から出て来るのは、滑舌の悪い前歯の無い人。
すれ違うのは自動車いすに乗った老人や、ホームレスばかり。
何だ、ここは。
キュッと襟を正して歩みを速める。
ここを真っ直ぐ抜けるだけ、大丈夫だ。
日は高く昇り、空は青い。
近くにスラムが在るらしいが、ここはまだ安全なはずだと聞いた。
to be continued.