狭い世界の中。

木の葉が風に揺られてサラサラと音を奏でている。

雨上がりで透き通った水色の空は、地面に近づくにつれて白い色彩が増す。

『んーーー』

どうして雨の後の晴れ空は、澄んでいる様に感じるのだろうか。

『でもあっつ〜〜い』

遠くの地面がゆらゆら見える、この暑さと言ったら。

『あ゙ーーー、っぐ』

ゴッと鈍い音がして、脳天チョップを受けたことを理解する。

「うるせえ」

振り返ればじっとり睨む男、幼なじみのムラサキが居た。

『チョップしなくても良いじゃんバカ』

仕返しにとムラサキの頭目掛けて手を振り下ろすも、呆気なく避けられた。

「口に出すなら「寒い」にしとけ、これ重要」

『寒い!寒いっ!さーむーいーーー……』

反応ナシデスカ。

『ツっこめよ!』

「何でだよ、若干涼しい気がし

『ないから!』

それはムラサキの気のせいだ、温度は変わらない。

「帰り道で何やってんのよアンタ達、コント?」

後ろから掛けられた声の主は、友達のミーちゃんだった。

『ミーちゃん!聞いてよ、ムラサキが暑いのに寒いって言えって』

「はいはい知ってるから、大声で言ってたから」

ミーちゃんが、冷たいです。

「気の持ちようだ」

「寒いとか言っても暑い事に変わりは無いわよ、バカなの?」

うっと言葉に詰まるムラサキ。

ざまあみろ。

「ミ〜〜〜ちゃーーーん!!」

ガバッと、このくそ暑いのに走り寄って来た男はミーちゃんに抱き付いた。

「暑い」

「愛しの彼氏、ユキヤだよおおおおおっ

構わず頬をスリスリする。

「ごめんムラサキ、やっぱ気の持ちようだわ。寒いわうちの彼氏。ってか捨てたい」

真顔で言うミーちゃんの目が死んでいた。

「嫌だーーっ!!捨てないでくれよおおおおっ」

(((激しくうぜえ)))

『あ、そこにゴミ箱が』

「はい廃棄ー」

ガバッと頭を鷲掴んでミーちゃんはゴミ箱に近づいてゆく。

「痛い、髪が抜けるよミーちゃんっ!?頭突っ込もうとしないでっ!!」

((どっちがコントだっ))


「やほーサーヤちゃん」

背後からいきなり現れた!?

「ユキヤと一緒に帰ってたの。走って行っちゃうと思ったらカノジョさんね」

ふむふむと納得する彼はユキヤの友達の……誰だっけ?

『お名前をどうぞ?』

「うわひっどい、名前忘れちゃったの?」

こくこく頷くと笑われた。

「ちょっとショーゴ、うちのサーヤにちょっかい出さないでよ」

ミーちゃんが間に入って私を庇う。

「何なのこのボディーガードさんは。自己紹介しようとしてただけなのに」

「は?今更何……、サーヤあんたもう1年経つのにまだ覚えてないの」

相変わらずの無関心というか、ねえと言われる始末。

『のの人』

「の?」

『なんとかなのーって口癖だから、ののくん』

「っ…ふっ、ののくんって超バカっぽい」

「本当ひっどいの」

「「「『あははははは』」」」



to be continued.