近頃は寒さが緩んで、駘蕩(たいとう)たる春光が誘う。

濡れ縁に腰掛け庭前を見遣ると、春色が目に見えて濃くなってきた事を識(し)る。
風を面(おもて)に受けても柔かく心地好い。


先日8日は仏生会(ぶっしょうえ)であり、傍近の不動尊でも花祭が催されていた様で、軽快な太鼓の音が仄(ほの)かに聴こえた。
その日は特に陽気の好い日で、快かった。


庭先を眺めると、先ず目に付くは、鉢植えのハナニラの白。
ユリ科らしく合弁花で、相称の花被が内外に3枚ずつ放射状にあるのが星を連想させる。

英名は端的に“Spring star”
英語と云うのは如何してこうも安直で面白みがないのだろうか。

例の如く、父に頼んで折ってきて貰い熟々(つくづく)観ると、只白いだけではなく、花弁の軸に黒色のボールペンを引いたのが滲んだかの様に、淡く青紫色をしているのだと解った。


ハナニラの隣には菜の花があるが、僕はこの花は好まない。

同じ黄を探すと、ラッパスイセンだろうか、黄の花被片(かひへん)と橙の副花冠を持つスイセンが花壇に多く咲いていた。

その黄の中に混じって一つだけある紫色は諸葛菜(しょかつさい)。
一般的にはオオアラセイトウと云うのが正しいかも知れない。
俗に、ムラサキダイコンソウとかムラサキハナナ、ハナダイコンなどと呼ばれる様だ。


左に目を遣ると、全体に緋紅の花を沢山付けた低木がある。
木瓜(ボケ)である。
これは語感が好くなく、美しいのに勿体無い。

更に奥には桃の木があり、白い花と葉との柔かな色合いが実に好ましい。


反対に目を向けてみると、梅と沈丁花の低木が二つ。
二つとも香りが好いものと知られている。


最後は、庭の中で一等背の高い樹、山桜である。
未だ咲いてはおらず、紅褐色の蕾が多く付いているのが解る程度である。

そうやって見上げていると、枝の向こうに、雲一つない、しかし真っ青ではなく、白を溶かした様な、正しく春の空がある。
春日に目が眩む。

今日は頑張り過ぎた。長く書き過ぎた。



追陳  コメントの返信が未だ出来ておらず大変申し訳ない。
一つ記事を設けて行う心積りではあるので、お待ちいただきたい。


話題:花見