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朝と菊(と仏と米?) でリレー[ 4]

ほどけゆく包帯に気付けないほど、夢中になって走っていた。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
走りながら菊の頭の中ではいびつに歪んだ謝罪の言葉が反響していた。
ごめんなさい。ゆるしてください。もうしません。ごめんなさい。ごめんなさい。こころのそこから。あやまります。あやまりますから。だからわたしを。ゆるしてください。
そして息が切れて肩で息をするようになって気付く。それがいかにご都合主義な願いかということを。

あらあら、許されざる行いだと知っておきながら、それでも構わないと考えたのはまごうことなくあなたじゃないの。たとえ許されなくてもいい、そう言ったのは誰の口だったかしら。数日前の言葉を忘れるほど、その心は勝手気ままで不誠実なものなの。
頭の中で誰かが責める。気持ち悪い。なのに振り払えない。いくら走っても、庭から逃げてきても、百合の声がはなれない。その時、腕に巻いていた包帯の最後の一巻きが、ほどけて、風に流されていった。

菊はそこで気付く。振り払えないのも無理はない。その傷痕は自分自身のものなのだから。


+++



俺頑張った!俺頑張った!
文字数すくねえとか言わないで!これでも何日もかけて書いたんだからね!!

それにしても止めすぎ相済まない、私の首ねじ切っていいぞ千之。


沸レ

朝と菊(と仏と米?)でリレー[3]



嫌がる菊を無理矢理問い詰めたことでアーサーがアルフレッドに説教をしている間に、菊はフランシスの家中を通り抜けて中庭に出ていた。
凝った装飾がさりげなく施された木造のドアを開けば、広いとは言えないが一面草花で彩られたささやかな庭園が広がる。一歩踏み出すとすぐ、彼の家とは違うさらさらとした爽やかな風が髪を梳いていった。吹き抜けになっているそこは、穏やかな日の光が天井から注ぎ込んでいて見た目よりもかなり明るく、実際よりもかなり広く感じる。敷き詰められた芝生を囲むように植えられた花々は、アーサーの家のようにきっちり揃えられてはいないが、それぞれが一番綺麗に見えるよう程よく手入れされていた。
中でも、ちょうど季節なのだろう、純白の百合がどの花よりも胸を張って咲き誇っている。その中に一輪だけ、濃紅の斑点のついたものが微かな風にゆらゆらと揺れていた。艶やかな香りに誘われ、菊がなんとはなしに触れてみたその瞬間だった。
右腕の傷が、刺すようにずきりと強く痛んだ。

「……っ」

はじけるように百合から手を離すと、痛みは元の鈍痛に戻った。が、しかし、菊はしばらくその百合から目を反らせないでいた。
この急激な痛みは偶然だろうか。
偶然に決まっている。しかし菊は、見つめるようにこちらを向いているその百合に言われた気がしてならなかった。お見通しよ、私は全部知ってるんだから、と。その言葉に菊は顔をしかめ、百合のほうから見えないように右腕を体で隠した。爽やかだったはずの風が、今は泥のように重い。

「おい、ホンダ?」

百合から逃げるように、声のしたほうを振り返る。開きっぱなしだった扉の向こうには、アーサーの姿があった。一瞬にして、吹き抜ける風が元の清流に戻った。

「先に入ってっちまうからどこにいるかと思えば……おい、どうした?顔色悪いぞ」

慌てて駆け寄ってくるアーサーの心配そうな表情に、菊は微笑する。おおかた、菊のしかめ面を見て半ば強引に連れだしてきたことに責任を感じてでもいるのだろう。隠しているつもりでも全て顔に出てくる、わかりやすいひとだ。そのわかりやすさが菊には嬉しく、また憎かった。

「…いえ、何でもありませんよ」
「何でもないわけないだろ。ひどく辛そうだぞ」

擦っている腕に延ばされたその手を偶然に見せかけて払い退け、建物の中へと戻ろうと庭に背を向けた。扉の向こうからは、菊の名を呼ぶアルフレッドの声が聞こえてくる。吹き込む風を背中に感じながら敷居を跨いだ、そのときだった。
あの言葉が、アーサーの声で小さな庭に響き渡った。

『もう一度警告するわ。
お見通しよ、私は全部知ってるんだから。
あなたが何を望んで何に怯えてるのかも、
あの人の居場所さえも、ね。』

腕が灼けつくように熱く痛み出す。

「おい、キク!?」

菊は、アルフレッドの制止も聞かず、猛ダッシュで屋敷を飛び出した。
かたく巻いた包帯が、ほどけはじめてきていた。

―――――

とりあえず誰か私を監獄にいれればいい。どんだけのばすねん。

兄ちゃんとこの庭園のこと調べておけばよかった…\(^q^)/


千之


↓の続き

遅くなりすぎて心苦しい。

千之のひいた伏線をいかしきれてないのが残念系のドンマイ型。

+++

「もう……三日も連絡がついてないんだ。今までも何日か家を空けることはあったけど、行き先とか、全然残さなかったことはなかったからな。それにあいつ、相当目立つ奴なのに今まで一つも目撃者がいないってのもおかしい。それに何が一番不審かって、家に鍵がかかってなかったんだ」

アーサーは説明しながら車を運転する。菊にフランシスの家を案内するためだ。だが菊は外出するのに乗り気ではなかった。アーサーがどうしても、と言うからしぶしぶ家を出て来たのだ。助手席に座っている間、ずっとうつむいて包帯をさすっている菊を横目に見て、アーサーは声をかけた。

「痛むのか、そこ」

菊は顔をあげずに不機嫌につぶやく。

「当たり前じゃないですか」

気まずい沈黙が二人の間に横たわる。アーサーは、無理矢理連れて来たのはさすがにまずかったか、と今さら後悔していた。

しばらくしてフランシスの家につくと、そこにはすでにアルフレッドが着いて待っていた。

「やあ二人とも。遅かったじゃないか」

アルフレッドは車のキーを指先でもてあそびながら言った。

「俺がいない間にフランシス帰って来たか?」
「いや。ケータイも通じないままだぞ」
「そっか……」
「あれ?菊、その包帯はどうしたんだい?ケガ?」

アルフレッドは菊がさすっている包帯を目ざとく見つけると、興味本位に手をのばした。

「いや、ちょっとしたかすり傷です。お気になさらないでください」

丁寧にアルフレッドの手を払いのけて、菊は苦笑いをした。

「なんだい、どっかの誰かとタイマンでもしてきたかー?どれどれ見せてみろよ!」

アルフレッドはすぐさま包帯にもう一度手をのばして、結び目に指をかける。だがそれは思いの外かたく結ばれていて、もたもたしている間に菊に手を払われてしまった。

「やめてくださいって言っているでしょう!まだ傷口がちゃんとふさがってないんですから、乱暴なことはよしていただきたい!」

菊はあくまでも丁寧にアルフレッドを戒めるが、アルフレッドはそれだけでは納得いかないらしい。口をとがらせて、不満をもらした。

「いいじゃないか、かすり傷だって言ったのは自分だろう?」
「駄目です」
「少しだけならさ、な?」
「断固拒絶します」
「なんだい、ケチだな」

アルフレッドは腕を組んだ。

「君がそこまで隠すのも珍しいな。なんだ、もしかして入れ墨入れるのに失敗したとかか?」
「この歳で入れ墨を楽しむのはさすがにきついです」
「ならなんでさ」

菊は無言でアルフレッドの横を通り過ぎた。すれ違うとき、限りなく入れ墨に近くはあるこの傷を、早く消えないものかとさすっていた。


+++


沸レって何なの?馬鹿なの?死ぬの?


沸レ

朝と菊でリレー[1]


憎たらしいほど晴れ渡った空に、菊は暗鬱とした心を全て吐き出すような盛大なため息をついた。

「はぁ…」

そのため息は当たり前のように自分にふりかかり、憂鬱はますます積もるばかりだった。
今、彼の家は夏真っ盛りだ。ケッペンの気候区分でいうCfa、温帯湿潤気候の夏は暑いだけでなく、湿気が多くじめじめしている。その湿気のせいで、ただでさえ高い気温が更に高く感じられるのだった。まして、そんななかで激しい動きの伴う作業などでもしようものなら、いくら風呂に入ってもべたべたしてかなわない。ものも腐りやすいので早く処理しなくてはならないし、風流ではあれど本当に厄介な季節だ。

「生臭さも消えませんしね…」

せめて紛らわせるだけでもしようと蚊取り線香に火をつけたとき、玄関のインターホンが鳴った。重い腰を上げてガラガラと戸を開く。その向こうにいたのは、どこか不安気なアーサーだった。

「おやアーサーさん。ご無沙汰しております」
「…あぁ。」

紳士を自称する彼にしては簡素すぎる返事だ。目の焦点もしっかり菊に合っていない。

「立ち話もなんですので、奥へどうぞ。蒸し暑くて申し訳ありませんが」
「あ…あぁ。悪いな」

そういって彼は軽く笑って見せたが、その笑顔がどことなくわざとらしい。菊のところに来るあたりからも、なにかあったことが見え見えだ。またアルフレッドさんあたりと喧嘩でもしましたかね、と菊は廊下を先導しながら苦笑した。

広い机に、菊とアーサーは向かい合って座った。からり、麦茶に溶け出す氷がガラスのコップに当たって涼しげな音を立てる。風に揺れる風鈴の音色もあいまって、菊は一瞬だが蒸し暑さを忘れることができた。こういうとき、この国として生まれ、風流を味わうことのできる感性を持ててよかったと誰にともなく感謝する。
つかの間の安らぎにやわらかい笑みを浮かべている菊とは対照的に、アーサーは相変わらず不安気で、そわそわと落ち着かない様子だ。しかしふとその碧眼が一ヶ所に焦点を結んだ。

「ホンダ、それどうした?」

アーサーの視線の先には、菊の着物の袖口があった。薄い紺の生地のそこからは、欧州の平均男性よりは遥かに細い菊の腕が覗いている。その白さは、彼の本来の肌の色だけではなかった。

「包帯なんか巻いて…怪我でもしたか?大丈夫か?」

その口調があまりにも心配そうだったので、菊は思わず笑ってしまった。

「なんだよ、こっちは心配してんだぞ?」
「あはは、すみません…」

菊が大丈夫ですよ、と返したら、彼はそうかとだけ言って少しだけ微笑み、また目の焦点をぼかしだしてしまった。その後しばらく待っても、なかなか口を開こうとはしない。どこか言葉に詰まっている様子だったので、麦茶の氷が溶けきるまで待って、菊は助け船を出してやった。

「それで、今日はどんなご用で?またアルフレッドさんと喧嘩でもなされましたか」

菊の穏やかな眼差しに、アーサーは閉ざしていた唇を開いた。


「フランシスのやつが、行方不明なんだ」



―――――――

伏線うめこんだがわかりにくくてだめだ\(^O^)/回収できるかな私…たまにほったらかしにしたままになるから不安だ…
携帯恐怖症克服してがんばれ沸レ!

千之

隠された狂気[4]

久しぶりにオレの家に遊びに来いよ、とアメリカに言われて、まあ特にこれといった用事もなかったので遊びに行ってやることにした。

「やあ、いらっしゃい」

ニッカリ笑うと、アメリカは俺を家の中に招き入れた。
そういえば。リビングへと歩いているとき気付いたのだが、廊下に飾られていた飾り鏡が見当たらない。以前ここに来たときには確かにあったはずだ。だが今は、鏡のあったはずの壁紙だけが日焼けせずに白く残っているだけだった。
少しおかしく思って部屋を見渡してみると、鏡が一つもないことに気付いた。

なんでこいつも、俺と同じようなことをしてるんだ?そう思ったとき、キッチンから「コーヒーいるかい?」と声がかかってきた。

「ああ」と曖昧に返事して、洗面所ものぞいてみようと立ち上がった。あそこは構造上どこの家にもかならず鏡が設置してある場所だから、もし意図的に鏡が廃除されているとしたら、そこの鏡もないはずだと思ったからだ。

部屋を出るとき、キッチンが目に入った。本当はそのまま通りすぎるつもりだったのだけど、ふと違和感を感じて足を止めてしまった。それはうっかりすれば、見逃してしまいそうなほどささいな違和感だった。だが気付いてしまえば、振り返らずにはいられない。

アメリカは、マグカップを二つ持ったまま、シンクを見つめていた。そう、鏡のように磨かれた、銀色のシンク。

何をしているんだろう。俺は疑問よりも不安を感じていた。心臓の音がうるさい。アメリカの目線の先が、シンクであることがこの上なく嫌な感じがする。手の平は嫌な汗でじっとり湿っていた。

仕方なく声でもかけようとしたとき、アメリカはゆっくりとカップを落とした。ガシャン、と割れる音に、背中が痙攣したように寒気立つ。足元に黒々と広がるコーヒー。アメリカはそれを、拾おうともしない。ただシンクの中の一点を見つめている。ここからはシンクの中はのぞけない。アメリカは何を見ているのだろうか。数歩だけ、近づく。すると、驚いたことに。

シンクの中のアメリカが笑っていた。

その笑みの毒々しさは、あの時の俺とそっくりだった。狂気に身をまかせ、欲望に忠実な者の浮かべる、蠱惑的な笑み。瞬間、怒りとも憎しみともつかないものが、胸の奥で沸騰した。

突然アメリカは銃を抜いた。だが俺のほうが早かった。俺は銃口をシンクの中のアメリカに向ける。怒りにまかせて引き金を引こうとしたとき、ふと、その瞬間に写り込んだシンクの中の自分が目に入った。

俺を小ばかにした笑みを浮かべてる。ずいぶんと必死だな、無意味なことに。そう言いたげな口元。腹の立つ笑み。

鏡を砕けばお前だって消えるくせに、鏡さえ見なければ、何もできないくせに。そう思って睨んだが、あいつは音もなく笑うだけだった。

「何か勘違いしてるんじゃないか?お前、俺が鏡の中の住人だとでも思ってるのか?」

引き金を引く。ハンマーが火薬に火花を散らす。こいつさえ砕けば、こいつさえ砕けば。念じるようにして弾丸が飛び出る瞬間を待つ。

こいつさえ砕けば、あの、アメリカを壊したいだなんて衝動も消えるはずなんだ。

「アハハ……鏡はあくまで鏡だぜ?写りこむのは結局、自分自身なんだ」


最後の刹那までこいつは、歪んだ笑みを口元に残して、そして弾丸をその額に受け入れていった。





(俺からは、誰も逃げられない)(自分からは、誰も逃げられない)

[FIN]


―――――――――


時間かかってもいいよと優しい言葉を千之からはいただいてはいるがそれにしても遅くなりすぎた。

こ、このお詫びはこの命をもって……


次は千之、果たしてどんなヤンデレが来ることやら^^


沸レ
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