話題:みじかいの


いや、この前ね、X'masパーティーの余興に使おうと“びっくり箱”を買いに行ったんですよ。で、一応あるにはあったんです。大きいのから小さいのまで、けっこう種類もたくさんあってね。ただ、これが…何て言うか…今の“びっくり箱”って、昔の“びっくり箱”とは全然違うんですね。

昔のやつは、箱の上蓋を開けるとバネ仕掛けのピエロの首みたいなのがびょ〜んと飛び出してきて「うわっ!」となる…みたいなパターンだったじゃないですか。でも、最近のやつはそうじゃない。まず、蓋が二重になっていて、一番上の蓋を開けると、その下にもう一枚蓋があるんですよ。で、同時に音声ガイダンスが内部のスピーカーから流れて来る。

「この箱は“びっくり箱”です。二枚目の蓋を開けると、中からバネ仕掛けのピエロの首が飛び出して来ます。飛び出す首の長さは約30センチ。ですので顔を40センチ以上離した状態で開けるようにして下さい。ピエロの首には極めて柔らかな素材を使用していますが、万が一ぶつかってしまった場合を考え、念の為に溶接用のシールド等で顔を防護しておく事を強くお勧め致します。繰り返しになりますが、これは“びっくり箱”です。その事を十分に踏まえた上で、心の準備が完全に整った状態で、特に心臓の弱い方はくれぐれもびっくりしないよう、静かにゆっくりと慎重にお開け下さい。なお、この“びっくり箱”を開けた事で生じるいかなる事態に関しても当社は一切その責任を追わない事と致します。さあ、大変長らくお待たせ致しました。音声ガイダンスの終了と共に中蓋のロックが解除されますので、備えの出来た方は箱をお開け下さい」

いやあ、ここまで念入りに前置きされたら、もう“びっくり箱”でも何でもないという。でも、どうやら最近の“びっくり箱”って、消費者からのクレーム対策なんですかね、どれもこういう作りになってるんだそうです。まったく、これでどうやってびっくりしろと。いや、むしろ“びっくりしないように”と箱は言っているし。まあ、これも時代の流れなんでしょうね。びっくりしないびっくり箱。いや本当“びっくり”です。


【終】



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この話は、「140文字小説」として前の記事に載せようと書き始めた物ですが、収まり切らなかったので、またちょっと違う形で日を改めて掲載致しました。

それはそうと、“びっくり箱でびっくりした経験”ってあったかな?…うーん、どうも無いような気がする。f(^ー^;