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雨だ。
いつもの朝よりも暗い窓の外、くぐもって聞こえてくる音。カーテンを開けたら、窓ガラスは水滴によって風景を歪ませていた。
朝から雨だと、それだけで憂鬱になる。持病の偏頭痛は酷くなり、鞄を濡らさずに学校へ行くのは困難だ。まとわりつく湿気でなんとなく体が重い。雨で良いことなんて、ひとつもない。
一人暮らしの安アパートは雨漏りこそしないものの、壁が薄い所為で学校よりも雨音が響く。自分しかいないから、余計そうなのかもしれなかった。
荷物にタオルを一枚加え、軽く朝食を済ませると弁当に昨日の夕食の残りを詰める。7時丁度、家を出る。
グラウンドから聞こえてくる運動部の朝練の声が今日はしない。雨だと中止か、体育館でしているのだろう。昇降口にも人影は疎らで、いつもより何倍も静かだ。
教室には向かわずに、一直線に美術室へ。鍵は勝手に合鍵を作っている。事務室で借りてくれば良いだけなのだが、校舎の別棟にあるそこへ行くのはいささか面倒だった。
7時20分、朝礼の開始より1時間以上早く登校するのは、朝練をする運動部員か余程勉強熱心な奴くらいだ。
早朝の校舎は普段の何倍も静かで、空気が動かないから音がよく響く。がたがた、キリキリ。扉の軋む耳障りな音が、長い廊下をまっすぐ走っていった。あまり使われない美術室の濃厚な油絵の具の匂いが鼻につく。はじめこそ気分が悪くなったりもしていたが、最近ではこの匂いを嗅ぐと落ち着いた気持ちになるようになった。
定位置に腰掛けて、鞄の中からデッサン用の道具を取り出すと被写体に向き合う。もうすぐ描きあがる。仕上げるつもりで、今日はいつもより早めに来た。
鉛筆の状態、光の入り方を確認して、いざ、描き始めると、失敗したというのがすぐ分かった。
雨による湿度の所為で、うまく鉛筆が滑らない。
こうなると、無理に続けても思い通りに描けないのは一目瞭然なので、早々に諦めた。こんなことに気付かなかったなんて、と苛立つと、それに反応したように頭痛が襲ってくる。どうにも調子が悪い。
もう動く気にもならなくて、窓際に置いてある古びたソファに身体を預けた。
人物画を描くときにでも使われていたのだろう、埃っぽいそれは、多少汚れてはいても破れたりはしていない。発見したときは色んな道具やモチーフに埋もれていたが、それを片付けて今は勝手に自分のもののように使っていた。
絶え間ない雨の音。少しずつ人の気配が濃くなってきた学舎。頭痛は治まってきてはいるものの、まだ身体を動かすのは億劫だった。
いつものように――それこそ、癖のように大きな鏡に目を遣る。何が見たいと思っているわけでもないのに、苦笑して、息を吐いたとき気が付いた。
なんで、まさか。
鏡の中にある隣校舎の屋上には、確かに人影があった。
後からとことん、迂闊だったと後悔するのだが、この時、頭痛と、本人も気付いてなかった微熱で頭が働かなかった清雅は、振り向いて屋上を直視した。
そうして、濡れないように廂の下に立っていた彼の瞳を見つめてしまった。
・・・・・・・・・
超久しぶりです。
おかげで自分が書いている話の筋がまったく分からなくなってしまいました…。ちょっとまとめてみます。
蘇芳、中1...サボり仲間の先輩がいなくなる『飛べなかった〜』
(この間に蘇芳が美術室に清雅がいることに気付く(清雅も蘇芳に気付く))
蘇芳、清雅、中2...初遭遇『飛べなかった〜』『触れなければ〜1』
(蘇芳と清雅がお互いのことをより意識する『触れなければ〜2、3』)←今このへん
(何だかんだあって時間が過ぎて)
蘇芳、清雅、高1...お互い気になるけど付き合ってない『春に』+
α
こんな感じなはず…。
もしかしたらどっかで矛盾が生じたりするかも/(^O^)\