明日髪を切ろう。
あのひとが綺麗だって言ってくれたから、腰に届くまで伸ばした。
毛先は荒れて、枝毛が増えて、ぱさついてきたけれど、
私の髪は根元に近づく程黒く、真っ直ぐに伸びている。
何もしないのが一番綺麗だ、と歯の浮くような台詞をさらりと言える彼は自分の台詞の意味をあまり考えてはいなかった。…と思う。
そして私は髪を切らなくなった。
あれから4年が経つ。
彼はいなくなった。
ずっと昔にいなくなった。
忘れた訳じゃない。
忘れられるなんて、今の私は、思わない。
ああ、でも、
髪を切ろうと思ったのは、きっと、あの日の私。