祖父が亡くなりました。
二人とも、いなくなってしまいました。
何故こうも、今に成って後悔するのでしょう。
嗚呼彼の時、もっとこうして居れば良かった、あんな事しなければ良かった、未だ言って居ない事も沢山有るのに、
悔やむのはこんなに簡単なのに、悔やまぬ様に生きる事はこんなにも難しい。
どうか安らかな眠りを、私を愛してくれた愛しい祖父に。
明日髪を切ろう。
あのひとが綺麗だって言ってくれたから、腰に届くまで伸ばした。
毛先は荒れて、枝毛が増えて、ぱさついてきたけれど、
私の髪は根元に近づく程黒く、真っ直ぐに伸びている。
何もしないのが一番綺麗だ、と歯の浮くような台詞をさらりと言える彼は自分の台詞の意味をあまり考えてはいなかった。…と思う。
そして私は髪を切らなくなった。
あれから4年が経つ。
彼はいなくなった。
ずっと昔にいなくなった。
忘れた訳じゃない。
忘れられるなんて、今の私は、思わない。
ああ、でも、
髪を切ろうと思ったのは、きっと、あの日の私。
神様、
この世には、産まれてきてはいけない子供が、いるのですね。
それが私のことだなんて。
今の今まで気付きませんでした。
願わくば存在に罰を。
ああ、やっぱり私はおかしいんだ。
愛情?そういう名前のものもあったね。どれくらい昔の地層を掘れば見つかりますか?
メールの最後はさよなら、だった。
追い縋られるのも、追い縋るのも、嫌いだ。
追い縋られたら煩わしくなる。
追い縋ると惨めになる。
依存されるのも、依存するのも、苦手だ。
依存されたら逃げたくなる。
依存したら恐ろしくなる。
『ならどうしたいの?』
私は私のままで、
私として誰かを愛したい。
いつだってそれだけなのです。
あはは、ねえ、愛することの意味も知らない癖に。
無邪気なものね。幸せな子ね。
だから最後のメールは、さよならだった。
さがしものはみつかりましたか?
私は、ほんの二十年と少しの間に、とても多くのものを落としてきてしまったように思う。
自分の幸せは掴んだまま歩いてきたのに、誰かを幸せにする力は、真っ先に捨ててしまった。
あのひとは私のために、私のせいで死んだのかもしれない。
私は私が嫌いだ。
嫌いだけど、一番大事だ。
そんな私が嫌いだ。
嫌いだ、嫌いだと言いながら同情してもらうために人の顔色を窺う自分が嫌いだ。
それを解っている癖に止めない自分は嫌い。
嫌いしか言えない自分が嫌い。
私は、
いつまで経っても、私だ。