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(GANTZ/つづきもの)

「うそ…」

自分と同じスーツを身にまとった男の人を信号を渡った所にある歩道橋の上で見つけた。声をかけようと走ったが、聞いたことのない衝撃音に立ち止まる。男の人の正面にはガンツという黒い球に映し出されていた写真の人物が立っていた。男が悲鳴を上げながらそれに向けて銃を構えた瞬間、信じられないことが起きる。男の上半身が破裂して消えたのだ。

考える間もなく私は反対側へと逃げ出していた。あの人が言っていた言葉がいま何となく目の前で起こった光景と繋がる。

「助けて」

自然と言葉が口をついて出た。とにかく遠くへ、男を殺したあれから離れる為来たこともない道を決死の思いで走り抜けていく私の足は心なしかいつもより早いように思えた。もしかしてスーツの力なのだろうか。

「やだ」

明かりのついている喫茶店に逃げ込もうと息を吐いた自分を叱り飛ばしてやりたい。上空から重い音を立てて降り立つ人間のようで人間じゃない何か。さっき男を殺したばかりの化け物に前を塞がれたのだ。荒い呼吸を繰り返し、血走った目は濁っている。何もかもが形容しがたい風貌だった。私はすぐに銃を構えたが標準は定まらない。当たり前だ、銃なんて持ったことも習ったこともないのだから。

「あっ」

私の両腕が吹き飛ばされたのは一瞬の出来事だった。まるでおもちゃの人形のように、簡単に壊れてしまう。

紫色の静脈

(GANTZ/つづきもの)

自身に起きている全ての出来事がおかしいことは分かっていた。冷静に努めようとしたところで、たまにすれ違うサラリーマンの目に私の姿は見えてないと分かってしまえばそうもいかない。

中央に置かれた黒い球のあるマンションの一室、最初はそこから始まった。うずくまるかたちで気がつけば、いつの間にか私はその部屋にいたのだ。私だけではなく見知らぬ数人の人間もその部屋には存在し、中には彼の姿もあった。

俺は玄野、直に転送が始まるから急いでこのスーツを着て。説明はあとでするから。矢継ぎ早にそう言われ、意味も分からずに手渡された黒いスーツに着替えると見たこともない形をした銃を渡された。

「そのXガンで今からガンツに映し出される星人を殺すんだ。ごめん、急すぎて意味わかんないかもしれないけど、そうしてくれ」

ガンツと言われた黒い球に映像が浮かび上がる。何かのキャラクター写真の横に不可思議な文字でプロフィールが書かれていた。

「こいつを殺らないと、君が死ぬ」

玄野という男からのいきなりの宣告に頭は混乱することしか出来ず質問を投げかけるはずだった私の口は、徐々に頭から下へ消えていく玄野さんの姿によって閉口してしまった。

転送が始まった、これからどこか街に飛ばされるけど絶対帰らないでその場にいてくれ、そこで全部説明する。玄野さんはそう言っていたが、どうやら私たち飛ばされた場所がばらばらだったようだ。

「おなかすいたな」

脳みその断面ってスイカみたいなんでしょ?

(GANTZ/西丈一郎)

高層ビルが立ち並ぶ東京の街中で、私の正面に立っている彼と顔を会わせるのは初めてのことではなかった。

声をかけようと足を踏み出したが、すぐさま彼はばちばちと火花のような電流を放ち姿を消してしまった。あげかけた手は目の前で起こった非現実的な出来事によって無意識に動きを止めてしまう。呆気にとられていれば誰もいないはずの真横から声した。

「ぼけっとしてるとアホ面晒したまま死ぬぜ」

声がした方へ振り向いたがやはりそこには誰の姿もない。声は先ほど姿を消した彼のものだ、間違いない。私は玄野という男の言う通り、玩具のような形をした黒い銃を握りしめ静まり返った道路を進んだ。

ドラスティックマイヤー

(GANTZ/西丈一郎)

説明のつかない異星人に体を吹っ飛ばされれば止まる気配なく私の体は屋上から投げ出される。一瞬だけ街並みを地面に自分の体が宙に浮いた気がしたがそれは幻想だ。私は重力のまま、遙か下にある地上に急降下する。

空気にはためく服が鼓膜に響いて私は掴む場所もないのに無我夢中になって手を伸ばしていた。変化する視界に映るのは空をきる手に舞い上がる髪、全身で感じる浮遊感はあまりにも頼りなかった。

「おい」

離れていくビルを見送る眼前に現れる電光と声。たいそうな銃を抱えながら黒髪とパーカーを靡かせ、あの嫌な少年が突如として透明人間のように現れたのだ。

「邪魔なんだよ、退け」

少年は真っ逆さまに落ちているだけだった私の体を横に蹴り上げると体をビルに反転させながら銃を撃ち込んだ。巨大な爆発音に飛び散る瓦礫と奇妙な断末魔が聞こえた頃には私は背の高い木の中に突っ込んでいた。

「いたた…」

「そこのぶら下がってるクソアマ」

一緒に落ちたはずの少年は何事もなかったように無傷で立っていた。私はというと無理に着させられた黒いスーツから気色の悪い液体を垂れ流し、腕にはぶっすりと枝が刺さっている状態で無傷とは言い難い。

「さっさと死ねよ」

もう私は一度、死んでいたはずなのに。

スラムにしかないもの

(?)

保健室というのは不思議な所で、居心地が良い時もあれば悪い時もある。私にとって保健室というのはとても曖昧な空間であり、現実をまざまざと体感できる場所なのだ。

睡魔を落とし切れない朝、枕から頭を離す理由として、学校に行くまでは頑張ろう、というのがある。眠くて仕方ないけれど学校に着くまでの僅かな時間を我慢すれば適当な理由をつけ、保健室で仮眠を取れるじゃないか。ほんの少し我慢をするだけ、それを頭の中で反芻しながら私は登校する。

それじゃあ実際、保健室に行って仮眠しているかというと、していない。友達に挨拶をし、校門をくぐり、席についてしまえばそんな浅はかな考えは影を潜めるのだった。

「けれど今日はそういうわけにもいかなさそう」

腹が痛い。電車の中で怪しい波があった。

(未完)

あの頃信じていたものが必ずしも正解とは限らない
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