普段から変な考察ばっかり書いてるブログでありますが、18年版のおっさんずラブは『普通の思考で見ていると話が矛盾する』から『矛盾を理解するにはどのようにしたらいいか頭悩ませているうちに普通じゃない思考に辿り着いた』ため、今回はその辺りのことを書いてみようと思います。始めから変な思考だったわけじゃないので、誤解しないでいただけると嬉しい。

18年版がとても奇妙だと感じるのは『目から入ってくる情報と耳から入ってくる情報が異なっている』所にあります。私にはこれがとても気持ちが悪くて落ち着かない。例えばこの間書いた所だと、4話ちずちゃんが泊まりに来た時。
目:ちずちゃんはスーツケースを持ってきた
耳:「寝巻き、ベッドに置いといたんで」
ちずちゃんがスーツケース持ってきたってことは、その中に当然服が入っているでしょうね。なら貸す必要無いはずなのにこのやり取り。「えっ、私スーツケース持ってきたよ?」ともならず、誰も不思議がらない。

3話
目:お婆さんに道案内
耳:「お人好し」
このシーンだけを見ると一致しているんです。ただでさえ道を聞かれて案内するって経験自体が無い方も多いでしょうし、「お人好し」は一致しているので気付くのが難しいかもしれません。2話で牧君が言う「方向音痴」とは異なっているのです。「好き嫌い多い」も公式本のプロフィールを見ると実際は多いどころか嫌いな食べ物は1つしか無い。1話のわんだほうでダサくない普通の服を着ているのと5話の「クソダサいじゃないですか、私服」とか。
こういう、『そのシーンを単独で見ると違和感が無いが、別のシーンとの繋がりや公式のキャラ紹介を見ると矛盾する』シーンが複数あります。1ヶ所だけなら「ミスかな?」って感じもするけど、複数あるとなると『作りが雑』か『何か仕掛けをしている』かどちらかのはず。

このドラマ何か変だなって思いながら見てて、ほぼ確信したのは6話後ですね。1話の「牧君は入社3年目で豊洲地区の再開発を」をどう解釈するかじゃないですか?これ耳で聞いただけだと『牧君は今入社3年目で、今までに豊洲地区の再開発を』って意味だと思ってたんですよ。当初は公式サイトのキャラ紹介に入社3年目って書いてありませんでしたっけ?6話後に今のやつに書き変わったんですけど、入社4年目ってなってる。6話ラストに1年飛ぶから、それに合わせてキャラ紹介も1年経過したものに変わったのかと思いきや、年齢は1話開始時のままなんですよね。これを理解するのにとても苦労したのですが、要するに『今入社4年目で、3年目の時に豊洲地区の再開発を』って意味なんですよね?外部のキャラ紹介とか無しであの部長のセリフだけで理解しようとすると、私のような解釈する人は確実にいるんじゃない…?キャラ紹介の入社4年目っていうのと照らし合わせて、ようやく意味に辿り着けた。明らかに2通りの解釈に分かれるのに前後の文脈からの判断は不可能、判断できるとすると5話の武牧付き合ってたのが4年前って話まで飛ぶんですよね。大学行ったわけでもない低学歴な私には、このドラマの表現難しいです…。
それでまあ、このドラマ何か変だな、紛らわしい表現してるなって引っ掛かりを感じてたんだけど、1番問題なのはラストですね。

目:春・牧のイチャイチャ
耳:BGM『春』
これだけを見るとどう見てもハッピーエンドなんですけどね、映像とBGMもとても合ってますからね。「あいつは本社勤務で俺は営業所勤務。生活のすれ違いが原因だった」が合わさると…。『上海勤務と東京第二営業所勤務の生活のすれ違い』が始まるって言えば、ね。武川さんと牧君が別れた状況を悪化させることになるんで、よくこれが炎上しなかったと思うよ…。

例えば、結婚を『ゴールイン』って言うのあるけど、あれ私違和感あるんですよね。生涯一緒にいるつもりなら、結婚して終わりじゃなくて、むしろそこからが本当に大事なんじゃないの?恋人としてのゴールで夫婦としてのスタート、みたいな意味ならまあ有りかもしれないけど、でもやっぱり言葉としてはゴールって違和感あるかな。うちは親が離婚してるから、普通の家庭で育ってきた人達とはそもそも世の中見え方が違ってるんだろうけど。
それでまあ、多分、そういう感覚なのかな?ドラマとしてのラストはハッピーエンドで終わってるんだけど、この後長く続かなくて別れることになるなら「そうじゃねえよ!」って思う。6話後ファンが望んだことって、部長には申し訳無いけど『春牧結ばれるハッピーエンドを見ること』だったと思うんだ。実際それが叶っているから、このおかしな終わり方に気付かず喜んでる方多いんだろうし、気付いてたとしても6話後の1週間経験したファンがこれ違うって認めるの勇気いるもの。でもあの終わり方を見て引っ掛かりや不安が消えなかったし、牧君の目から見た『その後』っていうのはとても孤独なものだから、私にはハッピーエンドではなかった。

『何か引く』か『何か足す』かしないとハッピーエンドにはならないはず。…うーん、ハッピー『エンド』って言い方がちょっと違うか?この先の関係がってことね。引くのは「生活のすれ違いが原因」よ。1回しか見てない方ならセリフ全部なんて覚えてないだろうから仕方無いけど、何度も見返してるファンなら語られてるものを無かったことにするのはダメだと思う。牧君にとっては愛情あっても一緒にいられない人ダメなんだって、その話から理解できるんだけど、じゃあ何でこの終わり方で大丈夫なの?って所が語られてないの。
足すのは指輪とか名字を変えるとか式を挙げるとかでしょうね。だったら他のシーンを1分くらい削って春牧でそういうシーン入れたら良かったよね?二次にはそういう作品多かったですね。でもドラマ内には無いんだよ。何も無い。春田父が単身赴任で不在中でそういう家庭環境に慣れてるからかと思ってみたけど、春田母は指輪をしていないのでこの説も否定される。あるのは牧君の基本的な思考が「自分の幸せより相手の幸せ」っていう、この『相手』が私達視聴者を指すなら、目からの情報と耳からの情報が完璧に一致しちゃったんですよね…。私の理解力ではそこまでで、そういう完結の形なんだと思った。
「俺はお前とずっと一緒にいたい」って言った時点で、上海行きを取り止めて東京に残る結末になるんだと思ったんですけど、違うんですよね。セリフからストーリーを理解しようとするとメチャクチャなことになる。何度も見返してストーリーよく知ってるファンの方が理不尽な目に遇うっていうのは、それ確実におかしいでしょ…。

私が足しているのは、『シーンとシーンの間の描かれていない部分』です。当たり前の話なんですけど、登場人物達にはドラマとして描かれている部分以外にもずっと時間が流れているんですよ。例えば密着ドキュメンタリーとかで取材時にはカメラがずっと密着して撮影してるんだけど、放送時にはもちろん番組の尺がありますから、視聴者に見せたい部分だけを残して編集して、あとはカットしているわけですよね。それと同じようなことだと思ってもらえると分かりやすいかもしれない。役者さん達の撮影はさすがにまだかと思うから、あくまで物語的に登場人物達にということなのですが、カメラがずっと密着して撮影してるとイメージしてください。それをドラマ7話に収まるように編集して放送していたわけです。実際、DVDの特典には未公開映像もいくつか出てきたように、撮影はしたけどカットされた部分っていろいろあるわけです。役者さん達じゃなくて登場人物達と思ってくださいね。映像があるんじゃなくて、ストーリーがあるってこと。『物語的に重要な部分や視聴者が見ておもしろい部分もカットしている』という辺りがこのドラマの変わった所であり視聴者的には盲点なのです。例えば、5話のコップと歯ブラシ。春牧のバックハグ+ちずちゃんに見えてしまう人が続出したけど(私も…)、実際は4話のちずちゃん泊まりに来るよりも前にピンクの歯ブラシがあるってやつ。ではあれは何を表現したものなのかと思っても、『歯ブラシを持っているシーンが存在しないため、どれが誰の歯ブラシかという手がかりは無い』という真実に阻まれてしまう。春ちずのバックハグである可能性が高いだろうなと個人的には思ってる。そりゃあそれを見たら、春田さんとちずさんって本当に付き合ってるんだなって思って、牧君出ていこうとするわな…。ただし緑2本が牧ちずである可能性を否定する根拠も無いし、春牧も可能であるから(4話で緑→春田さん、ピンク→春田母、牧君→緑で歯磨き中として、5話はちずちゃんがピンクを持ってきて春田母を歯ブラシ立てに残せばOK。あくまで一例です)、結局何を表現したカットなのか正確には分からない。ちなみにコップは始めから春田家に白ピンク緑の3つがある。このドラマが推理物になっているという根拠の1つがこの辺り。                    

『映像とセリフは全て固定』という絶対条件をまず守ります。『シーンとシーンの繋がりで矛盾や違和感のある部分』を『ドラマの内容に辻褄を合わせて繋げていく』ということをしてきただけです。例えば、先に書いたちずちゃんのスーツケースと寝巻きの件だと、「寝巻き持ってくるの忘れちゃったから借りられる?」とかのやり取りが間にあれば自然に繋がることになるんじゃないかな?…別にそこはそんなに重要な部分ではないけど、何かモヤッとしてたので…。わんだほう閉店パーティーの時に牧君もいたのに、帰る時は春田さん1人なのも気になってたんですよね。これについては二次で『わんだほうの片付けを手伝うために春田さんが1人で残った』っていうのがあって、それが1番それっぽいかな?
こういう『物語はあるが放送でカットされて上手く繋がらない部分』をひたすら埋めていくと、かなりのボリュームになります。作中の状況やセリフに基づいて、ピッタリ繋がる方法を探し出していく。『目からの情報と耳からの情報が異なっている』というのも、それが起きる状況を探したらいい。だいたいは『視聴者が見ているもの』と『牧君が言っていること』が異なっている状態。私にはこの複雑なドラマをスッと理解できるような頭脳無いから、仮説を立てる→検証する→修正・調整という地道な手段を根気と執念で挑んできたわけです…。
今は放送されている部分のピースだけが並べられている状態で、そこから物語全体像のジグソーパズルを組み上げていくような感じです。『生活のすれ違い』について何であの終わり方で大丈夫なのか、それをゴールとして探したから、納得できるものが出てきたってことはそれが答えなんだと思うし、辿り着けるように作ってくれてるんです。私の時にはヒント出してくれる人とかいなかったから、2ヶ月半かかりましたけど。指輪とか結婚式とか、そんな単純な話じゃない。奥が深い話だからおもしろい。理由を先に分かるように語ってたら、完成度高くなりすぎて本当に完結しちゃいますからね。だから謎を残して終わらせることで長期展開は考えてたんじゃないかな?

理解できるようになると「何このドラマすごい!」ってなるんだけど、それを共有して同じ認識で語れる人が欲しいんですよ。詳しく説明するとネタバレになるし、ネタバレって言ったって今ある全7話から読み取れる話だし、何なのこの理不尽…!

9日に拍手1件ありがとうございました!