イッキ見上映会行ってきました。新情報は公式サイトにお任せし、レポもTwitterに大勢上げてるでしょうから、私は別のことを。
公式オフ会と称されたイベントでしたが、実際の所はやっぱり私のような異端者は行ってはいけない場だったらしい。公式以外は信じちゃダメ、話を聞くのも結構ですからって拒否されてすごく悲しかった。まあ、普通は恋愛ドラマが難度の高い推理物になってること自体気付かないですよね。私は分かりやすく推理物って言ってるけど、天体観測なんですよ。曇ってたり障害物で隠れたりしてても、空に星は常に無数にある。「春田さんって、何にも見えてないですよね」って牧君は言うけど、1番何も見えてないのは視聴者だって話。私は最終話後早くにそれを自覚したから、飽きずに天体観測を続けている。例えば4話時点で緑とピンクの歯ブラシが存在するけど、5話の歯ブラシのカットは一体何を表したものか。問題だけは出してきてるけど、答えが存在しないんですよ。歯ブラシを持っているシーンがどこにも存在しないから、どれが誰の歯ブラシか手掛かりがそもそも無い。答えが存在しないから考察の余地はいくらでもあるけど、人によって解釈にズレが出てしまうという状態。そういう所、他にも何ヵ所かあるのよ…。
改めてこれ書きましょう。個人的に18年版おっさんずラブで最もすごいと思う部分で、1番ちゃんと見たい所。私は1年前から気付いてたんだけど、どのくらいの方がこれを知ってるんでしょうか…。見るスタート位置が重要です。
6話で牧君が春田母に会ってしまって、「ずーっと創一と友達でいてね」と言われて「はい」と約束してしまっている姿。『それを見ていたのは私達視聴者だけ』で『作中の他の登場人物達は誰も知らない』のです。牧君の言動を見ると合致するのはこの「ずーっと創一と友達でいてね」のみです。発音だと「創一と」に聞こえるんですが、シナリオブックだと「創一の」になっていて、『と』『の』で若干ニュアンスは違うのですが「友達でいてね」に「はい」と返事をしてしまっている姿は視聴者に隠されていません。これ春田母は息子が同性と付き合ってるってあの時知らないから、悪気無いどころか歓迎してくれてるんですよね。ところがこれに「はい」と答えてしまうと友達でいなければならない。春田さんは「別れるって何だよ」と言って別れることは望んでいないんですが、春田さんと春田母、2人の望みは同時に叶えられない状態なんですね。春田母の方を選んだ状態だから別れを切り出してくるし、「好きじゃない」とは言うんですけど「嫌い」とは言わないんですよ。『友達』を望まれているから恋人として好きでいてはいけないけど、友達でいるために嫌いになってはいけない。元の先輩後輩の関係に戻ったように春田さんは思ってるんですけど、牧君はそうじゃないっぽい表情見せますね。この先輩後輩の関係をマロも「友達」って言いますから、この関係を友達とするのでいいはずです。これだけ合致しますから、つまりあの別れは『春田母のことを考えて春田創一と別れた』ことになります。これを特定することがまず第1の難関。春田母は「孫の顔」「ちずちゃんとの結婚」「友達でいてね」と3つの望みを口にしますが、孫の顔とちずちゃんとの結婚については望みを口にしただけで牧君に頼んだわけじゃないです。「友達でいてね」だけはお願いされて、「はい」と答えてしまった。牧君もこれだけで、あとのことには何もしてないです。
ケンタツと檸檬ちゃんの「人に言えない恋愛なら、俺は続かないと思う」「じゃあ別れるしかないんじゃない?」が伏線。牧君は春田さんと付き合っていることを春田母に言うことができなかったから、別れるしかなかった。
ちずちゃんから「何で別れた?」って聞かれるのですが、『春田母のことを考えて春田創一と別れた』のに、「春田創一に幸せになってほしい」と答えたら会話が支離滅裂です。もちろん恋愛の意味ではありませんが、牧君が言う『本当に好きな人』を春田母のことだとしてあの牧君の話を聞いてみてください。全く同じセリフなんですが、春田創一のことを言っているか春田母のことを言っているかで意味合いが全く変わります。でも春田母のことを言っているとしても話通じますよね?春田創一と結婚するなら春田母とも家族になります。「本当に好きな人」と言えるくらい創一だけでなくそのお母さんも好きになって、春田母を巻き込んでしまうことを心配して牧君は身を引いた。
…あれ?では巻き込んでしまうことが怖くなった相手が春田母であるとすれば、春田創一のことは『すでに巻き込んでいた』ことになるのでは?
牧君が春田母と会ってしまったことを知っているのは私達視聴者だけです。武川さんはそのことを知りません。武川さんは6話で春田家に押し掛けてますし、その時牧君が「このまま本当に付き合って、春田さんは本当に幸せなのかなって思って」と言っているので、それをそのまま「お前のことを考えてな」と思い込んでますよね。繰り返しますが、武川さんは牧君が春田母に会ってしまったこともその時言われたことも知りません。春田のことを考えてと思い込んでるのであって、嘘を吐いてるわけではありません。牧命みたいな武川さんですから、その武川さんが言うことを信じると『春田創一のことを考えて春田創一と別れた』と刷り込まれてしまう。
※公式お得意のミスリード※
「俺といたら、春田さんは幸せになれませんよ!」
春田母からは「友達でいてね」と望まれているため、その約束を果たそうとしているのですから『俺といたら』とは友達でいるということ。もし牧君が春田さんの幸せを女性と結婚して子供が産まれる普通の人生に戻ることだと考えているなら、友達でいても春田さんは幸せになれるんです。男同士で友達でいるわけですからね。
俺と友達でいたら春田さんは幸せになれない。
牧君が思っている『春田創一の幸せ』とは、女性と結婚する普通の人生に戻ることじゃないんです。そんなこと勝手に決めていないんです。春田さんは牧君に「俺と結婚してください!」と『牧凌太との結婚』を望みますが、それが春田さんにとっての幸せであるなら、友達でいなくてはならないなら春田さんは幸せになれません。何故牧君はそう思っているのか。『春田さんの幸せは俺と結婚すること』と何故牧君本人が知っているのか。
『春田創一の幸せは牧凌太との結婚である』と『牧凌太本人が知っている』方法は1つしかあり得ないんです。
最終話でのプロポーズは初めてじゃないんです。2回目なんです。
では1回目はいつであるのか。6話の「本当にいいんですか?相手が俺で」「いいよ、それは」がお互いに『結婚の相手』として話しているなら、話がとても自然に繋がります。
この前日には牧君が熱で倒れているため、もはや1回目のプロポーズは牧君を好きだと自覚した買い物デートのその日の夜しか無いんです。『春田さんのペース』が1年かかってようやく追い付いたどころか、好きだと自覚したその日のうちにプロポーズしているとかビックリです。マロに「どっちかっていうと向こうからの流れだったんだけど」と言いますが、どっちかっていうとも何も、視聴者から見た映像ではどう見ても向こうからの流れでしかないので、映像に無い部分でこっちからの流れもあったことになります。
ちなみにこの翌日に熱を出して倒れることから、風邪の原因はあれであると推測できる(詳しくは6/14の記事で)。この1回目のプロポーズ〜風邪の原因までの大きな出来事を、オンエアでは日にちが変わる形で丸ごとすっ飛ばしているのです。まさかあの夜にそんなことがあったなんて視聴者は普通予想できませんから、認識操作としてはとても見事な手法です。よってこの夜の出来事が『未公開シーン』として視聴者に隠されているもの。すでに撮影しているか物語上だけかは分かりませんが、視聴者が気付いて見せろと公式に要求しない限りは、永遠に世に出ないでしょうね。私は何度か問い合わせを送っていますが、多数決なら多くのファンにとっては『興味無いもの』でしょうし。ただ、風邪の原因が裸で寝て体を冷やしたこと(=初夜)であるなら、映像化できるんかこれ…。個人的にはノベライズでもいいけど。
買い物デートのその日の夜にプロポーズしているとなると、ケンタツと檸檬ちゃんの『結婚を前提にした交際会見』。春田さんの「俺と牧は付き合ってます!」も「俺と牧は(結婚を前提に)付き合ってます!」であると思われる。
……のですが。
どうも話がおかしいのです。
武川さんが春田家に押し掛けた時、
「何で否定したんだ?お前ら付き合ってるんだろ?」
「このまま本当に付き合って、春田さんは本当に幸せなのかなって思って」
と疑問に思っています。春田さんからプロポーズされたのだから、このまま付き合って春田さんは幸せなはずなんです。なのに何故牧君は疑問に思っているのか。
『本当に』って2回言うんですよね。この一連の部分では最も難関なんですが、「本当に付き合って」ということは、付き合っていることは本当ではない、ということになるのではないか。プロポーズしたことは本当だが、付き合っていることは本当ではない。つまり、
「俺と牧は結婚しました!」
が本当であるのを「付き合ってます!」と嘘を吐いてしまったことにより、周りからは『付き合っている』と思われてしまい、「ちょっと意味が分からない」と牧君は『付き合っていること』を否定した。
あとはこれを時系列順に並び直せばいいです。春田母の「ずーっと創一と友達でいてね」をベースかつスタート地点にしただけで、あとは日本語を正しく理解していくとこうなるのですが…。これが否定されるとしたら、日本語を理解できる人間が否定されることになるので、メチャクチャな世の中になりますよ…。映像も脚本も1つしか無いのに、実質的に2つの展開を同時に作り出すという計算され尽くした緻密な脚本で、とても驚きました。読むことはできても、趣味で小説書いてる程度の私にこんなすごいもの書けるわけがない。
ちなみに、ケンタツと檸檬ちゃんの結婚を前提にした交際会見。普通に見てたら何も気にならないと思います。1回目のプロポーズが買い物デートのその日の夜であるという仕掛けを解いた人なら、「じゃあ春田さんと牧君も結婚を前提にした交際宣言なのか」と高確率で引っ掛かると思います。実際、半月足止めされました。そもそもそれなりに難度高いですが、『仕掛けを解いた人向けのトラップを事前に仕掛けている』という時点で、かなり厳重なんですよね。こちらの一連の流れは「男同士でキスとかマジでねえ」とか言ってたあの春田さんが、牧君を好きだと自覚したその日のうちにプロポーズ・結婚して肉体関係の一線も越え、突然振られたのに1年後にもう1度プロポーズするという、春→牧の愛情が爆上がりするんですよ。「結婚ってさ、何?」と大きな問いを投げているのにその答えが無いままプロポーズするというのは、恋愛ドラマとしては首傾げる内容で正直言ってガッカリしたんですよ。しかし1年前にすでに結婚していて形の無い気分だけのもので良かったんだということが分かると、もう1度プロポーズするというのはとてもピュアだと高評価に変わりましたね。
ちずちゃんが「春田に告白していい?」って言ってきた時、春田さんはすでに牧君から見て『こっち側』に来ているんですね。「俺は大丈夫です、全然」って強がりでも何でもなく、本当に大丈夫なんです。ちずちゃんが振られて傷付くことは目に見えてるけど、ちずちゃんが望んだのは「自分がすっきりしたいだけ」なので、牧君としては複雑なんでしょうね…。ちずちゃんから呼び出しの電話が来た時、牧君がなんか企んだような顔してるんだけど、「春田さん、もうすぐ帰ってくると思います」ってちずちゃんのことを振ってすぐ帰ってくると確信してるんですよね。ちずちゃんを選ぶならすぐになんて帰ってこないから。
何で公式がこれを明かさないかっていったら、18年版って心の声とか乗るのって春田さんだけですからね。春田さんの目線で描かれたものなわけですが、この一連については牧君の目線なんですよ。視聴者目線で客観的に見ているだけで出てくるわけがない。牧君が本当に苦しんでいたのは、『友達』って言葉なんだと思う。友達として側にいてほしいけど、それ以上にはなれない。離れることも忘れることもしてはいけない。苦しかったと思うの。「嫌い」って言って離れることができる方がマシかもしれない。別に私のような異端者のことは信用しなくてもいいけど、牧君の気持ちは理解してあげてほしい。
私が多くのファンとは全く違うことを言うのは、『春田創一の目線で描かれたドラマを牧凌太の目線で見ているから』です。ラストも春田さんの目線で見ると、出ていってしまった牧君が帰ってきてくれて自分が出ていく時には牧君が家で待っていてくれるため(あの家留守になるのに、家の中の物が全部そのままなのはおそらく牧君が留守番するのでは)、幸福感が高く感じると思うんですよ。牧君の目線からだと、一緒にいたいって言った当の本人がいなくなって無人の家に帰らなければならない。同じことを望んでいるなら引く必要は無いので、牧君にとって幸せとは、武川さんの価値観(第2話参照)を真逆にした『結婚して一緒に暮らす』ということであるように思う。なのにあの終わり方はあまりにも残酷だと、ハッピーエンドと思えないんですよ。この解釈自体、誰も幸せにしないですからね。性的少数者を扱う作品でありながら、視聴者は多数派と少数派に分けられるんですよ。説明しても興味持って話を聞いてくれる人自体稀です。結局の所、多数派の幸せのために少数派は隠れて生きるべきなのがこのドラマの教えか?私が見ているのは牧君の目線で見ているものだから、相手の幸せのために自分が引かないことを牧君に描いたのなら、私も引くつもりは無いんです。
『映像も脚本も1つしか無いのに2つの展開を同時に作り出す』なんて神業、気付いた人間が黙っていたら、気付いていない多くの人には伝わらないんですよ。だいぶ心折られてるけど、私が驚いた「何このドラマすごい!」をいずれ誰かとちゃんと共有したいから、とりあえず個人ブログでちまちま書きます。