引き続き裏です。閲覧にはご注意下さい。長いです。









ユーリにとって、その間はまるで永遠とも言える程の長さに思えた。

ようやく管を引き抜かれた時は半ば放心状態で、視線を宙に彷徨せながら、『ようやく終わった』と思うと同時に『今度は何をされるのか』という新たな恐怖に、情けなくも身体の震えが止まらなかった。

「ユーリ、震えてるね…大丈夫、もう痛くはないから」

フレンもベッドに上がり、ユーリを背後から抱き締める。
前方に投げ出されていた足首を掴んで膝を折り曲げ、足先が身体の後ろに来るようにされると股間が大きく曝け出された。

フレンがユーリの髪に顔を埋めてうなじに口づけをすると、ユーリの肩が大きく跳ねる。

「っひ…!」

何度も口づけを繰り返しながらフレンの手がユーリの身体を弄る。
左手が乳首を捏ね回し、右手が性器に触れ、堪らずユーリは声を上げた。

「いいかげんに、しやがれ……!!」

未だ震えの収まらない唇で精一杯低い声を作ってフレンを振り返り、睨みつけるがフレンは全く意に介さず、手の動きも止まらない。

「どうしてだい?…少しは気持ち良くないか?」

「んなワケ、ねえだろっ!!離せ……ッ!」

気持ち良いどころか、悪寒しか感じられない。

「そうか…やっぱり、こっちもちゃんと治療しないと駄目なんだな」

「な…に?」

「不能でもちゃんと感じられるから、大丈夫だよ」

そういえばそんな勘違いをされていた気がする。
今さらながらにユーリは思い出した。
自分は不能ではなくて、異常な状況下で快感を得るような変態じみた趣味嗜好の持ち主ではないだけなのだが、フレンにはそのような考えが全くないようだ。

最も、こんなことをするあたり、既にまともな考えの持ち主ではないのかもしれない。
ともかく、これ以上不名誉な勘違いをされたままではたまらない。

「勝手なこと言ってんじゃねえ!何するつもりか知らねぇが、そんな必要ねえってんだよ!!」

「認めたくないのはわかるけど、いろいろ困るだろう」

「だから、違う……!?」

ユーリの性器を弄っていた手が、更に奥の窄まりに触れた。
先程の行為の際に使われたゼリーで濡れているそこをフレンの指がぐりぐりと刺激する。

「ひあ!?やっ…め、どこ、さわっ……!!」

「ん…、ちょっとこっちからじゃやりにくいな」

「人の、はなし、を…っんぐ!?」

フレンがユーリの背中を押して身体を折り曲げさせた。
後ろ手に縛られたまま上半身をシーツに俯せにされ、膝を折り曲げたまま尻だけを少し持ち上げた格好にされ、ユーリは先程とは違う羞恥で死にそうな気分だった。
これでは後ろがフレンにまる見えになってしまう。

「少し冷たいかもしれないけど、すぐ慣れるから」

「なに…ッひ、ゃああぁ!!」

フレンがゼリーを後孔に塗りつける。しかしその感触よりも同時に受けたもうひとつの刺激のほうが強烈で、ユーリから悲鳴じみた声が上がった。

「いッ、や…!やめ、んんッ!!」

「痛くないだろう?」

「う、うぁ、あァ…!」

ゼリーを少しずつ垂らしながら、フレンはユーリの後孔に指を差し入れていた。
少しずつ押し進められるその感触は確かに痛みこそ感じなかったが、強烈な異物感となってユーリに襲い掛かる。

そのようなところを他人に触れられるのも、ましてや指を突っ込まれるなど、全て初めてのことだった。
そこまでされて、ユーリはある考えに思い至った。

(まさかこいつ、オレのこと、ヤる気か…!?)

全身から冷や汗が噴き出した。
男同士の場合にどうするかは知っているが、自分がされるなど考えたこともない。

何の治療だか知らないが、全く関係ないではないか。

「てめ…ッ、何が治療だ!!っん、やめろ、って!」

「どうして?」

フレンの指が、ぐり、と中で動いた。いつの間にか根本まで入れられた指は、何かを探るように内壁を擦り、捏ね回している。

「ぃああ!やっ…め、動かす、なあッ!!」

「この辺りの筈なんだけど…」

「なにが………ッうあ!?」

ユーリの身体が一瞬引き攣る。
フレンの指先が何処かに触れたと思ったら、下腹部に強烈な刺激が走ったのだ。

刺激の名前は、『快感』。

(嘘、だろ……!)

ユーリは愕然とした。
こんな事をされて感じる自分が信じられなかった。
そんなユーリの様子に、フレンは嬉しそうだ。

「今のところ、良かったんだな」

「な…違っ……」

「…ココ、かな」

一瞬触れただけの先程とは違い、明らかに一点を刺激されて、ユーリは大きく仰け反り悲鳴を上げた。

その悲鳴には、甘い響きが含まれている。

「ひぅ、あッんああぁッ!!」

「あ…ちゃんと勃ってきたよ」

「や……ぁ、うそ、だ…!」

「嘘じゃない」

信じたくなかったが、フレンがそこに触れる度に下腹部に熱が集まって行くのをユーリは自覚した。

「うあっ!?やめ、ッさわんな……ッああ!!」

フレンが直接性器に触れて扱き始めて、またしても声が出てしまう。

「あれ、結構元気だね…。不能だなんて、僕が勝手に勘違いしたのかな」

「うっ、く…、んあ、ああ!」

内側を刺激していたフレンの指が止まった。

勘違いだとわかったならさっさと指を抜け、とユーリが思った瞬間、

「ひィッ!?」

例の一点をフレンの指が強く押し潰すように擦りつけた。
その途端、強烈な快感が押し寄せたと思う間もなくユーリは絶頂を迎えてしまった。


「う、ァあああぁ――ッッ!!」


フレンに握られたままの自分自身がどくどくと激しく脈を打ち、自らの下腹に熱い飛沫がかかるのを感じながら、あまりにも唐突に訪れた絶頂にユーリは混乱していた。

(なんで…こんな、いきなり……!)

乱れた髪を頬に張り付けて、苦しげに息をするユーリを見つめるフレンの表情はどこか満足げだ。

「気持ち良かっただろう?」

シーツに俯せるユーリの鼻先に顔を寄せてフレンが尋ねた。

頷いてやるつもりはない。
何がどうなったのかを知りたいとは思う。
だがそれを聞くのはプライドが許さず、ユーリはただ唇を噛んで目の前の男を鋭く睨んだ。

「ふふ、涙目だよ…かわいいね」

「…っ、てめえ…!」

「さっきのはね、前立腺っていう場所を刺激したんだ」

真顔で説明されてユーリは気勢を削がれた。

「歳をとって勃ちにくくなったりした人でも、そこを刺激されたらあっと言う間に達してしまうこともあるそうだよ」

「は……」

「つまり、回春治療ってこと。完全な勃起不全に効果があるかは人によるみたいだけど」

「おまえ…、フザけんのも大概にしろよ……!」

あくまでも『治療』だと言うつもりか。
さすがにここまで来ると、ユーリもフレンがこれですんなり自分を解放するとは思えなかった。
あまり考えたくないが、恐らく予想通りだろう。

脚はまだ感覚が完全には戻っていない。
腕も縛られたままだ。
どうせ抵抗できないなら、せめて覚悟を決めたかった。
何をされるかわからないまま翻弄されるのはたくさんだ、と思ったからだ。

「…何を考えてるんだ?ユーリ」

「別に、なにも」

真っすぐに見つめ返すユーリの様子に、フレンも何か感じ取ったらしい。

「なんだか…面白くないな」

「ふん…、治療とやら、に…面白いとか面白くないとか、あんのかよっ?」

「…そうだね。じゃあ、君の治療は終わりだ。今度は…」

言いながらフレンはユーリの腕を掴んで身体を起こし、再び背中から抱きつく


「僕の『癒し』に協力してもらえるかな」

「…う…!」

耳の中に舌を入れられ、ユーリが身をよじる。

「ユーリ」

「なんっ…だ、よ!」

「力抜いて」

「え……ッッあ!?」

後孔に再び指が当たる感触がしたと思ったら、すぐに例の異物感が襲って来た。
しかし、先程とは比べものにならない痛みを伴っていて、ユーリは声を堪えることができなかった。

「ぐ、ぅ……ッあぁ!!」

「さすがに三本だとキツいかな」

「あッぐ、うぅあ!!は…ッん、あああ!!」

多少ゼリーが残ってはいたが、いきなり三本もの指を埋め込まれ、容赦なく奥へ押し入れられて痛みのあまり脂汗が額に噴き出す。
フレンの膝の上で仰け反りながら、ユーリは悔しくてたまらなかった。

「ちッ…く、しょ……!」

「なんだか余裕みたいだったから」

三本の指でばらばらに内側を蹂躙されるうち、痛みと共にまたしても快感が沸き上がる。
自分から甘ったるい声が出る度に恥ずかしくて仕方ないが、抑えることができなかった。

(くそ、情けねぇ…)

心の準備はしたつもりだったが、甘かったようだ。
予想以上の刺激に、次第に頭がぼやけてくる。

「ユーリ、ほら…ココが良いんだよね」

「ふぅッ、ん!あ、はあぁ!」

「もうイきそう?」

「あ、や、んあぁッ!やぁ、あああぁッッ!!!」

再び前立腺を刺激されて、呆気なく達してしまう。
白濁が跳ねて、ユーリの顔を汚した。

「う、ひァあ……」

ぞろりとした感覚に身体が震える。
指が引き抜かれたのだ。
と、すぐさま熱いものが押し付けられ、ユーリの腰が大きく跳ねる。

「あ、待っ…!や、やめッ!!」

いつの間にか露わにされていたフレンの性器が侵入して来る予兆に、今日何度目か知れない恐怖を感じてユーリは思わず叫んでいた。

「やめろッ!も…、やだ、って!!」

「ん…っ!」

指で拡げられた入口に先端が押し当てられた次の瞬間、フレンがユーリの腰を力一杯押し下げた。

「ひ、ィあああァああッッ!?」

一息で根本まで突き入れられたユーリの身体が激しく痙攣し、喉が大きく反らされて叫び声が上がる。
フレンがユーリの顎を掴んで顔を後ろに傾けさせ、唇を重ねた。

「んんッ、ふう、ッン!!」
「ふ…っ、はぁ…ユーリ…!」

唇を離したフレンが耳元で呟いた。



「僕はまだ、君にとって他人なのかな…」





激しく突き上げられ、幾度も中で出され、意識が朦朧とする中でユーリはフレンの言葉を聞いた気がした。

君は僕の半身だ

なんでもしてあげる


―――君には僕だけなんだから






ーーーーー
終わり