続きです。
裏ですので閲覧にはご注意下さい。





もう一度ユーリを探して校内に戻ったフレンだったが、今度はすぐにユーリを見つける事ができた。
アシェットと共にいるのを見た、と教えてくれた生徒がいたので、もしかしたらという思いで屋台の並ぶ辺りを見に行けば、困り顔で佇むユーリの姿があった。
すぐ隣にはアシェットがいるが、何より二人の周囲の状況に呆れて脱力する。


どういう訳だか、二人は複数の女性に囲まれていた。
服装からすると一般客や他校の生徒まで様々なようだが、皆一様にはしゃいだ様子でユーリにしきりに話し掛けている。隣に立っているアシェットには見向きもせず、徐々に輪の外へと押し出されて行くアシェットに何か哀れなものを感じるものの、それもほんの一瞬で怒りへと変わった。

ずんずんと大股で近付いて来るフレンの姿に気付いたユーリは慌てて一歩下がるが背後の人垣(と言う程でもないが)に阻まれて動けず、半ば諦めたように肩を竦めてフレンを見返し『お手上げ』のポーズを取る。その手にはしっかりとクレープが握られていた。すぐ隣の屋台で買ったのだろうか。


「ユーリ!!」


周囲の視線が集中するのも気にせずに鋭く名前を呼ぶと、いよいようんざりとした様子でユーリがそれに応える。

「……デカい声で呼ばなくたって聞こえてるっての…」

「何してるんだ、こんなところで!」

「…屋台見に来たら駄目なのかよ」

「…っ!そうは言ってない!君も自分のところの役割があるだろ!殆ど教室にいなかったらしいじゃないか!!」

「ちょ、おいフレン、押さえて押さえて!」

フレンの剣幕に圧されて一人、また一人とユーリの周りから去って行く女性達に目もくれない二人とは対象的に、アシェットだけがおろおろと視線を彷徨わせていたが、それでも二人を仲裁しようとするあたりに彼の人の好さが窺える。しかしそれは、言い換えると『貧乏クジを引きやすい』という事で。

「……なんで君がユーリと一緒にいるんだ、アシェット」

鋭く睨まれて固まるアシェットの隣で、ユーリが深々と重い息を吐いていた。

「いや、あの…まあ、ちょっと抜けよう、って言っ」

「ユーリ、戻るよ」

言うが早いかユーリの腕を取って引き摺るようにしながらその場を去ろうとするフレンに、何故かユーリは抵抗らしい抵抗をしない。

食べかけのクレープを押し付けられて驚くアシェットにひらひらと手を振って見せるユーリの姿に、アシェットだけではなく周りにいた生徒らも意外、といった様子だった。




屋台の並ぶ校庭を抜け、校舎脇までやって来ると人影もだいぶ少ない。

「…いい加減離せよ」

「………………」

「悪かったって!」

「なんの事?何に対しての謝罪なんだ、それ」

「…昼メシの約束してたのに待ってなかったからな」

「それだけ?」

腕を掴んだままでじっと睨むフレンに、ユーリは言葉が返せない。

「…そんなに思い当たる事があるのか?」

「は!?別にそんなんじゃ……!!」

「……」

腕を掴む力が強くなる。無言でまた歩き出したフレンに焦ったのはユーリだ。
このパターンはまずい。

「おい、離せよ!悪かったってば!またどっか連れ込む気じゃねえだろうな!?」

思わず、というか、つい口から出た言葉にフレンが足を止めた。ゆっくりと振り返ったその笑顔に、ユーリは背筋が凍りつく思いがした。

「…『どこか』?どこかって、何処だい?僕はただ、普通に僕らのクラスに戻って今からでも昼ご飯を食べようと思ってたんだけど?」

「んなっ………!!」

「ユーリ、何を考えてたんだ?」

何、と聞かれても答えられない。というか、言いたくない。ちょうど、少し前にこれまでのフレンの『所業』を思い返していたので、つい口をついて出てしまったのだ。

「なんでもねえよ!き、教室戻ろうぜ!」

「………やめた」

「な、ん」

「そういうの、期待してるんだ?だったら………」

「う、むぅ!?」

素早く辺りを確認したフレンに腕を引かれてキスをされ、全身の血液が冷えるような錯覚に陥る。
ここはまだ校庭の片隅で、人気がないとは言え遮る物もない。

「…………ッッ!!」

がしゃん、という音と共にそのまま背後の壁へ押し付けられ、後頭部をぶつけた時に上がったコンクリートの壁では有り得ないほどやかましい音に驚いているユーリを更に『壁』と自分の身体で挟み込むようにしながら、唇を離したフレンがズボンのポケットから何かを取り出した。
ちゃりん、と軽い音を立てた何かが視界の端に一瞬だけ映るが、それが何であるかは判らなかった。

「お、い…!」

「ユーリ、動くな」

「は……」

フレンは身体を密着させ、ユーリの肩に顔を乗せて何やら下のほうでごそごそと手を動かしている。
まさか本当にこのまま、と思った瞬間に腰のあたりから軽い音が響き、同時に『壁』が勢いよく左右に開かれた。支えを失ったユーリが背中から倒れ込むのをフレンは助けるでもなく、尻餅をついたユーリが顔を上げた時に見たのは後ろ手に扉を閉めて自分を見下ろすフレンの姿だった。


薄暗いその場所を見回すと、畳んで積み重ねられたマットレスやパイロン、ハードル等の他、跳び箱やライン引き等が置いてある。
一瞬で場所を把握し、ユーリが苦虫を噛み潰したような顔をした。

ここは体育用具室だ。
壁だと思っていたのは入り口の扉だった訳だが、それにしてもまたベタな場所に、と思わざるを得ない。フレンの背中だけ見ていたせいで、周りなど見えていなかった。


先程と同じ軽い音が響く。後ろ手のまま、どうやらフレンが鍵を掛けたようだ。


「ユーリ、大丈夫か?」

「おまえ…支えもしなかったくせによく言うぜ…」

「ああ、ごめん。ほら、立てるかい?」

「痛って…!」

フレンが手を伸ばしてユーリの腕を取り、半ば無理矢理立たせる。ほぼ同時に、ユーリの口から小さな悲鳴が上がった。


「う、わッッ!!」

ぐるっと身体を回転させられて、思わず抱き付いたのはさっきも見えた跳び箱だ。固いマットに鼻を擦り、少し黴臭い。間髪を入れずに伸し掛かられて呻くユーリの耳元でフレンが囁いた。

「…お約束すぎて、何だか笑ってしまうな」

「てめ……!何で鍵なんか持ってんだよ!!…あ、ちょっ…、触んな!!」

「見回りをするのに必要だから、今日だけスペアを預かってるんだ」

「ふざけ…ッ、やめ、脱がすな!!」

跳び箱にユーリの上半身を押し付け、体重を掛けて押さえ込む。左手で腰を抱えるようにしながら右手でベルトを抜き去り、ユーリのスラックスと下着を器用に下ろすと曝された尻をするりと撫で上げた。
ひ、と小さく声を漏らすユーリの耳の中に舌を差し入れると更に身体を震わせる。
固く瞳を閉じた表情を見つめていると、身体の芯が熱を持つのをフレンは感じていた。

「…ユーリが悪いんだ、いつも…」

いつも、求めているのは自分だけなのか、と思ってしまう。そうではないとわかっていても、どうしても。
少しは罪悪感があるのか、今日のユーリは大人しい。
…それとも、抵抗しなければすぐに事が済むと思ってのことか。

「うァ………ッく」

外気に曝されて少し冷たくなった尻を掴んで掌全体にに力を込める。中心部分に触れた指先を押し込もうとして、ユーリの苦しげな声に動きを止めた。

ユーリと身体を合わせるのは久しぶりだ。本来、性行為に使う場所ではない『そこ』はきつく閉じていて、このままではフレンを受け入れるのは難しいだろう。
だがそれも、ここに触れる事が出来るのが自分だけだと思えば喩えようのない悦びになる。それでも敢えて意地悪く囁けば、ユーリは一層身体を固くして悔しそうにマットに顔を埋めて呻いた。


「ユーリが、抱かせてくれないから」

再び指を動かし、押し拡げるように指の腹で丹念に捏ね回す。

「んンッ…!」

「…時間を掛けないと、入れるのは無理みたいだ」

「あ、…ッ、ぐ、ぅ……!!」

指先が少しだけ入った。だが、そこからなかなか進まない。

腰に回していた腕をずらしてユーリの腹を撫で、更にその下で緩く頭を擡げている性器に触れると、それだけでユーリの全身が大きく震えた。

「あれ…ユーリ、感じてるのか?」

「あ、ア!!……ッッふ…!」

「…濡れて来たよ」

「っく……!!」

いちいち言うな、と言いたいのだろう。マットに埋めた顔を僅かに浮かせて懸命にフレンを見ようとする瞳には涙が浮かんでいる。

いつもユーリは行為の始めには声を抑えようと歯を食いしばり、きつく目を閉じるが、毎回その表情がどれだけこちらの加虐心を煽るか理解しているのだろうか、と思う。
別に、肉体的に酷い事をしようとは思わない。だが、フレンはその表情を崩した『先』を見るのが堪らなく好きだ。
それでも少し手つきが乱暴になるのは仕方ない。何せ、今日は約束をすっぽかされそうになった挙げ句、自分以外の誰か(よく知ったクラスメイトではあるが)と共にいるところを見つけてしまった。

「一緒に回るの、諦めてたんだ。なのに…」

「はッあ、ふぅ…ッッん、だ…っから、悪かっ……!?あ、あァッ!!」

後ろに入れた指を少しずつ押し進めながら、同時に前も刺激する。
溢れ出す先走りを絡めて上下に動かし、時折濡れた掌で後ろを撫で付けて湿り気を与えてはゆっくりと撫で付ける事を繰り返していくと、次第に柔らかくなる肉の感触を確かめつつ更に奥まで侵入させた指がとうとう根本まで埋まった。

「…やっと、一本だね」

「ぅく…う、おまえ、なんなんだよいちいち……っ!!」

「長いことしてないと、どれだけ大変か知ってもらおうかと思って」

「な、長いっ…て、たかが一ヶ月てい、ど……あ、あア!!」

ユーリが上体を大きく反らせ、高い声を上げた。しがみついていた跳び箱が大きな音を立て、辛うじて崩れるのは避けたが不安定な状態で軋む音が聞こえる。

全て埋めた内側で、人差し指の先だけを曲げてぐにぐにと押す。ユーリが声を上げたのは、一度『イイ場所』に当たったからだ。
確かめるようにもう一度軽く押すと、ユーリが小さく息を詰める声を漏らした。

「っ……!う、く!!」

「ユーリは、ここがいいんだよな…」

「んぅ、ッ!んなの、オレだけ、じゃ……!!ッア…!!」

「そう?」

「くっ……そ、だっ…たら、おまえにもし、てや……ッッんンああぁ!!」

「…僕は遠慮するよ」

『イイ場所』であるところ、つまりユーリの前立腺を強く押す。面白いほどに身体を跳ねさせ、嬌声を上げるユーリに覆い被さるようにしながら耐えず刺激を与え続けるフレンだったが、頬を紅潮させ、額に汗を浮かべてしきりに喘ぐユーリを見て少しだけ考えてみた。

ユーリの言う通り、何もそこはユーリだけが感じるという場所ではない。およそ殆どの男性にとって、最も強烈な快楽を得られる場所と言っていいだろう。
それでもやはり、排泄器官に直接指やらを入れられるという経験はなかなかあるものではない。フレンも、興味はあるが自分がされたいとは思えなかった。

何より、ユーリの表情を見ていると『自分もあんなふうになるんだろうか』と思ってしまう。以前、ユーリが攻め手側まがいのセックスをした事があったが、色々と集中できなかった記憶しかない。快楽と羞恥に耐えるユーリを見るのは好きだが、その逆を考えると微妙な気分になる。


「僕は、気持ち良さそうにしてるユーリを見たいんだ。だから…」

拡げた後孔に指を二本増やした。まだかなりきつい。しかし、これが無理ならとても自分自身のものを入れるなどできないので、ユーリにも慣れてもらうしかない。

「う、あ、ア……ッッ!!」

「余計なこと、考えなくていいよ」

「んあァあ!っや、あ、だ……ッッ!!」

ぐちぐちと粘つく音を立てるようになった場所を指で掻き混ぜ、例の場所を強く擦り上げた瞬間、前を握っていた掌に脈動を感じてフレンはその先端を包むように指を滑らせた。

薄暗い体育用具室の中に、くぐもった悲鳴が上がる。
声を聞かれるのを恐れたユーリが、顔をマットに強く押し当てて苦しげに息を吐いていた。


ーーーーー
続く