最終話です。裏ですので閲覧にはご注意下さい。






「んんッ、あ、っは……あァ…ッッ!」

「は…っ、う、く……!!」

とにかく解放したい。
その一心だった。


(信じ、らんねえ……)


いきなりフレンがこのような事をしてきた理由は、まだ完全には理解出来ていない。
何故こんな状況になっているのか。そして自分はどうしてこんな事を受け入れているのか。諸々全てが信じられなかった。

だが、今はこの欲望の処理をするほうが先だった。
まさか同じ男であるフレンにキスされてあちこち好きに舐め回された挙げ句にしっかり勃たせてしまうなんて、と思うが、もうどうしようもない。

ズボンの前を寛げて向かい合わせに座り、脚を絡ませて互いの性器を握る姿が端から見てどうなのかなど、考えたくもなかった。
ただ吐き出す為に刺激を与え続けている。自分で処理するのと決定的に違うのは、勿論フレンが自分のものに触れている、という事だ。


「ああッッ、あ、やべ…っ、あ、っは!!」

「ん…、ユーリ、ちゃんと僕のも」

「っせ……!!」

自分でやるのとは、当然だが感覚が違う。気持ち良いところなんて自分自身が一番よく分かっている筈なのに、どういう訳かフレンにされているほうが自分でするより何倍もいいのだ。

自然、フレンのものを刺激するユーリの手の動きは鈍りがちになり、殆ど添えるだけとなっている。
フレンが責めを止めないので、一方的にユーリが喘がされている格好になっていた。


「あ、あ、っん、も、イ…っく、う…!!」

「…ユーリ…!」

「うア…ッッ、は、あァッ、んうああァァ!!!」


ユーリが前屈みになってぶるりと身体を震わせた。
次の瞬間、堪えられずに吐き出された精が主にユーリの腹に叩き付けられ、とろりと垂れてゆくさまを間近に見てフレンが喉を鳴らす。

脚を大きく広げ、後ろ手に手をついて何とかといった様子で身体を支えて浅く荒い呼吸を繰り返すユーリの姿はあまりに淫靡で煽情的すぎて言葉も出ない。

代わりに渇いた吐息が漏れたのが聞こえたのか、ユーリがのろのろと顔を上げてフレンを見た。
上気した頬や汗の粒が浮かぶ額に張り付く髪がはらりと落ち、フレンは堪らずユーリを押し倒していた。





「う……く、っぐ……!!」

フレンの指を受け入れながら、ユーリが苦しげに呻く。まさかここまでされると思っていなかったが、抵抗する気が起きなかった。
だが、痛みで身体は引き攣り、先程までとは違う脂汗が額に滲む。


「ッッ……う、んっつ…う!」

「っ…!ユーリ、ち…力、抜いて」

「っあ、あ、あ、っはあッッ!!」


少しずつ押し進められる指に、有り得ないほどの異物感を感じてユーリは太股を戦慄かせた。
自分の放った精液を潤滑剤代わりに塗られたせいで、フレンが指を動かす度にそこはぐちぐちと粘っこい音を立てる。
人差し指を根本まで埋め込まれた後は早かった。





「あああッッ、も、そこ、やめ、あ、あアッ、ッああ!!」

「また、イきそう…?」

「ひィあ、あッ!!」

一度見付けてから、フレンは執拗に同じ箇所を責め続けていた。ユーリの中に指を埋めた直後はあまりのキツさにそれ以上の抜き差しを躊躇うほどで、ユーリも辛そうなので指先だけを恐る恐る内側で動かした。
根本はちぎれそうなぐらいの締め付けのせいで痛みすら覚える。ユーリが腰を揺らした拍子に思わず内側で指先を曲げた、その時だった。


「ひあああァッッ!!!?」

「っ、ゆ、ユーリ?」

「ぃあ、ッッ、や、やめッ、そこ、や、あぁあ!!!」

「……そこ、……?」

注意深く内側を指先で確かめるようにすると、先程指先を曲げた場所に他とは違う感触があった。そこは丁度ユーリの性器の根本のあたりだろうか。少し強く指先で擦るとユーリの口から一際大きな声が上がった。

間違いない。『ここ』が、ユーリのイイ場所だ。
そう思ってぐりぐりと弄ると呆気ないほど簡単にユーリが達してしまったので、更に吐き出されたばかりの精液を塗り込んで前後に指を動かしてみる。
ぐちゅ、と濁った音を立て、抵抗なく出し入れ出来るのを確認して、フレンはどこか優越感のようなものを感じていた。

大きく広げた脚の間に身体を割り入れ、少し速度を上げて指を動かす。前後だけでなく時折そこを拡げるようにぐるりとなぞり、また一点を刺激して跳ね上がる腰を自分の身体で押さえ付けては指でユーリを犯し続けた。

加減などわからない。
だが、フレンもとっくに我慢の限界を越えていた。まだ一度も吐き出していない熱が蟠ってどうにかなりそうだった。


もう、繋がりたい。


ユーリの中に自分自身を埋め込んで一つになりたい。
どんな声で、仕種で応えるのか考えたら背中に甘い痺れが走った。
それが妄想の持たらした感覚的なものだけでないことを知り、フレンの背に腕を回してしがみつくようにしながら愛撫に喘ぐユーリにキスを繰り返す。
とろんと濡れる薄紫色の瞳を見つめながら、指を引き抜いた場所に自分自身を宛がうと、またしても背中にぴりぴりと痺れが走る。

ユーリの爪が突き立てられるの感じながら、ぐっ、と力を込めてその場所へと侵入した。


「うあ、っぐぅッッ!!?」

「う………く!!」

「ふッう、んんっ、あ、あああァああ!!」

「うッあ、なん……、き、つ……!」

想像以上のキツさだった。
そして、それ以上に熱い。段階的に腰を進めて奥まで埋め込むその動きが強烈な刺激となってフレンに襲い掛かり、全てを押し込んだと同時に達してしまった。

「は、ああ!っな、あ、あァッッんんん!!?」

「っちょ、そんなに締めるな………!!」

「な…に、言っ……ッあ!?」

どくどくと中に流し込まれる感覚に、思わず固く閉じていた瞳を開けたユーリの目には、歯を食い縛って快楽に耐えるフレンの表情が映し出された。
今まで見た事もないフレンの悩ましげな表情に感じ入るユーリだったが、フレンに腰を掴み直されて顔色を変えた。
フレンはまだ、ユーリの中に自分自身を埋め込んだまま動かない。
まさか、と思った瞬間に勢い良く突き上げられて、ユーリは思い切り上体を仰け反らせていた。



「うああァッッ!!んァッ、ああッッ!」

痛みと快感がごちゃ混ぜで、何がなんだかよく分からなくなっている。
穿たれ突き上げられる度にまるで女のような声を上げて髪を振り乱しているのが自分だなんて、と頭の片隅に僅かに残る理性で感じていた。


熱くて朦朧とする。


ねっとりと纏わり付く湿り気を帯びた外気も、腰を掴むフレンの掌も、何よりも熱の塊を捩込まれて繋がっている場所が、全てが熱くて堪らない。

その熱の塊が、大きく脈を打って一瞬動きを止めた。


「ユーリ、ゆ……ぅ、り……!!」

「はっ…、アッッん、あ、やッ、ああァ、っ――――!!」


同時に熱を放って、フレンがユーリの上にぐったりと身体を投げ出した。
ぜいぜいと整わない呼吸を二人で繰り返しながら、暫くの間折り重なって抱き締め合っていたのだった。








「……気持ち悪ぃ」

「うん……」

「ベタベタする」

「…そうだね」

「あちこち痛え」

「………ごめん」


落ち着いた頃には既に日も暮れていた。
まだ起き上がる事の出来ないユーリの頭を太股に乗せて髪を撫で、今さらながらにとんでもない事をしたな、とフレンは考えていた。ユーリが怠そうに口を開いて、フレンがユーリへと視線を落とす。


「……なあ」

「ん?何だい」

「何でこういうこと、オレにしようと思ったんだ?」

「何でって……」


頭の中で様々な光景と言葉がぐるぐると駆け巡る。
言いたい事は山のようにあったが、大前提としてこれだけは言っておかなければ、ということが一つだけあった。



「君のこと、好きだから…」



ふん、と小さく鼻を鳴らすのが聞こえた。表情は見えない。

ユーリは?と聞いても答えは返って来なかったが、ユーリが身じろぎした拍子に覗いた耳は真っ赤になっていた。




ユーリの気持ちは、これからゆっくり確認しよう。

そう思って頬を撫でたらすぐにその手を払われてしまい、フレンは苦笑するしかなかった。