大変申し訳ございませんでした

昨日の日記に書いた内容で、気分を害された方がいらっしゃったのでその部分を削除いたしました。

ゲームをしたことがない人の中にも、劇場版を見たりしてヴェスペリアのファンの方がたくさんいるんだな、すごいな、ということを単純に言いたかっただけだったのですが、確かにあれでは「ゲームしてない人がファンになるのはおかしい」と言っているように取られても仕方ありません。

本当に申し訳ありませんでした。

更新も停滞している状態で、わざわざ日記まで読んで下さっているというのに...。

決してそのようなつもりではなかったのですが、大変失礼致しました。お詫び申し上げます。


ただ、願わくば是非ゲームをプレイしてほしいなあ、と。ゲームそのものには興味がないという方もいらっしゃるようなのですが(私が驚いたのはむしろこの部分で)そうすればより、作品やキャラクターに対する愛情というか愛着を共有できるんじゃないかな、と思っています!
プレイしたくてもできない環境の方もいらっしゃるかと思いますが、いつかプレイする機会が訪れれば、と。

どうも私は、自分がゲームをしないとその作品というかキャラにハマったりすることがないせいもあって漠然と皆さんゲームをプレイしているものだと思っていたんですよね。

ところがそうではない人も多いということを今更ながらに知り、素直に驚いたのです。
その方達の話を聞いて、それだけキャラクターや世界観などが魅力的だったんだろうな、と思いました。

もう3年も経ってるのに、すごいですよね!
最近ファンになったという方もまだまだいらっしゃるし、ほんとにすごいなあ、と。
こういう活動をするようになったという意味では私もまだまだなわけですが。

だからこそ、というわけではありませんが、あまりキャラ人気だけを全面的に押し出した売り方ばかりされるとなあ...と...まあ、どこもそうなんですが...。
嬉しい反面、必要以上に叩かれたりキャラの悪口を目にしたりするのが切ないんですね。
人気があるから全面に押し出すわけですが、そうすると必然的にユーリの悪口が目につくわけで。気にして落ち込むまでは行きませんが、できればあまり見たくありませんしね。


それはともかく、コメントくださった方、他にも同様に思われた方には本当に申し訳ないことを致しました。
ゲームをしていないのが悪いとか、そういうことでは決してありませんので!!


ただ、これだけは理解して頂きたいのです。


元々の作品がゲームであり、私はそれをプレイした上で原作の内容を踏まえた発言をし、またそれを創作に取り入れています。

ですので、未プレイであるが故に不明な部分というのがあったとしても、それについては「ごめんなさい」と言うほかありません。
例えば、人名地名がよくわからない、などですね。聞いて頂ければお答えはできると思います、それはもう鬱陶しいぐらいに詳しく!

最後に一つだけ。

個人の趣味でやっているこのような場所に足を運んで頂き、またコメント下さる方がいるということを、私は本当にありがたいと思っています。

今回気分を害された方には謝っても謝り足りない気がしますが、今後はもっとよく考えてから文章にしようと思います。
個人ブログの日記ですので個人的な考えが溢れてはいるんですが、今回はちょっと、そういうこととは違うような気がしたので一筆とらせて頂きました。

だらだら長くなりましたが、お読み頂きありがとうございました。

SWEET&BITTER LIFE・8(拍手文)

「えっと、次の休みは……ああ、駄目か…この人との付き合いは外せないな…」

「おい、フレン」

「うーん、そうするとかなり先に…あ、でもこの日なら午前中だけで後は空いてるか」

「おいってば!勝手に決めんな!!」


手帳をぱらぱらとめくりながら休みの予定を確認していた僕は、ユーリが拳をテーブルに叩きつける音に顔を上げた。

「どうしたんだ?勝手になんか決めないよ。先に僕のスケジュールを教えておこうと思って」

「おまえの?何でだよ」

「君のところは不定休だろう?」

ユーリがどういった都合で店休を決めてるのか分からないけど、僕のほうから都合を合わせるのは難しい。
かなり先まで予定は入ってるし、相手先の都合があるからこちらからキャンセルする訳にいかない事のほうが多いんだ。

だからとりあえず先に僕の休みをユーリに教えて、もしユーリの店がその日を店休にする事に問題がなければそうしてくれたほうがいいんじゃないか。

「どうしても都合が合わなければ仕方ないけど、これが一番確実なんじゃないかな」

「そうかあ?そんなの、おまえのほうに予定が入ったらパアじゃんか」

「まあそうだけど…もしユーリが僕に休みを合わせてくれたら、そこには予定を入れないようにするよ。余程の事じゃない限り、先約がある、って断ればいいんだし」

「うーん…そこまでして、ってのも……って、違う!!」

再びユーリがテーブルを叩く。さっきより少し強い調子に、僕の前…ユーリの後ろに座る女の子がちらちらとこちらを気にしている。

…思い反してみると、かなり騒がしいよな、僕達…いい年して。

「ユーリ、ちょっと静かにしようよ」

「…あのな、オレはまだおまえと今後もどっか出掛けるなんて一言も言ってねえぞ」

「でも、こういう所に来るのが楽しみなんだろう?一人じゃ来にくい、って言ってたじゃないか」

う、と小さく唸ってユーリが拳を引く。よっぽど好きなんだな、甘いもの。

「…そうだけどさ、おまえはどうなんだ」

「僕?」

「もともと今日だって、無理矢理付き合わしたようなもんだろ」

「そうでもないけど」

「嘘つけよ。甘いもんが大して好きでもない上に、女ばっかの店だ。入る時だって嫌そうだったじゃねえか」

「……一応、気付いてたんだね」

この手の店に、男同士でしかもプライベートでとか、なかなか来るものじゃない。確かに入る時はかなり抵抗があった。

「まあ…最初は恥ずかしかったけど、もう慣れたよ。でもさすがに、僕も一人じゃ入れないな。だから君に付き合ってあげるよ。そうすれば君だって気にしなくて済むんだろう?」

「…なんで上から目線なんだよ」

ユーリが憮然とする。上から…とか、そういうつもりは別にないけど…。
…そうか、自分から僕を誘って付き合わすのはいいけど、逆は何となく嫌なんだな、きっと。

「ユーリって、たまに子供みたいなところがあるよね」

「あ!?何の事…何笑ってんだおまえ!」

「…そうだな、僕もこういう機会がないとこんな所には来ないし、これも勉強の一環だと思えば連れて来てもらえて良かったかも」

「勉強ぉ?」

嘘はついてない。
ちょっと大袈裟だけど、まあ今後のためになることだってあると思う。仕事でこういった所に来たとしても、ゆっくり飲食することはあまりないし。
評判になってるだけあって、確かにケーキはなかなか美味しい。

未だふて腐れたような顔で僕を見るユーリを見ていると、やっぱり笑いが込み上げて来る。別に馬鹿にしてるとか、そんなんじゃないんだけど。
…ここは下手に出ておいたほうが良さそうだ。

「そう。だから、これからもユーリが行きたい所に付き合わせてくれないか?なるべく君の都合を優先できるようにするから」

「……仕方ねえなあ……」

椅子に深く座り直してユーリが大きな溜め息を吐いた。
…口元が笑っている。


「そこまで言うんならまあ、付き合ってもらうか。でもあんま、無理すんなよ」

「無理なんかじゃないよ。それじゃ、これからもよろしく」

おう、と言って笑うユーリはとても嬉しそうで、そんなユーリを見ているとこっちまで何だか嬉しくなってくる。
…実際、ユーリとの繋がりが出来たことがとても嬉しかった。


ふいにユーリが立ち上がる。
トレーを持って…片付けにでも行くのかな。

「ユーリ、もう帰るのか?」

そう聞くと、ユーリは呆れ顔で僕を見下ろした。

「何言ってんだ、もう一回取りに行って来るんだよ」

「……え?」

「まだ半分だって何回も言ってんだろ?おまえもちょっと手伝えよ、なんか時間空けたら腹が太ってさ」

「いや…そんな無理しなくても、食べられるぶんだけ取って来ればいいんじゃないかな…」

「せっかくなんだから全種類食ったほうが得じゃねーか。おまえも少しずつなら大丈夫だろ、ほら付き合えよ!!」

「え、ちょ、ちょっとユーリ!!」

付き合うって言っただろ、と笑うユーリに腕を取られ、無理矢理席から引っ張り出された僕は、結局ユーリと一緒にまた大量のケーキをトレーに乗せて戻る羽目になってしまった。
半分ずつにしたとは言え、それでもかなりの量だ。ケーキを取る間も戻るまでの間もやっぱり周囲の視線が痛かったが、ユーリはとても楽しそうだった。


「ユーリ、本当に一人で来るの、嫌なのか?」

どうにも信じられなくて聞いてみたらこんな答えが帰って来て、僕はまた笑ってしまった。

「だって、すごい大食いの奴みたいじゃねえか」

「…気にするところ、そこなんだ」

「他にも、……………」

「ん?どうしたの?」

言いかけたまま、ユーリは顔を赤くして俯いてしまった。他にも?一人で来たくない理由、他にもあるんだろうか。

「ユーリ、今何か言いかけ」

「っ、うるせえな、いいだろ別に!それよりとっとと食うぞ、時間もないんだからな!」

時計を見ると、確かに食べ放題の残り時間は少なかった。とても食べ切れそうにないと思える量のケーキを、ユーリはぱくぱくと平らげていく。

手助けなんか必要ないんじゃないかと思いながらもユーリと同じトレーのケーキをつついていると、隣を通った店員の女の子に笑われた気がした。

…本当に、男二人でこうやってケーキを食べてる姿っていうのはどうなんだろうか…。


これからも付き合う約束をしてしまった事を、ほんの少しだけ後悔した。






「あー食った食った。なんとか間に合ったなー…って、大丈夫か、フレン」

「あ、ああ…」


結局、ユーリは本当に店のケーキを全種類制覇した。

僕はユーリが食べるケーキを少しずつ分けてもらっただけだったけど、そうだな…量で言ったら普通のケーキの三、四個ぶんぐらいなんだろうか。普段、一度にこんなに食べる事がないからちょっと、胃が…


「そんなんで本当にオレに付き合えるのか?…ってか、よくうちでケーキ買う気になるよな。ちゃんと食ってんのか?」

店の入り口脇にあるベンチに座ってぐったりする僕を見下ろしながらユーリが言う。

「勿論、ちゃんと食べてるよ。一度に二つも三つも食べる事はあまりないけど」

「ふうん?二つ三つぐらいいっぺんに食うだろ」

「…女子高生じゃあるまいし…」

「何だと!?」

「そんな事より、この後はどうするつもりなんだ?」

今日、ユーリがどういった予定を立てているのか僕は何も知らない。今はまだ、お昼を少し回ったぐらいだ。
混むのを避けて少し早めに待ち合わせを指定したんだろうというのは何となく分かったけど、ちょっと中途半端な時間だな。

「エステルさんと来た時なんか、どうしてるんだ?」

「ん?そうだなあ、昼メシ食いに行って…」

「え、な、なに?今からまたどこかに食べに行くのか!?」

「甘いもんは別腹だろ」

「それは食事の後で言う事だろ!?ほんとに女子高生か君は!!」

「…じゃあどうすんだよ」

「…映画でも観に行く?」

「うげ…」

見上げたユーリは心底嫌そうだった。
何となく言いたい事は分かるけど、咄嗟に気の利いた提案が出て来ない。

「何だってそんな、野郎同士でデートまがいの事をしなきゃならねえんだ」

「デ、デートって……映画とデートは別に、イコールじゃないだろう」

男同士でスイーツバイキングの店に入るよりは、余程普通な気がする。

どうするか、と考えていたら、不意にどこからか携帯電話のバイブ音が聴こえた。

「あ、オレだわ。…悪い、ちょっと出ていいか?」

「うん?別に構わないよ」

着信を確認したユーリはわざわざ僕に断ってから電話を取った。
少し離れたところに移動して背を向けて話しているユーリだったが、僅かに見える横顔の、その表情が曇る。暫くして電話を終えたユーリは、溜め息混じりに僕に言った。


「あー…ちょっと仕事の話が入った」

「仕事?」

「ああ。うちでよく買ってくれる人でさ。どうしても、って。娘の誕生日が今日なんだと」

「ええ?随分急だね」

「バースデー用のホールケーキも普段から少しは置いてるからな。この時間から売り切れてることもあんまりねえし」

「あ、じゃあお店に行って…」

「そ。タイミング悪いよな」

買いに行ったら、たまたまお店が休みだったわけか。
それにしても、普通なら他の店に買いに行くところだと思うけど…よっぽどユーリのケーキが好きなんだな。わざわざ電話して……ん?
今、お客さんから直接かかって来てたような。

「ユーリ、お客さんに自分の携帯電話の番号、教えてるのか?」

「お得意さんだけ、何人かにはな。今日みたいな事もあるし」

「…あんまり、個人の番号は教えないほうがいいんじゃないか?お店にだって電話、あるんだろう」

「留守電聴いてからじゃ間に合わない事もあるからな。まあそんなしょっちゅうじゃねえし。…つうかさ」

携帯をジーンズのポケットにねじ込んだユーリが僕を見てニヤニヤしている。

「な、何?」

「おまえの口からそんな事言われてもなあ。個人の番号がどうとか」

「…そう、かな?」

「おまえよりよっぽど何回も店に来てる人達ばっかだぜ、教えてるのは」

「関係ないだろ、回数なんか」

「…何でそう思うんだ?」

「何度お店を利用していようが、それで本当にその人が誠実で、信頼に値するかどうかなんて分からないじゃないか」

表面上、良い客を装ってるだけかもしれない。たかが携帯電話の番号と侮れないご時世だ。
そう言うと、ユーリはますます面白そうな様子だ。

「…僕、何か変な事を言ってるかな」

「ああ、最高に面白いな」

「意味が分からないんだけど」

「おまえの言った事、そのままおまえにも当て嵌まるじゃねえか」

「……………え」

「個人情報がどうとかってんなら、普通はおまえの事も警戒すんじゃねえの?三回しか会った事なくてさ。でも、回数は関係ないんだろ?少ししか会った事なくても、誠実で、信頼に値するならいいと、おまえはそう考えてるわけだ」

「え…と」

「おまえは、オレにそう思われてる自信があるんだな」

「えっ!?」

「だってオレ、おまえに番号教えたし。ってことは、そうなんだろ」

「いや、それは僕がどう思うかじゃなくて、君が相手をどう思うかで」

「信用はしてるぜ?じゃなきゃ教えてねえよ。良かったな、おまえの思った通りに自分が思われてて」

声をあげて笑い出したユーリを、僕はただ訳も分からず見つめているだけだった。

僕はユーリを信頼に足る人物だと思ってるし、別に番号を教える事に何の抵抗もない。ただ、そう思う相手には教えてもいいんじゃないか、って思ってるだけだ。
別にユーリがどういう考えで、なんて事までは…

「いつまで笑ってるんだ、訳が分からないよ」

「…オレも、おまえと同じ考えだよ」

だから良かったな、って言ったんだ、と言うユーリの笑顔には、さっきまでのどこか人を食ったようなものは感じられない。

「本当に?…まだ、大して知りもしない相手なのに?」

「回数が関係ないって言ったのはおまえだろ。これから知っていけばいいんだから」

驚いて目を見張る僕に、ユーリが言う。


「オレも、おまえの事が知りたくなった」


…差し出された掌は、とても暖かかかった。

熱を生むところ(※リクエスト)

8/31 02:48拍手コメントよりリクエスト、コゴール砂漠のオアシスでイチャイチャするフレユリ。裏ですので閲覧にはご注意下さい。








照り付ける強烈な陽射しに揺らめく風景に目を細めた。

見渡す限り砂しかない広大な砂漠の風紋には既に何の感慨も抱かないが、こんな殺伐とした世界だからこそ、改めて美しく感じるものがある。

目の前に広がる、透き通る水を満々と湛えたオアシスと生い茂る緑に視線を移すと、一人の人物がその向こうへと歩いて行くのが見えた。


「ユーリ!!また君は勝手に…」

仲間達を振り返るが、皆もそれぞれに先程の戦闘の疲れを癒すのに懸命のようだ。目が合ったエステルが軽く微笑み返したのに頭を下げ、フレンはユーリの後を追ってオアシスの奥へと向かったのだった。




「ユーリ?ユーリ!何処だい!?」

声をかけると、少し離れた場所から帰って来たのはなんとも気怠げな声。

「……何だよ、こっちだフレンー…」

「……全く……」


腰の辺りまである緑の茂みを掻き分けて声のほうへと向かう。開けた視界の先に漸くユーリの姿を見つけて、フレンは小さく息を吐いた。



「どこかへ行くなら、誰かに一言声を掛けてからにしなよ」

「どこかって…行くとこ一つしかねえじゃねぇか。いい加減コレ、どうにかしてぇんだよ」

言いながらユーリは自らの胸元をくいくい、と親指で指し示す。広く開いた衣服から覗くのは見慣れた白い肌ではなく、赤錆びた何かがべったりとこびりつく汚れた身体だ。

勿論その部分だけが汚れているわけではなく、ユーリの上半身は先程倒した魔物の返り血によって見るも無残な状態になってしまっていた。


「……ったくよー……とりあえずオアシスの近くでよかったぜ…」

ぶつぶつと文句を言いつつ、ユーリは自らの衣服を取り払ってゆく。フレンの視線など全く気にしていない。

フレンがまた一つ、溜め息を零した。


「ユーリ、誰が来るかわからないんだから…」

「おまえが来た時点で、もう他の誰かなんて来ねえだろ。とにかく早く流したいんだよ、ベタベタして気持ち悪ぃし生臭いし、最悪だ」

「ちゃんと避けなかった君が悪いんだろう」

「あそこで避けたらエステル達がこうなってたと思うがな。そしたらまたおまえに説教食らうしなあ?」

上着を脱ぎ捨てたユーリが振り返り、皮肉を込めた笑みをフレンに向ける。
両手を広げ、逆光を受けるその身体を見せつけるようにするユーリに、フレンは苦笑するしかない。

拭き跡の残る頬に手を伸ばしてそっと撫でると、ユーリの眉が僅かに歪んだ。

「…まあ、何事もなくて良かったよ」

「何事って…別に攻撃食らった訳じゃねえし。…あんま触んなよ、汚れるぞ」

「魔物の中には体液や血液に毒を含むものもいる。それをこんな、頭から被ったりして…かぶれるだけじゃ済まない場合だってあるのに、無用心だ」

「んだよ、『何事もなかった』んだからいいだろ。…それより」

ユーリの瞳がすっと細められた。

「おまえもその暑っくるしい鎧、脱いだらどうだ?せっかくだから一緒に汗、流してから戻ろうぜ」

「一緒に、ね…」

ユーリの言葉の意味するところを理解してフレンが一歩踏み出し、汗と、ほんの少し残る魔物の血液でしっとりと濡れる項へそっと指先を滑り込ませて引き寄せた。







「ふ……っ、ん…ン!」

「ユーリ、そんなに動かない、で」

「う…、ムリ、だって…ッ」

ぱしゃん、と水の跳ねる音が青い空へと吸い込まれていく。
仲間のいるあたりからは反対側で、こちらの様子は見える筈もない。もし誰かが呼びに来ても、岸辺に生えた椰子の幹に遮られてすぐには見えないだろう。


わざわざ移動した場所で二人は身に着けていた衣服を全て脱ぎ捨て、澄んだ水の中で互いの身体を弄っている。
フレンの手が何度も繰り返しユーリの髪や胸元に水を掛けて汚れを綺麗に流した後からはもう、ただじゃれ合うかのように水中で脚を絡め、腰を擦り合わせ、唇を重ねて貪るように吸い、より快楽を得ようとするだけだ。

向かい合ってユーリの腰を掴み、自分の同じ部分に強く押し付ける。冷たい水が纏わり付いて緩慢になる動きを寧ろ楽しんでいるかのように腰をくねらせて、フレンの胸に身体をぴったりと付けてくるユーリの口からは可愛らしい吐息が絶えず溢れて止まらない。


刺激を受け続ける下半身の一点が、冷たい水の中にありながら熱く滾るばかりだった。


「あ…ッあ、ふぁ……」

「ユーリ…どうしたの…?」

「ん…あつ、い……!」

「…どこが?」

左手でユーリの尻を撫でながら右手を重なる部分へと潜り込ませて、そのまま自分自身とひとまとめにして軽く擦り上げると、同じ高さで潤んでいた薄紫の瞳が一際強く輝いた。

きゅっと力を込めた次の瞬間、大きくのけ反った白い喉元に顔を埋めて、顎の裏側までを舐め上げながら聞いてみる。


「…ここが熱い…?」

「はぁ…っ、あ、あ…すっげえ熱い…」

「ん、僕も…」

本当は、目の前の喉に思い切り吸い付いて跡を残してやりたい。胸の小さな蕾の他にも朱い徴を散らしたいといつも思い、仕方なしに諦めている。
見えるところに付けるな、と言われるのはわかりきっているし、無理に付けようとして殴られたことも何度かある。そうなると甘い雰囲気が一転、後の機嫌取りに苦労する。


だから最近、フレンが好む体勢、というより体位があった。

「ユーリ、こっち向いて」

「ん…?あ、ぅん…む」

ユーリの顔を自分のほうに向かせ、長い髪に指先を潜り込ませて頭を抱えると、ユーリが少し顔を傾けてより深い口づけを求めて来る。
角度を変え、深さを変え、何度も繰り返していくうちに二人の息遣いは荒くなり、僅かに唇を離して息継ぎをしてはまた重ね……舌を絡ませ合うとぴちゃぴちゃと耳に響く音が、二人が水面を揺らして響かせる水音と一つになって溶けていった。


「はぁ、んっ…ふぅ………」

離れた唇から透明な『糸』が紡がれ、陽光にきらりと光ってたわみ、そのまま水中へと落ちていく。

口づけている間中ずっと愛撫し続けていた自分とユーリの熱い分身は、もういつ弾けてもおかしくない状態になっている。
いつもなら卑猥な音を立てながら指を濡らす透明な液体は溢れ出ているのだろうが、今は先端をぐりぐりと刺激しているフレンの親指の腹に一瞬その感触を残し、水中に霧散していくだけだった。

快楽に堪えられなくなっているのは二人とも同じだ。ベッドの中とは違う感覚と、奇妙な浮遊感。
物理的な浮力は二人の膝が崩れ落ちるのを支える事に一役買っていたが、それもそろそろ限界に近い。

ユーリにしがみつかれるような格好のフレンがユーリの表情を覗き込んだ。
上気した頬の熱が胸に伝わり、とろんとした瞳が見える。腕に食い込む爪の痛みは、それだけユーリが自身の身体を支えるのに必死な証でもある。

こうなればもう、ユーリの体勢を自由にするのは難しい事ではない。


「ユーリ、ほら…いつもの格好」

「え…っあ、わ……っっ!!」


一瞬で身体をひっくり返され、岸辺に上半身を投げ出したユーリが振り向くより早く、フレンが背後からユーリの身体に覆い被さって両手の指同士を絡めればもう、ユーリは動く事ができない。

少しばかりの不満を滲ませてユーリが背後のフレンを振り返って言った。


「…なんかおまえ、最近このカッコ好きだよな…」

「んー…なんだかものすごく、ユーリを自分のものにしてる、って感じがするからかな」

「……はっ、何言ってんだか」

「そう?だって…」


ユーリの背中の上から強く押さえつけるようにして体重を乗せ、絡めた右手を離して再びユーリの性器を握って強く上下に扱くと、ユーリの身体がびくりと震え、背中が弓なりに張り詰めた。

堪えきれないユーリの嬌声が上がって、フレンが喉を鳴らす。何度見てもこの艶のある姿を見慣れる事などなく、耳に甘い声も聴く度に背筋にぞくぞくと快感が走る。

濡れて張り付く長い髪を優しく掻き分け、項に口づけて強く吸った。

くっきりと残った朱い徴を見て、フレンが満足げに言う。


「…ほら、僕のものだ」

「あ……っつ!こんの…、跡付けんなって何回言わせ……」

「見えなければいいだろう?」

「そこは微妙で……ッッあ!!」

首筋から肩甲骨の間をなぞるようにしながら幾つも徴を刻み、徐々にフレンの身体がユーリの背を滑り下りて行き、最後にたどり着いた場所を押し拡げて舌を捩込む。


「ッひ…ああぁあ!!」


水面が波打ち、跳ねた飛沫がフレンの顔を濡らす。

悦びを含んだ一層高い声が愛しくて、柔らかな肉を掴む掌に思わず力を込めずにはいられなかった。






「ん、んッッ!!」

「は…っ、あ、はッ……!」

充分に解した内側は柔らかくうねりながらフレンを受け入れ、絡み付いて包み込み、あまりの快感で激しくなる抽挿にユーリは声を上げっ放しだった。

ばしゃばしゃと騒がしい水音も二人の耳には入らない。

感じているのはフレンが突き上げる場所が発する湿り気を帯びた粘着質な音や互いの吐き出す息が肌を掠めてゆく感触。

照り付ける太陽の陽射しよりも熱く火照る身体を冷たい水飛沫が冷ましても、一つになっている内側の熱は冷める事はなくますます温度を上げていくようだった。



「ッあっ!はあっ、…あ、ふ、ふれ…んンンッッ!!」

切羽詰まった様子のユーリがフレンの名を呼ぶ。
きつく眉を寄せて肩で息をしながら、その肩越しに自分を振り返る表情がフレンは好きだった。


もう我慢が出来ない、絶頂に導いて欲しいという哀願の眼差しが心を波立たせる。


「あァッッ、ああぁあア!!」


岸辺に腕を突っ張ってユーリが叫ぶ。

全身を戦慄かせて振り上げた髪が背中に落ちる様子をはまるでスローモーションのように眺めながら、より深い場所を突いてぐるりと円を描くように腰を捻るとそれが止めになるのをフレンは知っていた。

何度もユーリと身体を重ねるうちに見付けた愛し方だ。

およそ普段聞くことのない、快楽に塗れた嬌声が堪らない。
ユーリから放たれた白濁が透明だった水中に薄く流れてゆくのを視界の端で捉えながら、フレンもまた、ユーリの中を自らの放った熱で満たすことにこの上ない快楽と満足感に浸り、幸福せを感じるのだった。







「……あちィんだけど……」


うんざりした声でユーリが言う。

まだ身体を動かすのが辛いユーリは怠そうに四肢を投げ出しているが、フレンがそれを後ろから抱き抱えていた。

上着は洗ってすぐ傍の岩の上に干してあり、つまりはそれが乾くまでの間中、こうしているつもりなのか、という事をユーリは言いたいのだった。

濡れていた髪も身体もすっかり乾いている。だがフレンに抱き締められ、多少遮られているとは言え強い陽射しと高い気温のせいで汗が流れて気持ちが悪い。


「おい、マジで離れろよ!」

「今離れたら自分の身体も支えられないだろう?」

「その辺の木にでも寄り掛かる」

「だったら別に僕が支えても変わりないじゃないか」

「だから暑いんだって言ってんだろ!?」


耐え切れずに大きな声を出すユーリを更に強く腕の中に閉じ込め、その耳元に囁くフレンの声は何とも楽しそうだ。



「…だったら、もう一回『水浴び』する?」



さすがに誰か捜しに来るかな、と軽い調子で言うフレンに対し、ユーリは呆れて言葉も出ないのだった。



ーーーーー
終わり
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