続きですが、内容はリクエスト頂いたものになります。詳細は追記にて。
微裏ぐらいで根底はフレユリですが、雰囲気はユリフレっぽいです(ユーリが押せ押せなので)。
苦手な方は閲覧にご注意下さい!
ユーリの家に来るのは、本当に久しぶりだった。
入学式で再会して以来何度か遊びに行ったが、今の関係になってからは初めてかもしれない。
それは勿論、一人暮らしのフレンの部屋のほうが色々と都合が良いからだったが、何よりユーリがあまりフレンを家に呼ぼうとしなくなった。
ユーリはとにかく、『誰かに見られる、聞かれる』というのを嫌がる。それはフレンも分かっている。
では何故、それでもそういった場所での行為を抑えられないのかと聞かれればそれはもう、初めてユーリを抱いた時の印象が強烈すぎたからだとしか言えなかった。
確か、鍵は掛けていなかった。
いつ誰が来るとも知れない教室、しかも生徒会室といったある意味ストイックな場所で行為に及ぶ事に、そもそも興奮していた。
その上必死に声を殺して耐えるユーリの姿があまりにも淫猥で、でも結局堪え切れずに上げる嬌声はとても甘くて、可愛くて愛しくて仕方なかった。
ところが、フレンの部屋でのユーリはそれ程声を抑える事に気を向けるわけではなかった。自分自身の喘ぎ声を聞くのは恥ずかしいのか、あまり大きな声を出してしまうと慌てて口を押さえるのは変わらないが、声そのものを必死に我慢しているといった感じではない。
行為にも積極的になり、どこか余裕を持って楽しんでいるようにも思える。
そのギャップを不思議に思って聞いてみれば、返って来た答えはフレンとしては少し切なくなるようなものだった。
『聞かれたり見られたりして困るの、オレじゃねえし』
半分冗談にしても、何となく納得できないものがあった。
部屋での大胆なユーリも好きだが、それ以外の場所での恥じらう姿も見たい。だからつい、強引にでもそういった場所で抱いてしまうのだった。
大体、部屋でするより圧倒的に機会は少ない。ユーリが言うほど頻繁に外でしているわけではなかった。
だから正直、今日は期待していたのだ。
『外』ではないが、階下にはユーリの家族がいる。
赤の他人に聞かれるのをあれだけ嫌がるのだから、身内ともなれば相当だろう。
我ながら意地が悪いな、とは思うものの、緊張と羞恥に乱れるユーリをもっと見たいと思っていた。仕掛けたのは自分だったが、電車の中で中途半端に煽られた熱はまだ燻っていて、早くその熱をユーリの中で解放したくてしょうがない。
まさかユーリの家族は、食事をしながら自分がこんな事を考えていたなんて思わないだろう。
ユーリはあれからろくに喋らなかった。
食事中も不機嫌そうにそっぽを向いていて、目も合わせようとしない。
さすがに怒らせたらしく、フレンもやりすぎたと反省していた。本気で機嫌が直らないようなら最悪帰るしかないかな、と思っていたのだったが、食事を終えた後、暫くしてやっとユーリが話し掛けて来て、言われた言葉に正直耳を疑った。
『先にシャワー浴びて、部屋で待ってろ。…片付けたらオレもシャワー浴びて戻るから』
思わず『いいのか!?』と聞き返してしまったフレンだったが、続くユーリの言葉はもっと信じられないものだった。
『…さっきので我慢のコツが掴めたからな』
ニヤリと笑うユーリに、まだシャワーも浴びていないのに身体が熱くなってしまい、手渡されたバスタオルで前を隠すようにしてバスルームに向かったフレンの背中を、ユーリがにやにやしながら見ていた。
そうしてシャワーを浴びてユーリの部屋に入り、久しぶりに見る光景に懐かしいものを感じていた時、ユーリも部屋へ戻って来た。
相変わらず適当に拭っただけの髪の先からはぽたぽたと雫が落ちて床を濡らす。
だがそれよりも、フレンはユーリの姿に仰天した。
「ゆ、ユーリ…何だ、その格好は」
「あ?自分ちでどんな格好しようがオレの勝手だろ」
「そ、そうだけど。でもそれは、ちょっと…」
ユーリは下着姿だった。
ボクサータイプのブリーフを穿いてスポーツタオルを肩から引っ掛けているだけで、他に衣服は身につけていない。
濡れて張り付く長い髪やタオルの裾からちらちらと覗く薄桃色の突起、すらりと伸びた色白の長い手足。
思わず喉を鳴らしたのが分かったのか、ユーリが楽しげに笑った。
「何だよ、ジロジロ見て」
「そりゃ…見るよ。久しぶりだし」
「久しぶり?まだ何もしていいとは言ってないぜ?」
「…さっき、いいって言ったじゃないか」
「オレが?そんなの一言も言った覚えはねえな」
「ユーリ…!」
思わずフレンが一歩踏み出すと、ユーリも同じように前へ踏み出した。
互いの距離が一気に縮まって、一瞬フレンが躊躇した瞬間ユーリの両腕がフレンの首に回され、まるでぶら下がるかのように軽く膝を曲げて上目遣いでフレンを見上げる。
ユーリが曲げた膝を脚の間に割り込ませて少し上げると、フレンが小さく呻いた。
「…なんだよ、もう硬くしてんのか?堪え性のない奴だな」
「な…!それはユーリのほうだろ?ユーリはいつも……っ、んぅ!」
ユーリがキスをして抗議を遮ると、フレンの表情が僅かに歪む。だがすぐに瞳を閉じてユーリのキスに応えた。ユーリはフレンとキスをするのが好きで、フレンはキスをするのは勿論だがその際のユーリの表情や、鼻から抜ける甘えたような声に弱かった。ずっとキスをしていたら、その声だけで達してしまいそうになる。
今もユーリの膝が当たっている場所が苦しくて、早くそこを曝け出してユーリと繋がりたくて――
そんな事を考えながらフレンがユーリの腰に手を回すと、ユーリはフレンの首から腕を離してその指先でゆっくりと自分の腰を抱くフレンの腕をなぞり、手首を優しく握る。
「…ユーリ?」
唇を離して覗き込むと、ユーリが小さく舌を出して自らの唇をペろりと舐めた。
もう、無理だ。
ユーリの腰に添えた掌に力を入れてその身体をベッドに投げ出そうとした、その瞬間。
「っ、うわッッ!?」
ユーリがフレンの手首を力一杯握って腰から引き剥がし、そのまま大きく頭上へ持って行くと同時に足払いを掛けた。
不意を突かれて大きく体勢を崩し、まずい、と思ったフレンだったが、立て直す事も出来ずそのままベッドに仰向けに倒れ込んでしまった。
慌てて起き上がろうとするも両腕はユーリが掴んで頭上に高く掲げられたままで、そのユーリが腹の上に勢い良く馬乗りになって来た為に力が入らず、代わりに情けない呻きが漏れただけだった。
腹部への衝撃がかなり強かった為、涙目になりながらフレンが自らに覆い被さるユーリを見上げた。
「う…、ユーリ、苦しい…!」
「んー?ちょっと勢い強かったか?それとも」
ユーリが腰を強く押し付ける。
「ん…!」
「…こっちが苦しいのか?」
ぐり、と捻るように動かれて思わず腰を引くと、間近に迫ったユーリの口から小さく笑い声が漏れ、その息がフレンの鼻先を擽った。
尚も笑みを浮かべてユーリが尋ねる。
「なあ…どっち?何が苦しいんだ?」
「く……ユーリ、やっぱりまだ」
「どっちだ、って聞いてんだけど」
「うあ……!!」
どすん、と叩きつけるように勢いをつけて腰を落とされて悲鳴に近い声を上げてしまったが、ユーリはにやにやとフレンを見下ろすばかりだ。
「……っ、両方、だ!!」
悔しいのと苦しいのとでユーリを睨みつけながら言うと、ユーリはますます妖しく笑って言った。
「マジで堪え性ねえのな」
「いい加減に………っぷ!?」
ユーリが一層身体を乗り出して、フレンの顔をその白い胸板で押さえ付けた。
フレンがベッドに頭を沈み込ませ、ユーリが手首を握る力が消えた、と思ったら何やら代わりに柔らかいものが巻き付けられる感触に、一気に身体が冷えるような気がしてフレンが脚をばたつかせた。
先程までユーリが肩に掛けていたタオルで手首を縛られているのだ。
「おとなしくしてろ、って!」
「むぐ、んん!?」
きし、と頭上で布の擦れる音がすると同時にユーリが身体を起こすが、相変わらずフレンの腰に跨がったまま満足そうにフレンを見下ろしている。
自分がどういう格好なのかあまり考えたくなくて、フレンはうんざりしたようにユーリから顔を背けて溜め息を吐いていた。
「…今日は随分と積極的だね」
「まあ、たまにはな。……ふうん……」
「…なに?」
「やっぱりこうやって見るのは気分いいな」
「………」
馬乗りになって腕を組むユーリは、先程からにやにやしっぱなしだ。不穏な空気しか感じられず、フレンが身じろぎする。
「…あのさ、ユーリ」
「何だよ」
「いや…なに、するつもり…?」
「セックスに決まってんだろ。おまえ、最初からやる気満々だったじゃねえか」
言いながらフレンの着ているTシャツを捲り上げ、僅かに腰を浮かせてジャージの下と下着をまとめて一気に脱がす。ほんの少しだけ反応していたフレン自身を根元から殊更ゆっくりと撫でると、その手つきに反応して震える腰とフレンの吐息にユーリは目を細めた。
「…感じてんの?」
「う…まあ…」
「縛られて感じるのか?やっぱおまえ変態だな」
「な…何て言い方するんだ!?僕は別に、縛られてるのがいいなんて言ってな……!!」
優しく撫でていた手つきが一転、ぎゅうっと全体を握り込まれてフレンが身体を跳ね上げる。
「つあ……ッ!!」
「ん…ちょっとデカくなった」
「あ、ちょっ…!ユーリ、やめ……!!」
「何で?感じてんだろ」
「んんっ…!」
「どうなんだよ?言ってくれなきゃわかんねえな」
ユーリの手はフレン自身を擦り続けているが、動きは単調だ。掌でただ握り込んでいるだけで、指の動きも何もない。
暫く会っていなかったし、ユーリに手淫をされるのも久しぶりだ。熱い掌に包まれているだけでも気持ちは良いし、感じているのは確かだった。
だが、足りない。
いつもならもっと巧みに快感を高めるように動かしてくれるのに、と思うが、原因に心当たりがありすぎてフレンは何も言えずにいた。
すると左手の動きはそのままに、ユーリが右手を伸ばしてフレンの胸に掌を当て、捏ねるようにして押し潰した。
「いっっ……ツ…!」
「何か足りなさそうだと思ったんだけど、違ったか?」
「ゆ…ユーリ!!ちょっと待っ…!!」
「うるさい」
「は……」
「あんまデカい声出すと聞かれるぜ」
「な…!困るのは君も同じだろ!?」
身体を捻るようにして少しだけ上体を起こしたフレンが抗議の声を上げると、ユーリが今日一番と思えるような美しい笑顔をフレンに見せた。
「オレは我慢できるぜ?……おかげさまで、な」
それに、と言って左手の動きを少し早めると、フレンの顔が切なげに歪む。
「んぅ…っ」
「覚えてろ、って言ったよな、オレ」
「…え…」
あの時背中に感じた冷たい何かを再び浴びて、フレンが引き攣った笑いを浮かべた。
「あの…ユーリ…っ、ひっっ!!?」
後ろのほうに、僅かに覚えのある感覚が走る。
一度だけ、ユーリに触れられた事があった。
「まま、待った!!ユーリ、僕は…!!」
「覚悟しとけよ?聞かれたくなきゃ『我慢』するんだな。…無理かもしれねえけど」
「は!?」
「だってオレ、多分すげえ上手だと思うぜ。おまえにあれこれ教えられた通りにしてやるから」
「…………!!」
額に冷や汗を浮かべて見上げてくるフレンに、やけに明るくユーリが言った。
「今日はオレが、鳴かせてやる」
ユーリに無体を強いた事を、フレンは初めて本気で後悔した。
ーーーーー
続く