7/8のの様よりリクエスト

色々ぶっちゃけ?ユーリ
ギャグですよ。
リクエスト詳細は追記にて。






騎士団の団長なんてものをやってると、実に色んな物を入手する機会があるんだ。

まあ殆どは事故や事件の証拠品だし、いくら僕が騎士団長とはいえそういった物を個人的に着服するなんて許されない。犯罪だし。

様々な経緯で僕の手元に一時的に回って来る物の中に、知り合いから先日押収した物があった。

でもごめん、今回はちょっと、いやかなり、心が揺れている。目の前の小さな紙に包まれているもの。中身は白い粉末がほんの少しだけ。
包みには添え書きがある。


“リタ特製・超強力自白剤!〜どんな本音も一発暴露〜”


…何がどう一発なんだか分からないけど、そういう物らしい。


『実験してたらついでに出来ちゃったのよねー。アンタのとこで使えるんじゃない?拷問で口割らせるよかずっと楽よ』


何のついでにこんなものが出来るって言うんだ。

大体、拷問より楽ってそりゃそうなんだけど、今時拷問なんて面倒くさ…いやそうじゃなくてそんな非人道的な方法はもう行ってないとか色々と言いたい事はあったけど、とにかくあのリタが作るようなものだ。無駄に効き目が強力に違いない。
あまりにデンジャラスな香りを感じた僕は、とりあえずそれをふんだくって彼女に他言無用、とだけ言った。
こんなものが他の誰かの手に渡ったら大変な事になる。

…で、押収したはいいけどどうしよう、と思ってるうちに、ある事を考えついてしまって、僕はこの薬を前に悶々と葛藤し続けていた。

どんな本音も…というなら、是非とも本音を聞いてみたい人物が一人だけいる。
彼は素直じゃないから、いつも本当の気持ちを隠してる。実際は結構バレバレなところもあるけど、やっぱり彼の口からはっきりと聞いてみたい事はたくさんあるんだ。


業務上横領と自分の欲求を天秤にかけた結果、僕は自分の欲求に素直になることにした。
まあ、実際はたまたまリタから直接この薬を貰っただけだし横領でもなんでもないんだけど。立場上、ちょっと考えてみただけだ。
一応。

どうやってユーリに飲ませようかなあ。なんか楽しくなって来たかも。…ふふ。










その晩いつものように窓からやって来たユーリは、僕が差し出したチョコバナナクレープをなんの疑いもなく食べてくれた。

…大丈夫なのかなあ、こんな無用心な事で。自分で一服盛っておいて何だけど、時々不安になる。今度は媚薬でも盛ってみようか。
……後が怖いな。やめとこう。

さて、どれぐらいで効き目が出るのかな。暫く待っ…

「…なあ、フレン。なんかオレ、今日は無性におまえに話を聞いてもらいたい気分なんだけど」

「早っっ!あ、まあいいんだけど。うん、何でも聞くよ?」

「そっか、ありがとな。…じゃあ、容赦なくいかせてもらうぜ。腹ぁ括れよ!!」

「ええ!?そっち!!?」


「まずはあいつだ、猫目のねーちゃん!何でおまえ、あいつの行動は放ったらかしなんだよ!?あんだけ敵意剥き出しだってーのに、もうちょっとどうにかできなかったのか!?」

「どうにかって言われても…。親友の親友はライバル、みたいなものだろ」

「何が親友だ。嫉妬する対象が男だって時点でおかしいだろ。ああいうの見るとほんと思うんだけどさ、何でオレなわけ?おまえに直接言やあいい事だよな、友達付き合い考え直せ、とかさ」

「…実際そんな事言ったら、自分がまず嫌われるからじゃないのか」

「おまえがオレばっか構うからって勝手にオレの事恨んだあげくの殺人未遂だぞ!?女子供ばっかのパーティーでそりゃあもう苦労してアレクセイの野郎を倒したってのに、いくらなんでもあんまりだろ!オレ、主人公だぞ!?」

「うんまあそうなんだけど。僕、一応その辺りは知らないことになってるから」

「それもおかしいよな。現場に残された血痕、血の付いた凶器、そしてオレの姿はない。おまえもともかく、ジュディやらレイヴンやらが気付かないわけねえだろ。あの状態でソディアが隠蔽工作できたとも思えねーしな。初動捜査のミスだ。職務怠慢だ!」

「…ノーコメントでお願いします」

「おまえもいちいちオレを庇ってんじゃねえよ。しかも毎回派手に突き飛ばしやがって。距離感はおかしいしヒロインかオレは。しかも一晩中二人っきりとかいうイベントは増えてるし。そんなんだから公認カップルとか不名誉なこと言われんだ!!」

「不名誉かどうかはともかく、ここで言う事じゃないなあ」

「心配すんな、その辺りは切り替えが出来てるらしいから」

「いいけどねー…」

「それからもう一つ、キュモールの事だ。これは譲れねえ!!」

「…一応聞かせてもらうよ」

「どう考えてもアレは事故だ!!!」



「……………」

「……………」

「……はぁ」

「何だその薄いリアクションは!?あいつが勝手に落ちたんだろーが!!それをおまえが『殺した』とか言うからおかしな事になってんだろ!?」

「…そうかなあ…。まあ一応、事故だって言うんなら救助義務を怠ったとかそういうのはあると思うけど」

「なんで自分が殺そうと思ってた野郎を助けてやらなきゃならねえんだよ」

「もうその発想がどうかと思う」

「おまえもどっから見てやがったんだか知らねえが、助けに出て来りゃよかったじゃねえかよ。それか誰か呼ぶとか」

「…ノーコメントでお願いします」

「ったく堪んねーよなー、オレばっか罪人扱いされてさあ」

「ユーリ、それは物凄くカッコ悪いから。あとそのへんは色々デリケートだからもうそれぐらいにしときなよ。今更だし」

「本音ぶっちゃけろって言ったのおまえだろ。まーちっとはスッキリしたわ」

「…そういう話が聞きたかったんじゃないんだけどなあ…」

「じゃあどんな話だ?」



そこで僕は、ユーリに一番聞きたかった質問をする事にした。

ていうか、やっとだよな。今までのも『本音』なのかも知れないけど(ちょっと違う気もするが)、僕が知りたいのはそんな事じゃない。

…ユーリも色々溜め込んでるんだな、とは思ったけど。




「えーと、君が何で僕の事が好きかとか僕のどこが好きかとかどれぐらい僕の事が好きなのかとか」

「…………………」

「何で黙るの!?」

「言いたい事がこれといって出て来ねえ」

「……」

「…っつーか、何おまえ、いきなり。人の顔見るなりそれか?暑さでとうとう、頭やられたか」

「…顔を、見るなり…?」

「今日に限ってクレープくれたりして、何か妙だなとは思ったが。久々に会って一発目の話題がそれかよ」



…これは、もしかして。
あんまり考えたくないけど…


「ユーリ、今まで僕と何を話してたか、覚えてる?」

「はあ?今まで?…おまえマジでおかしくなったか?いや元からか」

「失礼だな!おかしくなってなんかない!…本当に、覚えてないのか?」

「ワケわかんねえんだけど…」


怪訝顔で僕を見る様子は、嘘をついているようには見えない。

と、言う事は。


「…随分と有効時間の短い薬だなぁ…」


どうやら薬が効いてる間の会話も忘れてしまうみたいだ。それは別にいいけど、これじゃどのみち尋問にだって使えそうにない。だってまだ小一時間程度しか経ってないんだから。


「…おい」

「全く、ちゃんと実験したのかな…」

「おい!!さっきから何だ、薬とか実験とか!!まさかおまえ、さっきのクレープになんか入れやがったのか!?」

「別に。何も」

「嘘つけよ!!絶っっ対、何か入れたろ!?何するつもりだった?答えろ!!」

「…じゃあ、僕の質問に答えてくれ。そうしたら教えてあげるよ」

「はあ!?フザけてんじゃねえぞ!!」


「ユーリ、僕のこと好き?」

「……なっっ!!?」

「答えてよ」

「……この……!!」



薬なんか使う必要、なかったかな。顔が真っ赤だよ、ユーリ。

…でもやっぱり、一度ぐらいはっきりと言って欲しいんだけどなあ。

とりあえず、どうやってユーリの怒りを治めればいいか考えないと自分の身が危ない。


「フレン!?何とか言え!!」

「…素直じゃない恋人を持つと、苦労するよ」

「何だそれ!関係ねえだろ!?」

「何だかなあ……」


収穫があったような、なかったような。

……ま、いいか。





ーーーーー
終わり
▼追記