どんな姿も好きだから・15

続きです。








椅子を蹴倒して机に手を突いたまま、フレンは動かない。
何から言ってやろうか、考えてるんだろう。

さて、まずはどこから攻めて来るのやら。
大体の質問に対する答えは用意できていたが、すんなり話が進むのか…?




「…とりあえず、何故レイヴンさんが部屋にいたのか聞かせてもらおうか」

まあそっからだよな。

「どうせおっさんから聞いてんだろ?」

「…君の口から聞きたい」

「同じ事だと思うがな。おっさん、わざわざオレの恥ずかしい格好を拝みに来たらしいぜ。どいつもこいつも、物好きだよなぁ」

「恥ずっ……!?」

フレンの顔が、耳まで真っ赤になる。
…なに想像しやがったんだ、こいつ…

オレは自分の胸元を親指で指しながら付け加えた。

「騎士団長様の噂の恋人とやらがどんな奴か、どうしても見たかったんだとよ」

「…普通に登城すればいいじゃないか…!」

「本人に聞けよ面倒くせぇ。で?他には?」

「他って…まだ質問に答えてないだろう」

「はあ?」

「だから、どうしてレイヴンさんを部屋に入れたんだ!!」

「別に深い意味なんかねえよ。部屋で話させろって言うから、仕方なく、だ。」

「そうじゃなくて……!」

…ほんと面倒臭えなこいつ。質問の『本意』は薄々わかってるが、オレとしてはそこに触れるのすらバカバカしい。
そんなこと、有り得ないからだ。

「面会の許可も取らずに、あんな時間に『女子の』宿舎に男を入れたことについてなら謝る。他の連中に示しもつかねえだろうしな」

「…もういい、わかった」

「あっそ。で、次は?」

「…っ…!…何を、話してたんだ」

「それもおっさんから聞いてんじゃねえのか」

「同じ事を二度も言わせないでくれ」

「全く…」


実は、これについてどう答えていいものか、オレは悩んでいた。
ポイントは一つ。
フレンに「何を」「どこまで」聞かれていたのか、ということだ。
聞かれていないなら、余計な事を言う必要もない。だが聞かれていたなら…普通に説明したところで納得するんだかどうだか。

「ユーリ!」

「あーもーうるせえな!おまえがおっさんに頼んでた仕事の話とか、オレが今何やってんのかとか、そういう話しかしてねえよ!!」

「…………」

「何だよ?」

「…嘘だ」

「は?」

「レイヴンさんから、僕との事、聞かれただろ」

オレはため息と共に、天を仰いだ。
案の定だ。
こいつの思考の、この辺りが理解できない。

「…だったらどうだってんだ」

「何て答えた?」

「いい加減にしろよ!知っててネチネチネチネチ、鬱陶しいんだよ!!」

一度こうなってしまうと止まらない。
売り言葉に買い言葉で、誰かが止めるまで際限なく、どうしようもない言い争いが続く事になる。

もう、引くに引けなかった。


「ネチネチって、君がちゃんと話さないのが悪いんだろ!?」

「どうせ昨日、おっさん締め上げて全部聞いてんだろうが!!残念だったな、口裏合わせてるヒマもなかったよ!!」

「口裏!?やましい話でもしてたのか!?」

「だからしてねえってんだろ!!」

「じゃあどうしてちゃんと話さないんだよ!?」

「またそこかよ!?だったら聞くが、何をそんなに気にしてんだよおまえは!!」

机を蹴りつけ、フレンに詰め寄る。鼻先がくっつくんじゃないかと思うぐらいに顔を近付けて真正面から睨みつけてやったら、急にフレンは泣きそうな顔をして一歩引いた。

…予想外だ。


「おい…」

「君は…今でも僕を、『親友』だと……『恋人』じゃないと、思ってるのか?」

「意味が…わからねえな」

「本当に、恋人の『フリ』をしてるだけなのか!?僕の前で見せる姿も、全部、演技だっていうのか……!!」

「ちょっ…、何でそうなるんだよ」

「君がレイヴンさんとどうこうとは思わないけど、僕がどう思うか、これっぽっちも気にならないのか?好きな人が自分の知らないところで誰かと二人きりとか、気分悪いに決まってるだろ!!」

「…………」

言ってる事が矛盾しまくりだ。
レイヴンのことが気になるからそんなこと考えるんだろうが。
オレが理解できないのはこれだ。おっさん相手に、オレが何を思うってんだよ。


「おまえさ…結局、オレのことも信じてないんだよな」

「な…どういう、意味だ」

「オレは別に、おまえとおっさんが二人っきりだったからって何とも思わねえ。勘繰ることすら思い付かねえよ」

「…!」

「妬くとかなんとかいう次元ですらねえ。そんなこと、あるわけないとしか言えない」

「ユーリ……」

「おまえがもし、オレの知らない誰かと一緒で…それをオレに隠してる、ってんなら嫌だと思うけどな…」

これは本当だ。
以前のオレなら、気になるにしたって今とは感じ方が違うはずだ。

「相手はおまえもよく知ってる奴な上、オレはそれを隠してもいない。…おまえ以外の誰か…しかも野郎なんてなおさら、そんな対象にはなり得ねえっつってんだよ」

「…でも…」

「何が『でも』、だ。おまえの妬き方はちょっとおかしいぞ。誰彼構わず敵視してんじゃねえよ、…ったく」

「…ユーリの気持ちはわかったよ。でも…やっぱり、わかってない」

「まだ何かあんのかよ…勘弁してくれ」

「ユーリはどうして、僕とのことを誰かに知られるのを、そんなに嫌がるんだ?どうしてレイヴンさんに対して、あんなに否定したんだ」

やっぱり聞かれてたか…。

「…当たり前だろ。胸張って言えるような事じゃねえだろうが。おまえだって困るだろ、他の奴らにオレの『正体』バレたりしたら。そうでなくたって、男同士とか、異常…」

「……もういい」

フレンはオレから目を逸らし、倒れた椅子を起こして座り直した。
じっと自分の手元を見つめる表情が、どこか思い詰めたように見えるのは、なんでだ…?

「…フレン…?」

「つまらない事をわざわざ聞いて、悪かった」

「な…んだよ、それ」

「ユーリ、他に何か言いたい事があったんじゃないのか?」

「は?」

「随分と機嫌が悪かったみたいだけど、今の話の事だけだったのか」


…何なんだ、急に…。
確かに話しておきたいことは他にもあった。
フレンの態度は気になるが、とりあえず先に確認したいことがある。


「おまえ、最終的にこの話の始末、どうつけるつもりだ?」

「始末?」

「オレはあと二週間もしないでこことはおさらばだ。オレがいなくなった後、どういう説明するつもりでいるんだよ?」

「…どうとでも説明しておくよ。何でそんなこと気にするんだ」

「新人共の扱い、どうする気だ」

「どう、って。嘆願書のことかい?…どちらにしても、新人のみで新規に隊を立ち上げる予定はない。彼女達にはそれぞれ他の隊で経験を積んでもらう。女性のみの隊の話は、あくまで近い将来にはという事であって、何も今すぐ彼女達だけで編成するつもりは初めからないよ。…君もわかってるんだと思ってたけど」

「…それならいい。話はもう一つある」

「何かな」

「…オレの扱いだよ」

「君の…?」

「昨日、おまえにおっさんのこと伝えに来た奴がいたろ。あいつもありがたい事に、オレとおっさんのことを心配してくれたらしくてな」

「その話は、もう」

「ここにずっと残って、おまえを支えてやってくれって言われちまったよ」

「………」

「最初はとりあえず、周りが勝手に『勘違い』さえしてくれりゃ良かったんだよな。そうすりゃカタがついた後も、オレとおまえは実は何の関係もないっつって終わりだったんだ。…『仕事上』は、な」

「…仕事上、ね」

なんか引っ掛かるが、もう口論するつもりもない。

「それがもう、完全に公認だろ。そう仕向けたってのは確かにあるが、その辺りどうやって納得させるつもりなんだ」

「だから…どうとでもするよ。…結婚を約束して故郷に帰したとか、今でも付き合ってるとか、いくらでも理由なんか作れる。ああ…そうだ、」

言葉を切ると、ふと、フレンが窓のほうへ顔を向けた。つられて外を見ると、いつの間にか雨は上がっていた。
オレは視線をフレンに戻したが、フレンは外を見たままだ。

「フレン?まだ続き…」

「振られた、って言うのもいいかもね」

「ふ……」

何言ってるんだ。
そんなこと言ったら、また縁談だの何だのの話が来るんじゃないのか。
それじゃ何のために、今まで、オレは……

「どうしたんだ?ユーリ。…何て顔、してるんだ」

どんな顔か知らないが、納得行かない。それが表情に出てるんだろう。

「おまえそれじゃ…結局、また面倒抱え込む事になるかもしれねえじゃねえか」

「…振られたショックで、もう結婚なんか考えられない、とか言うのも結構説得力あるんじゃないか?」

「あー…まあ、そう、か…?」

「仕事が終わっても、『役』は続けてくれるんだろう?何かあったら、また『演じて』くれればいい」

「…なんかさっきから、嫌な感じだな…」

「…よくわからないけど。とにかく、後始末はこちらできちんとする。…これ以上、君に迷惑はかけない」

「……そうかよ」

フレンは外を見たまま、こちらを振り返りもしない。
とりあえず、仕事が終わった後にきっちり帰れるならそれでいい、と思う事にした。
…過剰な期待と信頼が、重くなってたんだ。仕事以上のことに、応えてやるつもりはない。



「…雨、上がったな。午後は通常の訓練にするのか?」

「は?ああ…連絡来る事になってる」

「そうか。もう、戻って準備したほうがいいと思うよ。僕も仕事に戻らないと」

暗に帰れ、って事か。
…オレもとりあえず、話を続ける気にはなれなかった。


「邪魔したな。…来るのが遅れて、悪かった」

「…いや…ユーリ」

「あ?」

「右腕…、訓練の前に、ちゃんと医務室で見てもらってくれ」

「え…」

「レイヴンさんも、心配してた。…ごめん」

また余計な事まで話しやがって…。

「大丈夫だよ、大袈裟だな。まあ治療はちゃんと受けに行くよ」

「………」

「じゃあな」




執務室を出たオレは、思い切りため息を吐き出していた。
こう毎日浮き沈みが激しいと、本気で気分が滅入る。
フレンの態度も妙だ。
…オレ、何か地雷踏んだか…?

何がこんなに気になるのか、わからない。

仕事の期間は、あと二週間足らず。


……いや、まだ、二週間もある。
そう感じた。




ーーーーー
続く
▼追記

見透かす瞳 紡ぐ唇(※リクエスト)

5/31リクエストより
「シリアス」「エロ」
クゥさまのご希望でユーリがすごい喘いでます。
※裏ですので閲覧にはご注意下さい!









声が、聞こえなかった

姿は見えているのに

暗闇に佇むその姿に、必死で呼びかける

光が射して、影は消えてしまった

消したのは……










「フレン…何時だと思ってんだよ」

「さあ?時計なんか見て来なかったから」

「もうあと2時間もしたら夜明けだぞ…」


夜更けの訪問者に睡眠を妨害され、ユーリは欠伸を噛み殺していた。


「戻って来てたなら、どうして僕のところに来なかったんだ」

「夜も遅かったからに決まってんだろ。オレ、寝たばっかだったんだぞ」

「僕のところで寝たらいいじゃないか」

「…あのな…」

ユーリは自分を見下ろすフレンの瞳をじっと見つめた。

薄暗がりの中、ぼんやりとした青が揺れている。
少しくすんでいるように見えるのは、単に暗いからなのだろうか。

「ユーリ?」

「…なんかあったのか?疲れてんじゃねえのか、おまえ」

「何かなければ来ちゃだめなのか?」

「そうじゃねえけど…なんだってこんな時間に…」

寝入りばなを起こされたことが余程気に入らないのか、フレンの身体の下でユーリが怠そうにため息を漏らす。
伏せられた長い睫毛は、今にもその瞳を全て覆い隠してしまいそうだ。

「ちょっと、寝るなよ」

「眠ぃんだから仕方ねえだろ」

「……夢を見たんだ」

「は?何だよいきなり」

「怖い夢を見て、目が覚めてしまったんだ。だから君に、慰めてもらおうと思って」

「…正気かおまえ。寝ボケてんじゃねえだろうな」

「寝ぼけてこんなとこまで来るわけないだろ。…こっち向いて」

ユーリが顔を動かすと、すぐに唇に柔らかいものが触れた。
軽く触れるだけだったそれは徐々に深くなり、重なり合う二つの唇の隙間からは、時折甘い吐息が漏れてくる。


「んぅ……ふ…」

「ユーリ…」

「…なんだよ…」

「…何でもない」

「しょうがねえなあ…ほら」

ユーリはフレンの背中に腕を回し、その身体を引き寄せて、金色の髪に顔を埋めた。

「いいぜ…慰めてやるよ」

「ユー、リ」

「手ぇ抜いたら寝るからな」

「…僕、慰めてもらう側だよね…?」

「そう言ってるだろ?」

「はあ…。手なんか抜くわけないだろう?『声』が聞けなくなるじゃないか」

「…ふん…」

フレンは目を逸らしたユーリの首筋にキスをして、そのまま鎖骨の窪みまで舌を這わせた。

「んぅ…ッ、あ…」

「もっと…聞きたい」












「あァッ、は…ぁ、ア、ん……!」

「は…ユーリ、……!」

「んぅ…あッん、ああッ、イ…ぃ…!!」

「ユーリ…もっと、聞かせてよ…!」


窓は閉められ、灯りもない部屋の中だというのに、ユーリの肌の白さがはっきりと感じられる。
…むしろ、暗いからこそ際立つのか。
恐らくは薄く紅色に染まっているであろうその様子さえ、ありありと見える気がしてくる。

ユーリは、明るい場所で抱かれるのを嫌っていた。
何もかもが見えてしまうのが嫌だと言う。
フレンには、その言葉に直接的な羞恥以外に、別の意味も含まれている気がしてならなかった。

フレンはもっと、ユーリの姿をはっきりと見たいと思っていた。
たった数回ではあるが、部屋の明かりを消さずに抱いたことがある。

上気した頬、潤んだ瞳、濡れた唇。

汗でしっとりと湿るなめらかな肌も、愛撫に応えて雫を流す誇張も全て、目眩がする程の快楽に更なる興奮を与えてくれる。

何より、ユーリのそのような姿を見る事ができるのは自分だけだ、という思いが、より一層フレンを昂ぶらせた。

だが、その艶めかしい姿を得るには代償がある。

明かりの下での情事の際、ユーリはほとんど『声』を上げなかった。

余程恥ずかしいのか、それとも別の理由か。それははっきりと教えてもらえなかったが、とにかく必死で声を出すまいとしているようだった。

明かりを消せば、それまでの様子が嘘のように素直に嬌声を上げた。

普段のユーリからは想像できない、甘く、少し高めの声。
鼻に抜ける可愛らしい息遣い。
もっと、と強請られてしまえば、ユーリの言うままにその身体を犯し尽くした。


暗闇の中で、本性を全て曝け出せるというのなら。

いつしかフレンは、ユーリの『声』に応えるために、ユーリを抱くようになっていた。




見えなくとも、ユーリの身体のことなら全て知っている。

既に固くなっている胸の突起を親指で捏ね回し、唇を寄せて吸い、舌で転がす。

「あアッ!ンッ、くすぐ…っ、た…ァ!!」

「擽ったい…?じゃあ、どうしたらいい?」

「口…でッ、吸っ……て…!」

言われるままに乳首を口に含み、唇で優しく挟んで吸う。
唇を動かす度に漏れる湿っぽい音が、ユーリの吐息と重なって何とも淫らな不協和音を生み出していた。

「あッ…あ、ふれ…ん…ッ」

「なに?ユーリ…」

「もっ…した、の…も」

脇腹のラインを確かめるように手を滑らせ、下腹部の茂みの中心に添える。

「ひ…ィッ、あ、あんぅ、ンあぁあッ!!」

触れる前から完全に天を向いていたその塊に指を這わせ、先端から溢れる滴りを擦り込むように扱き上げると、ユーリは悲鳴じみた喘ぎと共に呆気なく達してしまった。

これには少々、フレンも驚いてしまう。


「ユーリ…自分でしてないのか?いくら何でも、ちょっと…」

「…っせえ、な……!そのほうが…」

「ん?」

「おまえが触ったとき、に…感じる、から…!」

「…………!!」


気が付けば慣らしもそこそこに、フレンはユーリを貫いていた。
ただでさえ久しぶりだというのに、自分に抱かれる時のために耐えていたなどと言われてしまっては、我慢ができるはずもなかった。


「あアッ!あッ、んあ、あぁッ!ああ、ンッ!!」

「ユーリ、…っ、気持ち、いいッ……?」

「んッ、い、ああッ!…ふ、イイ…ッッ!!んあア!!」

「っく…!ユーリッ、声…!もっと……!!」

「ヒぃッ!?」

ユーリの両脚を高く持ち上げ、身体を折り曲げるようにしてその上に覆い被さる。
ほとんど真上から突き下ろされ、激しく揺れる脚がフレンの肩を叩いた。

「あアアッッ!!ッや、あッ!あぁッ!!」

「く…ぅ、っふ、はッ、は…!!」

絶頂が近い。
いつもよりきつい締め付けに、フレンの限界もかなり早く訪れてしまいそうだった。

「ンあッ!あアッ!ッはあッ!ああぁ!!」

「あ…ッ、く…、ふ、うッッ、ユー、リッ!」

「はぁッッ!ッア、も、っや、イ…くぅ……ッッ!!」

「くぅ……ッ!っあ―――!!」

「ひィあッッ!!ああぁァああぁ!!!」

ユーリの脚が一瞬張り詰め、びくびくと痙攣する。
まだ出し切らない自身の塊をユーリの中に収めたまま、フレンはユーリの髪に顔を埋めて暫く動くことができなかった。









「ユーリ……一つ、聞いていいか…?」

「…なんだよ」

「どうして、明るいと駄目なんだ?」

「駄目…?何が」

「明るいと、絶対に声、出さないだろう」

「出さないってか…」

ユーリが口ごもる。そのままシーツに顔を埋め、動かなくなってしまった。

「ユーリ…」

「…出せないんだよ」

「出せない?」

「…おまえに見られると…全部、内側まで見透かされてる気分になる。…見過ぎなんだよ、おまえ」

「そんな、見たいと思うのは当然だろう?」

「そういうんじゃなくてだな。…怖くなってくるんだよ、おまえの瞳、真っすぐすぎて、さ…」

「…ユーリ……」

「見られてる、と思うと…うまく、声が出せない。だからってわけじゃねえけど、その…暗いと、おまえをちゃんと感じられるってか…それでつい、声が…」

「………」

「悪い。おまえの瞳、好きなんだけどな…。それより、おまえの見た『怖い夢』ってどんなんだよ?」

「…ごめん…忘れたよ。ユーリの声が聞けたから、もういいんだ」

なんだよそれ、と言って背を向けてしまったユーリを、後ろから抱き締める。

やがて聞こえて来た穏やかな寝息を感じながら、フレンも瞳を閉じた。




影を消してしまったのは、自分の光。

恐ろしいと感じるなら、少し光を弱めてやればいい。

今はまだ真っすぐに見つめてもらえなくても、いつか、その姿を映す日まで。



影を消すのではなく、闇を払う存在でありたい





ーーーーー
終わり
▼追記
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