引き続きアブノーマルです。イタい描写が駄目な方は閲覧注意です!※小スカ有り、くれぐれも大丈夫な方だけどうぞ!








ベッドの背もたれに寄り掛かり、尻の下に枕とタオルを敷かれ、両足を投げ出した姿勢でユーリは己の股間に触れる男から必死で目を背けていた。

相変わらず足は全く動かすことができず、触れられても何も感じることができない。
それなのに、その中心の感覚だけは確かで、どうせならその部分も麻痺させて欲しかった、とユーリは思っていた。

触れられる度に吐き気がする。
怒り、羞恥、哀しみといった感情がごちゃ混ぜで、ユーリはそれら全てがひとつになって襲ってくる嫌悪感と戦っていた。
とにかく一刻も早く、この異常な行為が終わることを願い、唇を噛み締めて耐える。

だというのに、何故かフレンはユーリの性器を触り続けているのだ。
と、ふいにフレンの手が動きを止めた。
ユーリを見上げて心配そうな顔をする。

「ユーリ、もしかしてココにも薬、かかっちゃったか?」

質問の意味がわからなかったが、下手なことを言って刺激するよりも素直に答えてやり過ごすほうをユーリは選択した。

「……かかってない」

するとフレンは少し意外そうな表情でユーリを見つめた。

「本当に?…それじゃ君、不能なのか?」

「………な」

なんてことを言うのか。
あまりの言われようにユーリは怒りを新たにし、無言のまま肩を震わせた。
もちろんユーリは不能などではない。
だがフレンは何も答えないその態度を、「肯定」と受け止めたようだった。

「やっぱり…。こんなに触ってるのに全然反応がないからもしや、と思ったけど」

「んなっ……!!」

何がやっぱり、だ。
このような異常な状況で、しかも男に触れられるなど不快以外の何物でもない。
こんな事で勃たせるような変態じゃねえ、と言ってやりたかったが、怒りのあまりぱくぱくと口を動かすばかりで言葉が出てこなかった。

ユーリの心中など構わず、フレンは再びユーリの性器に触れる。

「大丈夫、それも僕がなんとかしてあげるから。…とりあえず、まずはこっちからだよね」


も、ってどういう意味だ。

そう思った瞬間、ユーリは自らの股間を襲った急激な冷たさに思わず悲鳴を上げた。

「あッ、ひぃっあ!?」

「消毒してるだけだよ、心配しなくていい」

アルコールのツンとする臭いがユーリの鼻先を掠める。
どうやら本当に消毒をしているようだ。
やけに丁寧な手つきがまたユーリの不安を煽る。
このような行為で、それこそ病気にでもなったら笑えない。
だが聞きかじりの知識による消毒に、どれ程の効果があるのか。
全く信用できなかった。


「うん、綺麗になったよ。じゃあ、次は…」

まだ何かするのか。
視線だけで窺うと、フレンは消毒液とは別の容器を手に取り、その中身をユーリの性器にかけようとしている。

(やる前に説明しろよ…!)

何も知らされないのが恐ろしくて、ユーリはたまらず声を上げていた。

「待てっ…!なに、す」

「ただの潤滑剤だよ。さすがに何もなしじゃ痛くて無理だろうから」

どろりとした透明なゼリー状の液体が、ユーリの性器に振りかけられる。

「つめっ…!んん、…っう」

またしても冷たい感触。しかも流れたゼリーが尻の間に溜まってゆくのが気持ち悪くてたまらず、ユーリは身をよじって呻いた。

フレンはゼリーを丁寧に塗りつけていく。
柔らかい本体に。
先端の丸みに。
そして、この「行為」を受け入れなければならない場所に。

「うっ…んくぅ…!」

孔の中に丹念に塗り込められる感触に、歯を食い縛って耐える。

しかし、喉の奥から漏れ出たその声は、フレンに勘違いをさせるのに充分だった。

「…あれ、もしかして感じてる?」

「っなワケ、あるっ…かぁ…!」

精一杯睨みつけても、あまり効果はないようだ。
むしろ嬉しそうに笑ったフレンが管の先を『入り口』に当てた瞬間を見てしまい、ユーリは全身から一気に血の気が引いてゆくのを感じた。

「…よかった。少しでも痛みが紛れるかな…」

フレンが指先に力を込めたのが分かったと同時に、ユーリは恐らく今まで誰も聞いたことがないであろう絶叫を放っていた。








「ヒぃっ、ぅああぁぁああっっ!!!」


「ん…やっぱり痛い…?」

「うあ、ぁ、い!った…あ、い、たい…ッッ!!」

あまりの激痛に何も考えられない。
涙が溢れて止まらないが、そんな事はどうでもよかった。
叫んでいないと我慢ができない。
ユーリは恥も外聞もなく泣き叫んでいた。

頭の中で何かがガンガンと煩く鳴り響き、脂汗が流れ落ちる。
身体はビクビクと痙攣し、開いた口の端からは涎が溢れて白い喉を流れていった。


「ぃやッ…!あァッ!やめ…ぇ、イっ、たいィッ!!」

「ユーリ…、もう少しだから我慢して」

「うァあ!や、ムリ…っっうっぐう!?」

急激な嘔吐感に耐えられず、ユーリは胃の中のものを吐き出して白いシーツを汚した。

一瞬、意識が飛んで視界が白く歪んだ気がしたが、最後の気力でなんとか『こちら側』に踏み止まり、震える奥歯を強く噛み締めた。
気絶して楽になるより、その間に身体を好きにされることのほうが我慢できなかった。




局部の激痛は幾らか和らいできた気がするが、異物を挿入されている感じは無くなっていない。
恐る恐る視線を下に向けて見れば、まだ管は少しずつ中に進められている。
真剣な様子で指先を動かすフレンが、酷く滑稽に見えた。


(はは、馬鹿じゃねえの、こいつ…)


呼吸が整わず歯の根も合わないので、ユーリは心の中で悪態をついた。
自分の姿も相当みっともないことになっているだろうと思ったが、今更どうしようもないので諦めた。

「ん、ちょっとひっかかる…そうか、ここが…」

何やらぶつぶつ言っているフレンをぼんやり眺めながら、ユーリはこの行為の目的を思い出していた。

自力で用を足せない人のため、と言っていたが、ユーリは尿意を感じていない。
人体の構造に明るくないユーリにとって、その瞬間がどうなのかなど想像もできなかった。

と、フレンの動きが止まった。身体を起こしてユーリの正面に向き直り、管の先に付いている袋状のものを掌に乗せてベッドから腕を少し下ろす。


「ほら、ユーリ。届いたよ」

「あ……?」


ユーリは自分の目に映る光景に絶句した。

そこには自分の意思とは関係なく、管の中を流れてゆく淡い色の液体。

「な、あ…ぁ、なんでっ…」

間違いなく己の体内から流れ出て行くその液体を正視できず、顔を背けたユーリの耳元に近づいてフレンが囁く。


「ユーリ、ほら…ちゃんと出てるよ」

「……ひ……」


身体に異常があるわけでもないのに無理矢理こんな事をされ、しかも排泄されるものを見せ付けられ、ユーリの自尊心は崩壊寸前だった。
あまりの恥辱に再び涙が溢れて止まらない。


「い…や、いやだぁッ!見るな、みるなあぁぁあ!!」

「ユーリ」

「う、ぁ…っ!ぃや、あ……!やだ、みる、なァッ!!」

「ユーリ…」

髪を振り乱していやいやをするように泣くユーリを、フレンが優しく抱き締める。

「泣かないでくれ、ユーリ…。大丈夫、僕だけだから…君のこんな姿を見るのは、ね…」

「ッひ………!」


甘い声音に、冷たい何かを感じる。
優しく背中を撫でる手つきが悍ましくて、ユーリは心臓が凍りつく思いだった。

もういいだろう。
早く離してくれ。


目的を達した筈なのに自分を解放しないフレンのことが気味悪くて、身体が小さく震え始めていた。



ようやく身体を離したフレンが、ユーリの頬を撫でる。

「ごめんねユーリ、痛い思いをさせて」

「っ…う」

やっと終わりか。

しかし次のフレンの言葉に、まだこの悪夢が終わらないことをユーリは思い知ることになった。






「…今から、気持ち良くしてあげるよ」





ーーーーー
続く
▼追記