人間、なくて七癖といいまして、自分の癖はわからなくとも他人の癖はよくわかる。
そういうものなのだろうと思います。
かくいう私も自分の癖はよくわからない。
うちの相方にはポケットに両手を入れるなとよく咎められるので、それが癖なのかと思いますが。
「後ろから見ていると今にもお尻の真ん中からズボンが破けそうで嫌」とのこと。
まったく自覚がないため気をつけようにも難しく、なるほどそれこそが癖というものなのだなと。

さて、ここである人物の癖を紹介したいと思います。
彼女は考え事をしている時、いつも片手に持ったペンをくるくると回している。
まぁ、ありがちな癖ですな。
が、考えが煮詰まってくると、今度はそのペンを顎に押し当てる。
ただのペンであればいいが、ノック式のボールペンやシャープペンシルなどだった場合には、考え事の間中カチカチカチカチと音がしてうるさいことこの上ないという問題が発生するわけです。

先日、その彼女が打ち合わせに私の席までやってきた際、その"癖対策"として机上のペン類をことごとく片付けてみたのですが、、、
本題に入ったあたりで右手が机上をさまよいはじめ、、ペンの類を求めて動き回るその姿は、さながら獲物を探し回る何らかの生物。
頭の中身はフル回転しており、おそらくは無意識の行動なのだろうと思うと却って恐ろしい。

そして、その手が何かを掴んだかと思うと、それをおもむろに顎に押し当てる、、、
「あっ!!」と思わず声が出ましたが、時既に遅し。
私の表情にただごとならぬ気配を察したのか、「え、何何?」と顔を上げた綺羅子さんの顎には、、ちょうどよく

熊谷

と押されておりまして、、、

「何よこれ熊さんのシャチハタ!?」と咎めるように叫ばれても、私にはいかんともしがたい、、、
自分の机の上にシャチハタを置いてあって何が悪いというのか。
横着して蓋をせずにいたのは多少悪かったかもしれないが、こんな事態を想定しろというのは難題すぎるではないか。
いやはや、それにしてもずいぶんと上手に押したもんだ。
天地が逆になっていることもない。
そう伝えると、綺羅子さんはあたふたとコンパクトを取り出して自分の顔を眺め、、、

「いや〜!! 熊さんの物にされた!!!」

してません。
自分で勝手に押したんだろう。
人聞きの悪いことは言わんでくれたまえ、、、