悪いのは耳なのか、、、

フィッシュですね?」

数日前。
根を詰めた作業中。
周囲の雑音はまったく耳に入らない。
そんな状態だったはずが、何故か突然耳に飛び込んできたこのひと言に気を取られて集中を乱してしまった。
脇を見ると真織ちゃんが携帯で誰かと話をしている。

、、フィッシュ?
フィッシュといったら魚のことだ。
しかし、日常生活で魚をフィッシュと呼ぶことはあるだろうか、、少なくとも自分には今までそんな機会はなかった。
いったいどういう会話なんだ?

そんな私の疑問に気づかず(当然ではあるのだが)真織ちゃんは幾度も携帯に向かって「フィッシュ、フィッシュ」とくり返している。

すると突然、携帯の向こうの人間がキレたような気配が、、、
そして真織ちゃんは「あ、ティッシュ!?」と叫んだ。
、、ティッシュとフィッシュ、、、間違えるか?
いや、確かに似ているんだが、フィとティ、ほんの一文字の違いなんだが、しかし魚をフィッシュとは言わないだろう、、、

電話の相手はどうやら響子嬢だったらしく、その後会社に戻ってきた響子嬢は「どうして"ティッシュある?"が"フィッシュある?"に聞こえるの!?私の発音がそんなに悪いって言うの〜!?」とご立腹。
まぁ、確かに響子嬢は慢性鼻炎だというだけあって発音には少々難がある。
しかし、仮に「フィッシュ」と聞こえたんだとしても、会話の流れからすると「ティッシュ」なんだろうなと判断するところじゃないんだろうか?

そもそも鼻炎の響子嬢とティッシュは切っても切り離せない関係だ。
デスクに自腹で高級ティッシュを常備しているぐらい(そしてそのティッシュがまだあるかどうかを尋ねていたらしい)、ティッシュは響子嬢の日常生活に欠かせない代物だということは、この事務局の人間ならば誰でも知っている話だ。
むしろフィッシュと言われてもティッシュと聞き間違えるのが自然なぐらいだと思うのに、やはり真織ちゃんは一味違う、、、

そして、今日、つい先ほどのこと。
最近入籍したばかりの女性局員が、式の日取りについて、「仏滅はダメだと親がうるさい」と言い出したところ、既婚の局員たちが「うちの親もそうだった」とひとしきりその話題で盛り上がりを見せた。
そして、「うちなんて大安にしろってうるさくてうるさくて。好きにさせてほしいわ」とある女性が言い出した時、なぜか真織ちゃんが椅子の上で跳ね上がった。

「引出物にタイヤとかもあるんですかぁ!?」

ありえないだろう、と。
私は心の中でつっこんだのみでしたが、女性陣は容赦がなかった。

「そんなわけないでしょ!」
「たった今まで仏滅の話をしてたでしょうが!」
「仮に"タイヤ"って聞こえたんだとしても会話の流れから"大安"って気づくところでしょ!?」

怒涛のつっこみの嵐に、真織ちゃんは首をかしげ、、、

「真織、耳が悪いんでしょうかぁ、、、」

耳か?耳なのか?
本っ当〜に耳のせいなのか?
確かに耳も悪いのかもしれんが、、、
それだけじゃないんじゃないか、と、思うよ、、、