2017.7.26 Wed 22:50
Jの総て/中村明日美子


なんだかんだ、中村明日美子さんの作品の感想をちゃんと書くのは初めてな気がする。もう、それだけでドキドキ。




Jの総て 全3巻/中村明日美子

中村明日美子さん、初めて読んだのはもちろん「同級生」
その爽やかな作風から、次作の「ダブルミンツ」の病みっぷりには驚き。あまりにも印象が違いすぎて…

今さら、この「Jの総て」を読んだわけだけど、やっぱり明日美子さんは後者の作風の方なんだなぁ。生々しく、痛々しい。


1950年代、マリリン・モンローに憧れたJ・M・オースチンの幼年期から青年期を描いた作品。


幼少期にはアル中の父親に犯され、それを見た母親は発狂し、父を射殺。
孤児院や学園生活をたどり、自由に憧れたJはニューヨークへ上京。

まさに、”Jの総て”

彼は今で言う性同一性障害で、マリリン・モンローに憧れ、女装をしてクラブで歌を歌う。
見目麗しい容姿と、高貴な心。
しかし、そんな彼に注がれるのは、歪んだ性欲。
「お前は男なんだ」と突き落とすような人々。
KKKのおっさんに、拳銃突っ込まれながらのレイプなんて、読者にとっても完全なトラウマもの…。

彼が気丈に振る舞うほどに痛々しく、なかなか辛い作品で、今回ばかりはダメかもしれない…と悶々。

明日美子さんの絵って、よく言えばアーティスティックなんだけど、今回のセッ○スシーンなんてすごく暴力的なんだよね。黒々しく反り立つアレとか嗚咽モノ。


ここでまさかの途中退室か?!と思いきや、事前にハッピーエンドだと知っていたので、むしろ私は幸せを求めて必死に読み進めたよ。
こんなに重症なのに、ここからどうやってハッピーエンドにたどり着くんだと。これがマリリン・モンローの後追い自殺エンドだったらたまったもんじゃない!!


ドン底に堕ちたJは、刑務所で運命的な出会いを果たす。
それはかつて彼が愛を捧げた、ポール。

今まで全てを達観し、必死に強がって生きてきたJが、初めてポールに自分の感情を吐露するシーンは辛くて辛くて涙が出そうなくらい。

自分を必死に肯定しようと生きてきた彼が、
初めて無償で愛され、愛することを知るラストに”よく頑張ったねぇ”と抱きしめたいババアです。


この作品、マリリン・モンローはセッ○スシンボルのように描かれているんだけど、彼女は私の中では天真爛漫なキュートな女性なイメージ。
「紳士は金髪がお好き」好きです。(現金主義最高。)

だからこそ、後日の柔らかくて可愛いJの素顔は、理想のJになれたと思う。まぁ、彼女は彼女で、JはJという人間で、代わりにも何者にもなれないのだけど。
そんな風に自分を愛せるようになってくれて、そんな風に周りが愛してくれて…

うん、間違いなくハッピーエンドだ!





さて、
そんなことより、

ポールとモーガンが気になるんじゃ!!!

絶対、モーガンはポール好きなのに、Jとポールがくっついてしまって、それはもう大変ハッピーエンドなんだけども、モーガン…っ!!(涙拭けよ)

「バラ色の頬〜」がこの2人の話なんだけど、「J」がこのエンドだから2人にLOVEは決して待っていないのだ…辛い。でも、2人がこうして自然に話している…

友愛は時に、恋人を越えると思ってる。好きだ…。







[TOP]



-エムブロ-