食べたい。
………………………………
衝動的、って奴なんだろうな。きっと。
「なっ…!ま、政宗殿?!一体、ななな何を…??!」
慌てる真田幸村の声が耳に響く。
―――コトの発端は、真田の腕だった。
真田と手合せし、井戸場で汗を流していた時にオレはまじまじと真田の腕を見た。何時もは赤い戦衣に包まれているから、見る事なんて滅多に無い。
思えばアレが初めてだったんじゃ無ェんかと思う。
んでまあ、ふと思ったわけだ。
ああ、コイツの腕美味そうだなッて。
――がぶっ
思わず噛んじまったワケだ。
そりゃあ、慌てるだろうな。きっとオレだって慌てるぜ。
だけど――。
「その…政宗殿からそのようなコト…」
『我慢出来なくなるではないですか』
そのまま真田の腕がオレを抱き竦め、オレの項に真田が口付けてきた。
「――さ、真田…!??」
皮膚に歯が立てられ、プツリと皮膚が弾け其処から体液を吸われるように、真田が舌を這わしてくる。
「政宗どの」
食欲と性欲は比例するって誰かが言ってたよな…。
この場合オレが喰われるンだろーな、と他人事に思いながらオレは真田の手を許してしまった。
………………………………
幸村の腕って政宗さんも抱き上げられるから、筋肉キレーについてそうって話。幸村はそうじゃないけど(笑)
ゲームでたぎったんで、つい。
………………………
「石田殿が悪いでござる!」
そう、いきなり怒鳴られた石田三成は盛大に顔をしかめた。
「……貴様、いきなり何を言い出す。斬られたいか」
「それはコチラの台詞でござる!石田殿こそ某に殺されたいのでござるか!政宗殿を――…!」
「政宗?」
いきなり言われた言葉に再び三成は顔をしかめた。
一体何を云いだすのか、この男は。
訝しんだ目付きで、目の前の男――真田幸村を見れば、こう答えてきた。
「石田殿が変な時に訪ねてきたお陰で政宗殿に疑われるわ!全力で切り付けられるわ!挙げ句、政宗殿の誕生日を祝いに行ったら…!!うおおおお!!!」
「越中を越えた辺りから、伊達軍の皆さんに追っかけ回されて、奥州に入る事すら出来無くってねー」
真田付きの忍が、へらッと笑いながら話す。
「だが、それと私なんの関係が「関係オオありでござる!某、政宗殿に嫌われたままなど真っ平御免でござる!」
言葉を遮られたかと思えば、そのまま三成は幸村にがっし、と腕を掴まれる。
「な、何をする!貴様!」
「某と一緒に政宗殿に謝るでござる」
「ふざけるな!何故、私が……!」
幸村に向かって異論を唱え掛けた三成は、この世とも思えない形相をした人間の、正確に云えば眼前にいる真田幸村の顔を見て直ぐ様口をつぐんだ。
後日、『凶王が真田幸村と一緒に土下座をしている』と云った伝聞が奥州一帯に広まった。
……………………………
石田サンに嫉妬しちゃう政宗さん。だから奥州に入れてやんねーよ!的な感じで書きたかったけど撃沈。
あと、幸村は西軍より政宗さん大事で(笑)
叫愕
……………………
目の前で喘ぐ政宗を見て、幸村の鼓動はますます早くなる。
元より恋心を抱いていた相手だ。
そんな相手が、自分の目の前で痴態を晒していると思うと、思考がおかしくなる。
「――い…、っ」
ぎゅう、と自分の制服裾を掴み、政宗が苦しげに喘いだ。
政宗がハアッと大きく呼吸をした瞬間、幸村の心臓が一際高く脈打った。
こんな事はダメだと。
いけない事なのだと、思っていても。
「―――!…ッ、ふぅ…ッ!」
自分に縋り付いていた政宗の腕を掴み上げると、幸村はそのまま政宗の上体を引き起こし、唇を合わせた。
政宗が苦痛の表情を描いていても、幸村には関係なかった。
『触れたい』
ただ、それだけ。
………………………………
きちっと書いたら面白くなるんじゃないか、と思うんだけど、誰も救われないエンドになるのがオチ(笑)
幸村と政宗は遠い親戚同士。二人は仲良しです…。
…………………………
二月になると自然と足が浮き立つ。
「幸村、なんか機嫌イイね。良い事でもあった?」
「政宗と待ち合わせをしている。貸していた本を返してもらう約束をな」
そう答えると、面倒見の良い従兄は「そうなの」と一言。
「それじゃあ出掛けてくる!」
「気を付けてねー。伊達ちゃんによろしく」
玄関を勢い良く飛び出して、待ち合わせの場所に走った。
二月はオレの誕生月だ。そして、バレンタインデーもある。
特に後者はオレにとって重要だ。
今年こそ、政宗からチョコレートを貰いたい。
「政宗!」
待ち合わせ場所で見つけた姿に、嬉々として駆け寄る。
「Oh、幸村。相変わらず元気だなァ」
「政宗の顔を見れればオレはいつでも元気だ」
「ha!言うねぇ、Baby」
本音を言ったまでだが、政宗は冗談だとしか思ってくれない。
二つ年上の親戚に、恋心を抱いたのは随分昔のことだ。
それ以来、何度もアプローチ(らしきもの)をしてきたのだが。
「本当の事だ」と伝えても、笑われてしまう。
「アンタにそんな台詞、似合わねぇよ」と。
いつになったら本気と思ってくれるのか。
「そうそう貸して貰った本、結構面白かったぜ」
「政宗…、オレは」
人目も憚らずに彼を抱き締める。その拍子に、政宗が手にしていた袋が音を立てて地面に落ちた。
「ちょ、幸村…!?」
突然の事に慌てて引き剥がそうとする政宗を無視して、腕に力を込める。
「政宗が好きなんだ。いい加減、本気にして欲しい…ッ」
一息に告白すると顔の近く、政宗の耳が真っ赤になっている事に気付いた。
しかも小刻みに震えている。
「…政宗?」
腕を緩め、政宗の顔を覗き込もうとした瞬間。
――パァァン!
「――?!」
見事な平手打ちが飛んできた。
「…ま「あああアホかオマエ!いいいいきなりそんな、バカ!タコ!」
文句を言う政宗の顔は見事、真っ赤だった。
……あれ?
「だだだいいち好きってオカシイだろ!〜〜〜っ…バカッ!」
「あ、政宗!」
文句を言うだけ云うと、政宗は脱兎のごとく走り去っていってしまった。
「……。」
今回は少し態度が違った。
少しばかり強引にしたせいだろうか?
「…いや、だが…怒らしてしまったしな」
張られた頬に手を当てながら、落ちた荷物を幸村は拾う。
「ん?」
袋の中には本、それと。
「チョコレート」
それもたくさん。と、いうか10円チョコがたくさん。
軽く千円分はあるんじゃないかと云う量。
「…義理チョコかな」
幸村は呟いて一つを口に放り入れた。
………………………………
表の拍手の没案。本命チョコは遠くない。
是非とも欲しい。
……………
ピンポーン、と真田幸村の家のチャイムが鳴ったのは、ちょうど主人である真田幸村が夕食作りで四苦八苦し、フライパンで前髪を焦がしたのと同時だった。
「……はい」
萎れた声と顔で幸村が玄関ドアを開けると、
「こんばんわ。すこぉし、お時間宜しいですか?」
そこに立っていたのは、病的に白い色をした男だった。
「すみませんねぇ、夕飯時にお邪魔してしまいまして」
「…いえ」
夕飯時も何も、たった今、夕飯に成りうるべき物はフライパンの中で炭と化してしまった。
「夕飯は秋刀魚か何かですか?焦げた匂いがしますが」
「いや、違うでござる。あの…何の用」
「ああ、申し訳ないですねぇ。余計な詮索をしてしまいまして」
幸村が尋ねたのを遮断するようにして、男は笑顔で謝罪をする。そしてテーブルに何やら書類のようなものを広げた。
「真田幸村サマ。この度は当社のアンケートにご協力頂きまして誠に有難うございます」
深々と男は頭を下げる。
「アンケート?」
はて、そんな物書いただろうか?
「はい。そのアンケートにお答え頂いた方から抽選で、当社製品のモニターとして採用させて頂きました」
「製品?モニター?」
幸村は鸚鵡返しに男へと聞き返す。
そんな幸村を見て男は益々笑みを深くし、
「ええ…私どもが開発した万能ロイド『M019』の、モニターです」
そう言った。
そして男は言葉を続ける。
「『M019』はまだ開発、試作段階ですからねェ。色んな方にモニターとして使って頂いて、意見が欲しいのです」
男は言い終えると、ドアに向かい微笑む。
すると―――、
「アンタが新しい《主人》かい?」
そこには妖しげな笑みを口端に讃えた青年が、いた。
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だいぶ前に考えたマスター真田と万能ヒューマノイド政宗さんの話。
シリアス目指そうと思ったけどな…(汗)
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