*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋-完結・前編-』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の完結・前編です⇒
story.18:『幸福』
------------父の命令で、僕は香港へ留学することになった。
この時の僕は、なぜ突き放されてしまったのか分からなかった。
僕は、父から留学するように言われたその日、やはり我慢出来ずに若菜の自宅へ向かった。
福崎:(謝らなきゃ…)
若菜の両親に。
留学してしまう前に、若菜の両親に謝罪しないと。
『他人を責めるのは、想像以上に辛いんだよ…』
父はそう言っていたけど、それでも……僕があの日、若菜を一人で帰してなかったら、若菜が死ぬことはなかった。
僕が、若菜を守りきれなかったから……------------。
福崎:「はぁっ…」
走って、若菜の自宅の近くまで来た時、僕の目に大樹を見付けた。
その大樹は、若菜の自宅の庭で凛と白い花を咲かせていた。
福崎:「……………」
若菜の自宅には、中学生の時に何度か里沙と真紀と遊びに来たことはあった。
だが、こうして花を咲かせている様子は、初めて見た気がする。
福崎:(若菜は、あの木があるこの家で育ったんだ…)
聞いた話では、若菜の祖父母が、若菜が産まれた頃にわざわざ海外から買って来たらしい。
福崎:「確か、この木の名前は------------…」
そう口にした時、一台の車が停まり、父が僕を連れ戻しに来たことで結局、僕は若菜の両親に謝罪をすることはなかった。
若菜の自宅から離れてゆく車内で、僕は若菜の自宅の庭にあった白い花が咲く大樹を思い出した。
若菜が産まれた頃から、ずっと若菜を見守ってきたあの大樹も、きっと若菜の死を痛んでいることだろう……。
------------次の日、僕は空港から香港へ旅立った。
何も知らないまま。
若菜に最後の別れもしないまま。
阿岐名さんの死も、水嶋さんの無事も、石塚の欲望も、父の弱味も。何も、どれも知らないまま------------。
香港の全寮制の学生寮がある学校に転入してから、2年が過ぎたある日。
僕は一人、都会から外れた長閑な田舎町にある図書館へ向かっていた。
僕が読みたかった本が、その図書館にあると聞いたから。
若菜のことも、水嶋さんたちのことも、自分自身の罪も忘れて過ごしていた僕を目覚めさせるかのように、その光景は現れた。
福崎:「!あれは……」
図書館の中から、無意識に中庭を見た僕の目の前に写ったのは、白い花を咲かせた大樹だった。
福崎:「…------------」
再び、あの大樹を目にする時が来るだなんて……。
僕は思い出した。自分自身の罪を。若菜の死を------------。
すると突然、僕の横に立った女性が言った。
女性:「あれは、"槐"というんですよ」
女性がそう教えてくれたことに対し、僕は応えた。
福崎:「知っています。
…僕が好きだった人の家の庭で見たことがあります」
僕がそう言うと、女性は優しい表情で言ってきた。
女性:「なら、槐の花言葉を知っているのですね?」
福崎:「いえ…。見たことはあるし、名前は知っていますが……花言葉までは。」
僕がそう応えると、女性はちょっと目を丸くさせてから意外そうに言った。
女性:「そうなの?好きな人のことなのに?」
福崎:「え、えーと……すみません、勉強不足で…」
僕がそう言うと、女性はフッと吹き出し笑いをして言った。
女性:「冗談よ。からかってごめんなさい」
福崎:「いえ、本当のことなので……」
僕はそれ以上、返す言葉がなくて女性から目線を放し、槐という大樹を眺めていると、女性はこう言ってきた。
女性:「教えてあげるわ。
槐の花言葉はね…-----------」
福崎:「……っ」
女性は、僕に槐の花言葉を教えると、僕の目の前から去った。
女性は気が付いたのだ。
槐の花言葉の意味を聞いてから僕が、泣きそうになったことを。
そして気を使ってくれた…。
福崎:「くっ……ッ…うぅっ」
僕はその場で膝を付き、両手を顔に覆い被せてボロボロといつまでも泣き続けた。
女性が教えてくれた槐の花言葉は、きっと若菜を見守っていた人たち皆が、彼女に対してそう願っていたはずだから。
……僕も、願っていたから。
『槐の花言葉はね……』
女性の言葉が、僕の中でリピートされる。
『"幸福"って、言うのよ』
------------若菜に、幸せになって欲しかった。
出来るなら、僕が幸せにしたかった。守ってあげたかった。
福崎:「わか…なっ……」
未だに分からない。
なぜ、若菜がイジメられなければならなかったのか。
なぜ、若菜が死ななければならなかったのか。
福崎:(僕のせいなのにっ…)
遠藤実千香が僕に好意を持ったばかりに、若菜から幸せを奪うようなことになってしまった。
本当に若菜の幸せを願うなら、僕は身を引くべきだった。
そうすれば、若菜が……好きな人が死ぬことなどなかったはず。
その事に今さら気が付いた。
福崎:(僕は…何をしてるんだ!)
若菜の死も、水嶋さんたちの無事も知らないふりをして、自分の罪を償わず、父の後ろで隠れてこんなところで……。
僕はそう思って、さんざん泣き続けた後、すぐに寮に帰ってから日本にいる父に何度も連絡をした。
だが、父が応じることはなかった。普通に、仕事が忙しいから連絡が付かないのか。
僕は、そうは思えなかった。
ただ父は、僕を避けている………そうとしか思えなかった。
------------それから1年後、僕は香港の高校を卒業したが、父の命令で日本には帰れず、そのまま香港の大学に入学した。
父からは結局、何も聞けなかった。若菜のことも、水嶋さんたちのことも、里沙と真紀のことすら。
福崎:(どうすれば、話を聞き出すことが出来るだろう…)
そんなことを考えているとある日、大学の友人に誘われてとある施設に行った。
そこには、一人の中年の男性がいた。
その男性は、僕の周りにいる人間を次々と不思議な力で操ってみせた------------そして、こう言ってきた。
男性:「これがマインドコントロールの力です!この能力があれば、他人を自在に操れます」
男性のその言葉に、僕は手を上げて聞いた。
福崎:「他人の隠し事を聞き出すことも出来ますか?」
僕がそう聞くと、男性は大きく頷いた。
男性:「もちろんです!
貴方も、マインドコントロールを学びますか?今なら安く、しますよ」
男性のその言葉を聞いて、僕はすがるようにその男性のもとでマインドコントロールの勉強を始めることになる。
……これが、後の"槐事件"に繋がることになります。
------------To be Continued...