話題:東日本大震災


あれから6年たったのだなと回想する回

今では起きたことの全てを思い出すことはできないけど、あの日以来数週間は周りが見えない霧の中に閉じ込められ、重苦しい雰囲気の中でもがくことも許されないような日々を過ごしていたような

地震で物が壊れることはなかったが、かなり不便な生活を強いられた

それと笑うことも許されないような世の中というものを初めて体験したね

東北の人が苦しんでいるのに花見をするとはけしからん!と口に出す人もいたり


原発が爆発した日から専門家を自負する奴らが大丈夫だ、チェルノブイリほどじゃない、と言ってたよね

塾でも生徒から「原発どうなのでしょうか」と質問を受けた

その時、嘘をついてやった方がいいかなと最初は思ったけど、現実から目を背けさせてもいいことないかなと思い直して、メルトダウンしてると思うって言ったんだよ

そしたらさ、みんな大反発した

塾の先生とはいえ、大学生になったばかりのあんたに何がわかるんだ、とか、何故そんな酷いこと言うの、とかね

生徒の親からも怖いこと言わないでくれと文句言われたり

新聞やニュースの言うことが正しいのか、塾の先生が正しいのか、と生徒やその親は迷ったと思う

こういう時、じっとしているのが大人の対応なのかなと考えたが、俺の発言から塾の中がおかしくなったんだよね

塾長という立場でも教える側の人間の中では一番年下だったので、アルバイト学生の中で俺に従わない奴も出てきたり、生徒の中にもいちいち突っかかってくる子が増えたんだよ

原発の恐怖によるストレスを俺にぶつけてきてるような感じだった

東大に受かったM田が原発に関しては何も言わなかった、というのも俺へのバッシングに拍車をかけた

そしてついに反撃に出るしかなくなった

真実を言って何が悪い、俺について来られない奴は塾を去れ!と言ってやった




生徒は5人ほど去って行った

その後、メルトダウンしてましたと報道があってから俺のシンパが増えた

元から俺を信じてくれていた奴らはより深く信じてくれるようになったし、疑いの目で見ていた奴らも一定の評価をしてくれるようになった

親の中には大絶賛してくれる人が現れて、頼んでもないのに塾生を何人も紹介してくれたりね

そこから、この少子の時代に塾が繁栄して行くのだけど、きっかけは原発だったと言えるかな

だけど、原発事故のその後のことまでは言及しなかった

当時の嫁さんが、「そんなこと気にしてたら前に進めないでしょ」ってなこと言ってたし

M田からは「今回たまたま当たっただけで、間違ったこと言っちゃう可能性の方が大きいんだよお前は」とも言われたし


残念なことに、俺にこういう言葉を掛けてくれたこの2人と別れてしまいましたよ

本当にこの6年間色々なことがあった

また回想するね