話題:(恋人が)風邪.゜*


入院する時はナースに提出する大量の紙の他に、ハンコ押したり金払ったりの事務的な手続きも必要なのよね

でもこれはそんなに面倒じゃない

受付の女は優しいし

必要最低限の会話だけで普通は終わるのだが、この日は客が少なかったのか手続きが済んだ後もやけに多くの情報をくれたよ

自動支払い機の使い方、どこに何があるかの案内やら

その受付の女とにこやかに話してる時にウォンバット登場

いきなり腕を掴まれたからびっくりした

振り向くと「お待たせ」と発したウォン

受付女と会話が途切れた瞬間を狙って現れろよと思ったけども、どうやらこの2人は知り合いのようだった

互いに「じゃあね」と言っておった

そこからピザ食べ放題の店へ

俺は昼飯抜いてたから、後に眠くなるかも知れないと思いつつもガッツリ食う気満々だった

ウォンもいつも通りの明るさで、楽しく会話しながら食べる気でいたようだったよ

ところがね、2切れ目を食べてる途中でウォンのペースが落ちたんだよね

そこで、どうした?調子悪いの?と聞いたよ

するとウォンはううんと首を振り、大口開けて手に持っていたピザをその口に押し込んだ

だが噛む力が出ないようだった

俺は何かおかしいと思って席を立ってウォンの横にしゃがみ、口を拭く紙を大量に取ってウォンの口元に持って行き、出せ、と言った

すると彼女はほとんど抵抗せず、口の中にあったものを出した

この時点で、すぐ店を出て送って行くようだなと思った

首を触ってみると明らかな発熱が感じられたし

外は寒かったから仕方なく着ていたダウンジャケットをウォンに被せた

ウォンは「ごめんね。やだ私‥」とか言ってたけど無視

いちいち相手するとどんどん喋るからね

喋ると外の冷たい空気を吸わなきゃならないし体力も失うから

で無事に送って行った、と




ただ腹が狼のごとく吠えまくってしまいそうだった俺は、予定にはなかったのだがお好み焼き屋に行った

何か食わしてくれ、と電話はしておいた

俺の顔を見ると椅子に腰掛けたビキニはいつもならパッと立ち上がるのだが、この時はちょいとそのスピードが遅かったのよね

どっこいしょってな

そして何も聞いてないのに「今日は少し調子が悪いから味がおかしいかも‥」と言った

味が変でも食えればいいと思っていた俺は、そんなこと気にしなくていいよ、と言いつつ、ビキニの額に手をかざした

そしてゆっくりとおでこを触った

凄く熱かった

まあね、外から入ってきたからね、手が冷たかったのよね

体温計った?と聞くと「まだ。熱があると意識しちゃって仕事に集中できなくなりそうじゃない?」と言う

そうだけど、もし風邪だったらさ、ひきはじめが肝心なんだよ、ここで処置しておかないと酷くなるし長引くぞ、と言ってやったらビキニは「じゃ計る」と素直に応じた

店内は暖房が効いてるから寒くはなかったが、体温計を挟んでる間は俺のダウンジャケットを掛けてやった

そしたらさ、ビキニのやつクンクンし始め、「女のニオイがする」と低い声で言った

それはまさにウォンバット臭だとは思ったけども、正直に話すと説明も要求されるに決まってるんで、さっき生徒がさ、寒いって言うから貸したんだよ、と言ってしまった

するとビキニは「そっか生徒さんか、ならいいや」と呟いた

その声は比較的高いトーンだったからよかった

体温計の数値は36.8度だった

平熱はもう少し低いから風邪ひいたのかもねってくらい

持っていた風邪薬を飲ませてからこの女を抱きかかえ、奥の座敷に行った

壁にもたれ掛かった二人羽織のような格好で暫く過ごした

その間に女は寝た、ほんの数分だけど

その後無事に飯が食えた神田でした




みんな疲れてるんだね

この季節は気をつけないとね!