君の好きなところ@



※この話は、途中からわけあって、水谷以外みんな女子です。(ネタばれ…?)
女体化とかいうわけでもないのですが、すっかり女子なので、そういうのが嫌いな方は、読まれないほうがよいのではないかと思います。

大丈夫な方はバッチこーい!
それではどうぞ。
(ちなみに今回は普通の話です)




++++++++++++++




それは繰り返しのような、いつもと同じ日で、当り前のようにこのグラウンドの上で、君の隣にいる。
君が笑っていてくれるなら、それでいい。
そんなことにも気付きもしないで。




練習も終わりに近づいて、監督の集合の声が聞こえる。
オレはちょうど近くにいたから、わりと早めに集合場所に座りこんだ。間もなくみんながばたばたと集まってきて、空いていたオレの隣には栄口が座った。
そうするのが当り前みたいに、とても自然に。
それから肩を叩いて「見て見て、水谷。ほら」と空を指差した。
いつのまにか暗くなっていた空には、見なれた月とは全然違う月が浮かんでいた。

「わぁ、大きい月だねぇ。しかも赤い」
「こういうの、なんかオカルトっぽいよね」
「うんうん、なんか起こりそうだよね」

ちょっとだけ笑いあって、モモカンの声で注目。
お月さまが不思議なことのほかには、変わりのない一日だった。




「あ、蛍光灯切れてる」

西広がアンダーシャツを脱いでいる途中で天井を見上げて言った。オレもつられて天井を見ると、2本あるうちの1本が切れていた。通りでいつもより部室の中が薄暗いわけだ。

「おい水谷、蛍光灯替えといてくれよ」
と花井が言った。
「え、なんでオレ?」

練習が終わった後、さっさと戻って着替えてしまっているのが災いしたのか?
いや、それなら泉だって着替え終わっている。

「おまえどうせ栄口待ってるんだろ?栄口は鍵当番だから最後になんだよ。ったらおまえ暇じゃん」

花井はシャツを羽織ながら言った。確かに栄口はまだ部室に戻ってきてない。が。

「え〜いいじゃん。まだ1本ついてるんだし」
「もう1本切れたら真っ暗じゃねぇか」
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃねぇよ。こっちのだって暗くなってんだろ」
と残った1本を指差した。そう言われると、光が細かく震えて今にも消えそうに見えてくる。

別に蛍光灯を交換することを面倒がっているわけではない。もし、蛍光灯の予備がその辺に転がっているというのなら、すぐにでも交換するのだが、そんなものがあるはずもない。職員室に行って、それからきっとどこかに蛍光灯を探しに行かなければならないのだ。
夜の校舎は人のいないところは電気が消えていて、廊下の向こうが見えないのが怖い。想像しただけでも恐ろしくなって、もう一回食い下がることにした。

「きっと明日までは持つよ。ね、明日朝練のあと換えとくから」
「だから、持たなかったら困るだろ。今切れたら真っ暗になって蛍光灯換えるのあぶねぇだろうが」

花井は溜息交じりに説得を始めるが、いやなものはいやだ。

「でも…」
何とか言い訳をと思ったら、「うっせぇ!今行け」と後ろで着替えていた阿部に頭をはたかれた。

「ううっ…阿部の鬼、悪魔」

頭を抱えて阿部を睨んだが、すっかり無視されてしまった。これ以上ぐずっていたら、グーで殴られそうなので、渋々立ちあがる。
仕方なく出口に向かおうとしたとき、

「オレも一緒に行ってやっから」
と泉がぽんぽんと肩を叩いた。それから、
「夜の校舎って、ちょっと怖ぇよな」
と、耳元でぼそりと言った。

「泉〜!あんがと〜!」

ぎゅうっと抱きついたら、暑苦しいと蹴りはがされた。








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